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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
一章 出会い

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020 シモンと別れた理由


 イレーナの希望で拳銃の試し撃ちをしていたら、プックはいつの間にか消えていた。途中からシモンたちがバカップルに見えたから、仕事に向かったのだ。

 イレーナが撃ち疲れたら、シモンが見本。百発百中で的を射抜くから、イレーナにチヤホヤされて気分が良さそうだ。


 そうしてイレーナが飽きた頃に帰宅を勧めたけど、晩ごはんを作ってくれるらしい。それは助かるので、シモンは拳銃の手入れをしながら楽しみに待つ。

 日が暮れるとプックも誘ってプチパーティー。今回も野菜料理が並んでいたから、ついにプックは「嫌がらせしてますん?」と聞いてしまった。


「この人、放っておいたらお肉ばっかり食べるからよ。プックちゃんもお肉ばっかり食べさせられてるんじゃない?」

「そういえば……買って来るレパートリーは肉ばっかりでんな。別にあーしはそれでいいんやけど」

「よくない。野菜も食べないと栄養が偏って健康を害するの。気を付けないと早死にしちゃうわよ?」

「ドワーフが早死に……」

「え? ドワーフって早死にする人いないの??」


 イレーナの健康論、ドワーフに当て嵌まるか微妙なところ。基本、お酒が主食のようなモノだから偏食が凄いのに、長生きする者が多いからプックも答えに困ってる。


「ドワーフが大丈夫なら、俺も大丈夫じゃね?」

「シモンは人族でしょ!」


 イレーナが押され気味だったから、しれっとベジタリアンを卒業しようとしたシモン。それが癇に障(かんにさわ)ったのか、イレーナは昔のことを引き出して説教するのであった。



 今日はもう遅くなったからとシモンが送ろうとしたけど、イレーナは最初から泊まる気満々で来ていたとのこと。酒場も休みなんだって。

 なのでシモンは早く休むとか言って自室に逃げてった。こんなこともあろうかと、客室は整えていたとか言ってたけど、イレーナ用かは定かではない。


 リビングに残ったのは、イレーナとプック。プックはイレーナにお酌されていたから逃げ遅れていた。


「ひとつ聞いていいでっか?」

「な~に?」

「シモンはんとなんで別れはったん?」

「それを語るには長くなっちゃうわよ~?」

「頑張って聞くわ~」


 なので言わなそうな話題で煙に巻こうという作戦に出たっぽい。しかしイレーナはほろ酔いになっているので喋っちゃう。


「あの人と初めて喋ったのは、蒼き群雄をクビになって荒れてた頃なの」

「それが哀れに思って付き合った口やな」

「ううん。そんなんだからクビになったんだと思って相手にしなかった」

「キッツ~」


 普通、そんな場面に出会ったら慰めるモノだとプックは思ってる。


「そのすぐあとかな? 酒場に来る冒険者から、シモンという凄腕の弓使いがいるって聞いたのは。どこのパーティに入るか話題の的だったの」

「アレ? クビになったんやから、みんな避けるもんじゃあらへんの?」

「それが元のパーティの人が、他のパーティに掛け合ってくれてたのよ。だから彼の腕前は凄いことをみんな知ってたの」

「あっ、マスターがそんなこと言ってたな。しっかし、めっちゃいい人たちでんな。クビにした人のアフターケアまでしてるなんて」

「ねえ~? だからその時、ちょっと興味を持ったの」


 プックは「まだ付き合わないんや」とツッコミたいが我慢。


「そしたら案の定、彼は有名なパーティの引き抜きにあったと聞いたのね」

「おお~。そこでお姉さんは付き合ったというワケやな」

「ううん。しばらくしたら彼が暗い顔をしていたから、いまがチャンスだと思って……」

「なんか思ってたのと違う……」


 お金持ちを口説き落としたのかと思いきや、弱っていたところを喰ったように見えて、プックも引いた。


「それで付き合い出したのが失敗。まさかあんなにクビになるなんて思ってなかったわよ~」

「うん。落ち目の時に間違って拾ったんでんな……」


 イレーナが大失敗と笑うので、さすがのプックもドン引きだ。


「だから別れたんでっか?」

「ううん。どういうワケか、1人の時のほうが羽振りがよかったから、様子を見ることにしたの」

「あぁ~……弓の腕前は確かやもんな」


 シモンがハメ技で稼いたとはイレーナが知らなかったので、プックがチクっていたけど、イレーナは元サヤに戻る気はないみたいだ。


「なんでなん? いまならもっと稼げるで??」

「お金の問題じゃないのよ」

「あ、娼館通いでっか?」

「それもないこともないけど、もっと深刻なことに気付いてね……」


 イレーナは真面目な顔で別れた本当の理由を語る。


「あの人、私と付き合う時に、ここに留まるって約束してくれたのよ。でも、それは嘘だったの」

「嘘ってことは……あんさんを置いて故郷に帰ろうとしたんかいな」

「ううん。先に進もうとしてたの」

「先って……蒼き群雄を追おうとしてたんかいな!?」


 まったくそんな素振りはなかったシモンが下の階層に行こうしていたなんて、プックも予想外で驚くことに。


「未練があったのね。クビになったのに、蒼き群雄に追い付いたらまた仲間に戻れると夢見て泣いている姿を見ちゃうとね~……応援したくなっちゃうじゃない?」


 これはシモンの知らない話。1人で飲んでる時に飲み過ぎて、イレーナが入って来たことに気付かなかったのだ。


「そういうことやったんや……でも、あんさんもいい人すぎまへん? シモンはんも蒼き群雄も、いい人すぎてお腹いっぱいですわ~」


 別れの真実を知っても、茶化すプック。感動しているのをごまかしているのかもしれない。


「彼のことをなんとも思っていないあなたにこんなこと言うのもおかしいけど……彼の助けになってくれない? 今日の彼、私が見たことのない活き活きとした顔をしていたの。たぶん、この先に進める可能性が出たからだと思う。元カノの私が言うのもおかしいけど、お願い!」


 プックは本当に元カノの言うセリフじゃないと思ったが、イレーナの真剣な目に負けた。


「あーしは下の階層に行く気はないけど……シモンはんの依頼通りの武器を作るだけや。たぶんやけど、全て作り終わったあとには、シモンはんは1人でどこまでだって行ける冒険者になっているはずや。それまでは面倒みたる」


 この言葉を聞けただけでイレーナは満足。プックの手を取って、イレーナは感謝するのであった。


「ありがとう! ……ん? 1人で迷宮踏破はさすがに無理じゃない? いいパーティに入らないの??」

「あーしの武器があればいらんいらん。そもそもシモンはん、ホンマに腕前は変態的でっせ」


 感謝したあとは、心配なイレーナ。プックが太鼓判を押して1人で迷宮に送り込もうとするので、心配は尽きないイレーナであったとさ。


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