112 七層の迷宮攻略
ダークエルフに見送られて迷宮に入ったプーシーユーは、ガンガン……
「はぁ~……失敗したらどうしよ?」
戻る可能性があると言ったのに大々的に見送られては、シモンは『シュンシュン行こう』だ。
「ええ加減、覚悟決めなはれ」
「勝つしかないどす!」
プックとユーチェも戻りたくないから気合い充分。
「しゃあねぇ。強い弾は温存で。そのかわり、パラベラム弾は大盤振る舞いでガンガン行こう!」
「おう!」
「はい!」
シモンも気合いを入れ直したら、正式に『ガンガン行こう』。武器は、シモンは半自動式拳銃の二刀流。プックはサブマシンガンとショットガンの二刀流。ユーチェは半自動式拳銃とサブマシンガンの二刀流だ。
弾丸は弱めだが、これで五層、六層の迷宮を踏破したのだから、地下1階、2階は余裕。地下3階は弾数が増えているけど、シモンがヘッドショットするから割と余裕だ。
地下4階もそのままの武器で進み、少し苦戦したらシモンとユーチェはアサルトライフルに持ち替える。
「あーしは?」
「4号二刀流でいいだろ?」
「なんで末っ子に出番あげてくれへんのん!?」
「いい加減、その設定やめへん?」
「下手なドワーフ弁使うなや!!」
プックがいくら暴力を振るっても、これだけは譲れないシモン。弾がもったいないもん。
ちなみに暴力といっても、背中をバシーンッと叩いただけだよ。シモンのHPは2割も減ったけど……
さすがにシモンのHPが減ったからには、プックも従順になった。迷宮に入ってシモンが攻撃を喰らったことがないからだ。モンスターより強いとか言われているのは、乙女としては恥ずかしいらしい。
そんなことがあったけど、武器を持ち替えると地下4階も余裕。苦労したのは、弾倉補充とユーチェの夜のお誘いを断ることだけだ。
「ここからはプックも11号使っていいけど、夜に弾込めが待っていることを忘れないように」
「わ~ってるわ。整備もあるんやから、無駄撃ちせぇへん」
地下5階からは、プックもウィンチェスター弾解禁。バレない程度にプックの出番を減らして先を進む。
「あっ。ゴーレム……」
「あーしたちの天敵か~」
「またオモチャにしますん?」
お昼を過ぎた頃に、大きなゴーレムが道を塞いでいたので、初めてプーシーユーの足が止まった。
「一匹だけだし、ちょっと試してみよっかな?」
「あぁ~……50BMG弾かいな。確かに倒せそうやな」
「ファイトどす~」
新しい弾丸があるのだ。ここはシモンはスナイパーライフルを持って1人で戦う。
まずは頭にヘッドショット。ゴーレムはよろけたが、倒すには足りない。続いては、スキルを使った5連射だ。
「「「おお~」」」
するとゴーレムは頭爆発。プーシーユーはその威力に、同時に感嘆の声が出た。
「次からは倒して進めるな。でも、普通のモンスターは一発で倒せるから、ちょっとコスパは悪いか」
プックたちの駆け足で寄って来ていたからシモンは振り向きながら報告をしたら、2人は急停止。
「後ろ後ろ!」
「ん?」
「まだ死んでへんで!!」
「なんだと!?」
頭のないゴーレムが動き出したからだ。こうなっては仕方がない。というか、鈍足のプックのために、シモンは無茶な連射を使い続けるのであったとさ。
「26発……」
「はいはい。がんばったがんばった~」
「よしよし」
ゴーレムは胸に穴を開けても死ななかったから、その穴を広げるように弾丸を放ってバキッと上半身が折れたところで、ようやく勝利。
シモンはもったいないと肩を落とし、プックは心にもない励まし。ユーチェはチャンスだと、頭撫で撫でだ。
気を取り直して先を急げば、安全地帯を見付けたのでここで休息。しっかり休んで、翌日のお昼前には、迷宮ボス戦だ。
「あんまデカく感じへんな~」
「エノールム見てるどすもんね」
ここの迷宮ボスは、危険度がS級のトロールキング。緑色の肌で身長20メートルオーバーの人型の化け物なのに、先の大激浪でその倍のエノールムを見ているから、プックとユーチェは拍子抜けって感じだ。
「2人とも、気を引き締めろ。S級なんだから絶対に強い」
「わかってまんがな~」
「ウチも~」
2人の喋り方はまだ緩いが、目は真剣だったからシモンは頷いた。
「それじゃあ作戦開始だ。いくぞ!」
「おう!」
「はい!」
シモンの掛け声で、戦闘開始。プーシーユーは各々慌ただしく動くのであった。
プーシーユーで1人だけ駆け出したのは、シモン。真っ直ぐトロールキングに向かい、ある程度近付いたらスナイパーライフルが火を吹く。
「ガァ!?」
弾丸はトロールキングの頭を直撃。それで頭が軽く後ろに動いたが、トロールキングはシモンを睨み付けた。
「こっちだ! 来い!!」
もう一度引き金を引いたら、シモンは走り回ってトロールキングの気を引く。もちろんトロールキングはシモンをロックオン。巨大な棍棒を振り回しながらシモンを追いかけ回す。
トロールキングは歩幅が広いからすぐに追い付けそうに見えるが、シモンはまだ本気を出して走っていない。レベルが高いから、素早さは勝っているのだ。
少し距離が空けば、止まってヘッドショット。また走ってヘッドショットを決めると繰り返し、トロールキングを翻弄する。
「シモンは~ん! 準備整いましたで~」
「援護します!!」
銃声が響いた方向を見たら、壁を背にしてシールドを固定したプックとユーチェが手を振っていたので、シモンは少しフェイントを入れてからそちらにダッシュ。
ユーチェがアサルトライフルを撃っていたら、シモンは固定シールドの後ろに滑り込んだ。
「ふう~。思ったより余裕だったな」
「そうでもないで」
「あきまへん。トロールキング、スピード落ちまへん!」
シモン的にはグリフォンキングの時より楽だったが、トロールキングはここからが本領。大きいのだから、防御力が高い。したがって、ウィンチェスター弾のダメージが低いのだ。
「それも想定内だろ。焦るな。俺も加わる。ユーチェの弾が無くなったら、プックの出番だぞ」
「ついにプーシー10号が……」
「11号な?」
「ちょっとぐらいボケさせてや~」
ボケている場合ではない。シモンはヘッドショットで忙しいので、無駄話はここまでだ。
ユーチェの弾丸は、トロールキングの胸辺りに着弾。血が滲んでいるように見えるが、そこまでダメージになっていないからトロールキングの足は鈍りもしない。
そこにシモンのヘッドショット。この攻撃ではトロールキングの頭が揺さぶられるから、出足が鈍る。
「弾切れどす!」
「うっしゃ~~~!!」
ユーチェの弾切れに合わせて、プックのWプーシー11号、発射。その弾数ならば、トロールキングも動きが遅くなった。
「1個でいいのに……」
でも、ここまでやれとは言っていないので、ちょっと戦闘が心配になるシモンであった。




