120 巨大キメラとの戦闘
巨大キメラ戦、ファーストアタックは例の如くシモンの弾丸から。50BMG弾は風を切り裂きキメラに迫る。
「ヒット……」
「キョロキョロしてますな~」
「いまのうちに畳み掛けておこう」
「了解どす~」
オオカミ顔の眉間にダメージを受けた巨大キメラはどこから攻撃を受けたのかと探し中。シモンはオオカミ顔を中心に、何度も撃ちまくる。
「気付いた! こっち向かって来るぞ!!」
「はいはい。王様~! 来ますで~!!」
「わかった! うおおぉぉ~!!」
今回ばかりはシモンもテンションアップ。プックが大声で伝えると、レオポルト王はまた雄叫び。獣人軍の雄叫びと続く。
その雄叫びが響く間も、シモンとユーチェは狙撃。巨大キメラも痛みがあるのかジグザグに走ったりするが、全て着弾。正確には、頭を外すことが多くなったから、当たったとしてもダメージが低くなっている。
「やっぱり難しいどすね」
「ああ。でも、近付けば近付くほど的は大きくなる。いつも通りで大丈夫だ」
「はいっ!」
シモンが何度も発砲していていると、獣人軍にも動きがある。正面に整列した獣人兵は盾を構えて前進。左翼と右翼はやや左と右に向かいながら進む。
その頃にはキメラの足音が聞こえ、姿もハッキリと見えて来た。
「ヴオオォォ~~~!!」
およそ200メートル先。巨大キメラは前脚を上げて叫ぶ。体高20メートルを超えるその巨体、その異様な姿、その声は獣人軍を怯えさせるには充分だった。
「胸もらい。ユーチェもプックも撃ってやれ。音出して連射な」
「はいっ!」
「当たるかな~?」
プーシーユーは通常運転。違う点は消音マジックアイテムをオフにして、シモンはズドンッと発射。ユーチェとプックはズガガガガ~と連射だ。
「うおおぉぉ~!!」
その音で我に返ったレオポルト王は再び雄叫び。獣人軍も雄叫びで応え、動きは元に戻ったように見える。
シモンの弾丸は一発ずつだが、全て巨大キメラの胸辺りに命中。ユーチェの弾丸は胸を中心に5メートルの誤差で25発を撃ち切る。
プックのサブマシンガンから飛び出た弾丸は、これほど離れた距離で撃ったことがないから半分の15発しか当たらなかった。
それでもプーシーユーの一斉射撃を嫌ったのか、巨大キメラは前脚を地面につけたらすぐに横移動。からの前にダッシュ。プーシーユーを狙って駆ける。
「ユーチェもプックもいつでも撃てるように準備しとけ!」
「はい!」
「おうよ!」
ここからは、ユーチェの目は必要ない。シモンは引き金を引いて巨大キメラのオオカミ顔を狙って撃ちまくる。
「魔法や!?」
「ぶつかる!?」
その少しあとに獣人軍の魔法が巨大キメラに降り掛かるが、巨大キメラはそれを無視して体当たり。獣人軍の最前線に衝突した。
「耐えてる?」
「ゾウさんサイさん頑張って~!」
驚くことに獣人軍の盾役は吹き飛ばずに、力いっぱい見事に耐え切った。
「足止まってるぞ! 2人も撃て!!」
「「あっ! はいっ!!」」
これが作戦。獣人軍が巨大キメラを抑えている内に、プーシーユーが撃ちまくる作戦だ。それを忘れていたから、シモンの語気が荒くなり、2人もハッとしてアサルトライフルとサブマシンガンを撃ちまくる。
「引いた! ストップ!! 箱替えておけ。俺のも頼む」
「「は~い」」
巨大キメラがプーシーユーの一斉射撃を嫌がって下がると撃ち方やめ。アシストに借りたネズミ兵士たちに弾倉を預けて補充してもらう。
シモンだけは弾倉交換したら撃ち方再開だ。
「左行きそうでっせ?」
「あ、兵隊さんたちが回り込んでるどすよ」
「ああ~……両サイドから囲んで、撃ちやすくする作戦なんや~」
「俺、昨日、説明したよな??」
「「てへぺろ」」
この作戦の肝は、素早い巨大キメラを軍隊の檻に入れること。そうすることによって、命中率の低いユーチェとプックも当てやすくなっているのだ。
プックとユーチェは連日のモフモフパーティが楽し過ぎて忘れていたけど……
「ほら止まった。プックはやめておこう。兵士を撃ってしまう」
「この角度なら……無理やな」
行けそうに見えたけど、プックも獣人を撃ち殺す可能性が否定できないので素直にお手上げ。シモンとユーチェで撃ちまくったら、巨大キメラはまた後ろに跳んで、高台を睨んだ。
「俺たちの攻撃は効いてるみたいだな」
「イライラしてそうでんな~」
「止まってくれたらウチでも当てられるのに~」
巨大キメラは苛ついてその場をクルクル。やはりプーシーユーを早く仕留めたいのか正面に突撃したが、獣人軍の魔法と盾に防がれてプーシーユーの総攻撃を受ける。
また跳び退くと、次はまだ攻撃していない右翼の獣人兵に衝突。こちらも左翼と同じ展開となり、引くしかない。
巨大キメラは上手く行かないことに苛立ったのか、炎を吐いたり魔法も使うが、獣人兵は必死に耐え、怪我人が出たら即座に下げて守りは崩さない。
遠距離攻撃をして止まったキメラは格好の的。プーシーユーの総攻撃を喰らうから、有効な手段でも使い辛くなっているように見える。
巨大キメラが獣人兵の守りを崩そうと右に左に正面にと衝突を繰り返していたら、シモンが首を傾げた。
「ん?」
「どないしたん? 手が止まってるで??」
「いや~……肩の鳥顔を狙おうとしたら、誰か人がいた気がして……」
「人?? とりあえずあーしが探してみるわ。一番手が空いてるさかいにな」
「ああ。頼む」
プックは巨大キメラが横向きになった時を狙って双眼鏡で凝視しているが、動きが大きいからすぐには発見に至らず。3度目のチャンスで何かを発見した。
「いた! ホンマに人が鳥の頭にしがみついとる!!」
「何してるかわかるか?」
「なんか指差しとるな……あ、キメラ、指差してる方向に向かったわ」
「てことは~……敵??」
「可能性は高いわ」
「プックはそいつにしばらく集中して、様子を見ておいてくれ」
「おっけ~」
弾数は減るが、気になるモノは先に処理したい。ひとまずプックが妖しい人物をロックオンして追いかけていたら、答えは出揃った。
「あいつ、指示役ちゃう? 邪神の使いとか言ってたヤツ。人間にも見えへんし」
「ふ~ん……とりあえず撃っとくか」
「せやな……って、ちょい待ち!!」
邪神の使いと言えば、巨大キメラの製作者とも噂されている人物。シモンが照準を合わせたら、プックの待ったが入ってしまった。
「えっと~……どないしたん?」
「いや、こういうのは王様に報告したほうがええと思ってな~」
「別に報告はええんちゃう??」
「なんでやねん……てか、なんでドワーフ弁になっとるんや??」
「もう撃ってしもてん」
「隠そうとすなやっ!!」
待ったはちょっと遅かった。偶然スコープに邪神の使いが入ったからシモンは早撃ちしてしまったので、証拠隠滅したかったみたいだ……




