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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
一章 出会い

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012 狙撃手の狩り


「なんでこないなところに連れて来るんや~」


 迷宮の地下2階に来れたのは嬉しかったプックであったが、中型犬ぐらいの蟻が何百匹と湧いて来る蟻地獄に連れて来られたと知って後悔中。


「いや、俺の狩り場だし……人、滅多に来ないし……美味しいし……」


 でも、シモンは動く気がない。


「美味しい? 1人でどうしますん? 弓でもそんなに倒せへんやろ??」

「別に全部相手にすることないんだよ。あそこを見ろ。デカイの歩いてるだろ?」

「キモッ……聞いてた大きさじゃあらへん。アレは熊でっせ」

「アレがアントの親玉、クイーンアントだ。ああやって獲物が罠に掛かるのをウロウロして待ってんだよ。自分は高く売れますよ~って。んで、冒険者があそこまで行ったら、辺りの穴からアントがワラワラ~ってな」

「モンスターが罠なんて……えっぐ……」

「だろ? 若手はほぼ全滅。中堅でも逃げるのがやっと。ベテランでも一度入ったらもうやりたくないと言うほどだ」


 蟻地獄、超不人気。確かにクイーンアントを倒すと経験値が多いし落とす魔石は大きいから高く売れるが、倒すには数百匹のアントとも戦わなくてはならないから割に合わないのだ。

 シモンも蒼き群雄にいた時はノリで挑戦したけど、矢がすぐに尽きて全然役に立てなかったんだとか。しかしそれでヒントを得ていた。


「やっぱり1人では無理やん」

「それが大丈夫なんだ。騒がず見てろよ?」


 心配するプックを他所に、シモンは弓を構えて矢を放つ。その矢は一直線に飛び、見事にクイーンアントの頭を貫いた。プックは「何してまんのん!?」っ顔で自分の口を手で塞いでる。


「た、倒したんか?」

「ああ。クイーンを倒したら、アントの出現は止まるんだ。つまり、気付かれる前にクイーンを倒してしまえば、アントは出て来ないんだ」


 これはシモンしかできない芸当。蒼き群雄の時は、ザコの相手をしていたけど矢がすぐに尽き掛けたので、クイーンアントの頭を撃ち抜いてなんとか体裁(ていさい)を保てたんだとか。

 蒼き群雄のメンバーは「よくやった」と言ってくれて、すぐに役立たずになったことは気にしてなかったらしいけど、シモンはいまでも申し訳なく思ってるんだって。


「でも、1匹だけでどうやって稼ぐん?」

「5分から10分待てば中央に復活するから、それをひたすら撃つだけだ」

「お兄さんもエグイことしてまんな……」

「生きるためだ。四の五の言ってられるか」


 これは最低なハメ技。プックに残念な目を向けられたが、シモンには通じない。 冒険者を始めた頃は、誰が流したのかシモンが役立たずとすでに噂が広がっていたからパーティには入れてもらえず、ハメ技で生計を立てるしかなかったからだ。

 その腕を買ってくれたのが蒼き群雄だったから、誇らしくもあるらしい。


 ひとまず三度ほど弓矢でクイーンアントを倒したら、ここからが本番。5分のクールタイムの内に、シモンは銃をしっかりと両手で構えてイメージトレーニングをしている。


「こっから、だいたい何メートルぐらいあんの?」

「たぶん、庭よりちょっと遠いぐらいだから……50メートル前後?」

「そんなん当たるんか? 遠いとだんだん落ちてくんやろ??」

「上から狙ってるから、たぶん飛距離は問題ない。問題は威力かな? いちおう逃げる準備はしておいたほうがいいかも??」

「ちょ、ちょっと待ったってぇや。いま離れるから~」

「冗談冗談。たぶん大丈夫だって。あ、出た」


 プックは逃げようとしたけど、シモンは容赦ナシ。拳銃の引き金を2回引き、クイーンアントの様子を(うかが)う。


「うん……大丈夫。死んだ」

「ホンマでっか? それも冗談とか言うんちゃうやろうな??」

「ホンマホンマ」

「ドワーフ弁、馬鹿にしとんのか?」


 よかれと思ってプックの口調をマネしたら、シモンは怒られちゃった。しかしそれでプックの恐怖心は消えたみたいだ。


「ホンマやな……消えとる。ちなみにやけど、もしも死ななかったらどうしてたん?」

「前に見せた弾丸詰めた板を投げてダッシュで逃げる。たぶん逃げ切れたと思う。俺だけなら……」

「いま小声で『俺だけなら』って言ったやん!?」


 さらに怒りに変わったので、シモンは「狩りの邪魔」って言って黙らせるのであった。



 それからは、単純作業。シモンは上から拳銃で撃って、リポップしたらまた撃つ。一発で死ぬことも確認が取れたので、念のため一発撃っては弾込めと繰り返すだけ。

 プックは最初は興味深く見ていたけど、単純作業に飽きたので次の試作機の図面を引き、お昼休憩もこの場で。また図面に集中して30分が経った頃、背伸びした時に異変に気付いた。


「なあ? お兄さん……いつの間に魔石、拾い集めて来たん??」


 そう。そこそこ大きな魔石がシモンの足元に山積みになっていたのだ。


「あぁ~……これも俺のスキル。俺がトドメを刺したモンスターの魔石は、俺の近くに落ちるんだ」

「普通はモンスターの近くに落ちるってこと?」

「ああ。だから、みんな、俺がちょろまかそうとしてると疑ってな……」

「せやろな。やろうとしたら独り占めできるもんな……どうりでソロ専になるワケや」

「やるわけないだろ~~~」


 レアジョブの狙撃手、とことんソロ向き。これでは人付き合いも(わずら)わしくなるなと、哀れんだ目をするプックであった。


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