113 緊張感
「アカン! 弾切れや!!」
巨大なトロールキングがプーシーユーに迫るなか、プックがWサブマシンガンで発射すると、30発ずつをあっという間に使って残弾ゼロ。それと同時にアサルトライフルの弾倉を交換していたユーチェの銃撃が始まった。
元々シモンがカウントダウンしているから、タイミングよく交代できるのだ。
「おお~い。プック、もうそろそろだぞ~?」
「もうかいな!? 2個使ったのは失敗やったかも……急げ~」
「3、2……」
「いま急いでやってるやろ!」
「ゼロ!」
「もう!!」
Wサブマシンガンは強力なものの、弾倉交換に時間が掛かるしシモンが急かすから、プックも封印するしかない。サブマシンガン一丁で応戦だ。
これならリズムよく次々と交代できるが、シモンの弾も無限ではない。
「5連射使う! 2人で耐えてくれ!」
「「了解!!」」
シモンの弾倉交換の場合は、最強攻撃を決めてから。トロールキングのおでこ目掛けて50BMG弾の畳み掛け。
まだHPに余裕があるからか、トロールキングはたたらを踏んだだけで耐えられてしまった。
「プックさん! こっち切れるで!!」
「任せとき! ウララララ~!!」
ユーチェもアサルトライフル連射モードで対応。弾切れになったら、プックのサブマシンガン連射。弾倉交換が間に合わないので、次はシモン用のアサルトライフルを握ってユーチェの攻撃だ。
「よし! 戻るぞ!!」
シモンの弾倉交換が終われば、ローテーションは元通り。二丁のアサルトライフルは、二度の交代の間にどちらも弾倉交換を終えていた。
「かなり距離が近くなったな……」
何度もローテーションを繰り返していたら、トロールキングとの距離は20メートルを切った。これならいつ、体高20メートルのトロールキングの間合いに入ってもおかしくない。
「よし! 俺たちの連射のあとに、10号だ!!」
「ついに真打ち登場やな!」
「ひとまず千発な?」
「プーシー10号ちゃんが唸るで~」
「聞いているのかな~?」
プックの返事がないから怖いが、シモンはユーチェと連動して弾倉が空になるまで連射。もちろんカウントダウンは忘れない。
「プック! ゼロ!」
「死にさらせや~~~!!」
ガトリングガン、発射。トロールキングの腹辺りを狙えば、この距離なら外すことはない。
「うわっ……」
「すげっ……」
50BMG弾、強力。プックがペダルをクルクル回すと50BMG弾は絶え間なくトロールキングに着弾。それでトロールキングは後退って行くから、シモンとユーチェは威力に感動だ。
ただし、まだ戦闘中。シモンは「ハッ」として、見とれていたユーチェの肩を揺すって弾倉交換を急がせる。
「プック! もういい! 充分距離は開いた! ローテーションに戻るぞ!!」
「えぇ~。まだ千発行ってないんちゃうか~?」
「これだけ離れたら避けられるぞ!」
「しゃあないな~」
トロールキングは振り出しに戻ったのだから、秘密兵器は必要ない。シモンとしては、もしもの時に残しておきたいので必死の説得だ。
プーシーユーはローテーションに戻ったが、トロールキングの様子がおかしい。急に雄叫びをあげた。
「来た! ラストアタックだ!!」
最後の足掻き。トロールキングは棍棒を振り回して前進して来たからには、シモンの緊張はマックスだ。
「遠いと無様やな~」
「ゴーレムさんと同じことしてはる」
ただし、その足は遅い。攻撃がまったく届いていないのだから、プックとユーチェは緊張緩和だ。
「近くで受けたら手に負えないと思うけど……引き付けてから撃っちゃうか?」
「やな」
「簡単に終わりそうどすね~」
そのせいでシモンまでユルユル。いちおうシモンのヘッドショットだけは続けて、程良い距離になったらガトリングガンで蜂の巣にしたプーシーユーであった。
「シールドもいらんかったどすね」
「な~? 高いマジックアイテムも買ったのにな~」
「それって王様に奢ってもらったヤツやん」
勝利の余韻もイマイチ。ユーチェ、シモン、プック総掛かりでダラダラ片付けをして、走って八層へ向かう扉を潜って事無きを得る。無駄話が過ぎたみたい。
小部屋で少し休憩したら、『ガンガン行こう』。安全地帯で一泊して、地上を目指す。
それからも無駄話をしながら進んで2日。ついにプーシーユーは迷宮を踏破した。
「そういえば、戻るか進むか考えるの忘れてた」
「余裕やったから一択やろ」
「これで気まずいことにはなりまへんでしたね~」
ここでもまだ、嬉しさはないみたい。せいぜいダークエルフの下に帰ることがなくてよかったぐらいだ。
「ま、何はともあれ……」
「せやな」
「うん!」
「「「八層到着、おめでと~~~う!!」」」
やっとこさ祝福。プーシーユーは銃の先をコツンと当て合って、八層到着を祝うのであった……




