118 出陣
ユーチェの新スキル披露は微妙な結果になってしまったが、この八層に危機が迫っているのは変わりない。プーシーユーは各々動き出した。
プックは屋敷に併設された鍛冶場で銃の整備。シモンは弾丸の補充を兵士に覚えさせるためにお城へ。ユーチェは暇なのでシモンのお付き。
シモンもすぐに暇になったから、王都探索に出た。
「わあ~。牛さんもいる~」
もちろんユーチェもついて来てるよ。シモンは「なんでついて来るんだよ」とか思ってるけど……
「なんかたまに人族の女がいるよな?」
「ホンマどすね。なんでやろ?」
「腕組んでるってことは、そういうことなのかな?」
「美女と野獣どすな~。恋に種族の壁はありゃしまへんねんな。ウチとシモンさんみたいに」
「ちょっと聞いて来る」
「ウチの話も聞いてや~」
シモンはカルチャーショックを確かめたいので、人見知りは我慢して三毛猫と人間カップルにインタビュー。
どうやらこの女性は、元冒険者。かわいい三毛猫に一目惚れして八層に残ったとのこと。しかもそんな女性冒険者はけっこういるらしく、八層で足止めされるパーティは割と多いんだって。
「ダフネも実はかわいい物が好きだったもんな~……なんとか我慢して進んだのかな? ククク」
「ダフネさんって、蒼き群雄のどす?」
「ああ。デカくて男勝りな子だ。早く会いたいな~」
「も、もしかして……」
ユーチェ、シモンが主語を言わなかったから勘違い。シモンは蒼き群雄の皆を思い出して懐かしんだ顔をしているだけなのにね。
それからもプックが鍛冶仕事をしている合間に、シモンはダラダラ。今日はユーチェの目を盗んで1人で街に出たけど、帰って来たらユーチェとプックに絡まれた。
「どこ行ってましたん?」
「娼館か? 娼館やろ??」
「んなわけないだろ。娼館に行っていたら、こんなに早く帰って来ねぇし」
シモンだって1人で息抜きしたい時もある。ただし今回は冤罪も甚だしいと逆ギレだ。
「「クンクン……」」
でも、そんなことするから疑われるのだ。
「なに匂い嗅いでんだ??」
「「獣臭い気がする……」」
「ああ! そうだよ! クラブに行ったら獣ばっかりで逃げ帰って来たんだよ!!」
「「ブハッ! アハハハハハ」」
でもでも、ぶっちゃけたほうが傷が浅い。プックとユーチェは大笑いだ。
実際には、娼館に行ってパネルを見たら獣だらけだったから逃げ出し、ヤケ酒でもしようとクラブに入ったけど、プードルとチワワに挟まれてスリ寄られたら耐えられなくて逃げ出したらしいけどね。
「こんなことなら……」
「こんなことならなんなん?」
「なんでもない……」
「こんなことなら、ウチと飲みたかったんどすよね~? サービスしまっせ」
「何を絡み付いとんねん。シモンはん、迷惑そうにしてるやん。離しぃ」
「痛いから引っ張らないでくれ」
両手に花でも喧嘩腰ならシモンもノーサンキュー。しかし、犬にスリ寄られた恐怖を打ち消すために、今日は2人の間でしこたま飲むシモンであった。
ちなみに「こんなことなら」の続きは、ダークエルフがやってる娼館でもっと遊んでおけばよかったとの未練だってさ。
王様から依頼を受けて1週間。銃の整備も終わってしまったからプックもダラダラ。王様の使いは来るものの、何も進展がないのでどうしようかとだべっている。
「シモンはんたち、狩りとか行かへんのん?」
「暇だから冒険者ギルド覗いてみたんだけどな~……冒険者を撃ち殺しそうじゃね?」
「プッ……うん。あーしも間違えそう」
「だろ~? プックも新しい武器は作らないのか??」
「いまアイデア待ちや。新しい弾丸でもあればな~……」
「もう、50BMG弾の連射できる手持ち作っちゃえ。あって損はないだろ」
暇すぎて、プック用の武器を追加発注。しかしプックは寝耳に水みたいだ。
「それはありがたいけど、たぶんあーししか使えへんで?」
「プックがそっちを使って、俺かユーチェが10号を使えば攻撃力の底上げになるかも?」
「なるほど……それはそれでありでんな。振動が強いから、しっかり固定できるようにすれば誰でもプーシー10号は使えるし……」
「そういえば俺、一回も10号使ってなかった……」
「ウチも! ちょっと撃たしてや~」
プックは自分の世界に入ってしまったので、シモンとユーチェの声は届かない。なので2人は「やっちゃう?」とか喋っていたら、血相が変わってるかどうかわからない猫メイドがリビングに入って来た。
「王様から至急、プーシーユーは登城するようにと連絡が来ましたにゃ!」
「来たか! 話は俺が聞く。2人は戦闘準備をしておいてくれ!」
「やっと出番や~!」
「腕が鳴るどす~」
プックとユーチェの返事は思ったモノと違ったが、やる気に満ち溢れていたからシモンは急いで登城する。
そこで作戦会議に出席したシモンは、作戦の復習だけして屋敷に戻るのであった。
翌日……獣人軍は王都を出発する。
「うわ~。すっごいモフモフ~」
「これだけモフモフだらけやと、何しに行くかわかりまへんな~」
プーシーユーは中央辺りの馬車に乗り込んだけど、ユーチェとプックは緊張感がない。1万人もの軍隊なのに、鎧を着込んだぬいぐるみの行進にしか見えないみたいだ。
「死人が出るかもしれないんだから、もっと緊張感を持とうな?」
「アレ! アレ、なんの獣人なん!?」
「綺麗な羽どすな~。初めて見たどす~……あっ! パンダいましたで!!」
「どこや!?」
「俺の話、聞いてる??」
シモンの注意はどこへその。プックとユーチェは珍しい獣人を探すべく、望遠鏡片手にキャッキャッと盛り上がるのであったとさ。




