104 新スキル
プーシーユーの個人情報が載っていた冒険者新聞を止めてもらいにメインデルト王に会いに来ただけなのに、特使に任命されたシモン。
シモンも開いた口が塞がらない。目立ちたくないのにさらに目立ってしまうからだ。
「さすがにそれはちょっと……俺たち下に行きたいし……」
なので申し訳なさそうに異議の申し立てだ。
「まぁ聞け。特使言うても、シモンたちは何もせんでええんじゃ。今まで通りじゃ。儂ゃ名前を借るだけじゃ」
「名前ですか??」
「エルフの女王もやっていたじゃろう。勇者パーティーの牽制に……要は、プーシーユーをどこそこに派遣したと、儂が口だけ、冒険者新聞に載せるだけで、どこにおるかわからんようなるって寸法じゃ」
確かにこの方法なら、シモンたちの行方はわからなくなる。特に有望な冒険者は下層を目指すのだから、後退していると見せ掛けるのは牽制の役に立つ。
「王様にそんな嘘をつかせるワケには……」
「よいよい。この程度の嘘でシモンたちの信頼を勝ち取れるんなら、願うたり叶うたりじゃ。シモンたちのためじゃったらなんでもするでぇ」
「もしかして、エルフの女王様と張り合ってます?」
「そがいなこたぁせん。ちなみに振り込んだ金は、女王より多いかったか??」
「張り合ってるじゃないですか!?」
どうやらエルフとダークエルフもそれほど仲がいいと言うワケではないみたい。シモンたちが英雄となってしまったからには、エルフ以上の礼をしないと負けた気分になるのだ。
シモンもその気持ちが伝わったのか、「倍以上ありました」と嘘をつくのであったとさ。
メインデルト王はシモンの発言をかなり怪しんでいたというか、ユーチェが何か言い掛けて口を塞がれていたから嘘と確信。
しかし仕事が忙しいので、今のところはシモンを逃がす。シモンもすぐに立ち去ろうとしたが、お願いがあったと振り返った。
「あの……勇者パーティーの動向は教えてもらいたいのですけど、いいですか?」
「そうじゃのぉ。そりゃあ何かあったらすぐに伝える。ちなみにいまは九層におるんじゃげなぞ」
「九層?? やけに早いんですね」
「それほどシモンから離れたいか、はたまた違う狙いがあるんか……そこまではわからんな」
「ですね。助かりました。ありがとうございました」
八層をすでに離れていたことが気になったシモンだったが、感謝してメインデルト王と別れるのであった。
城から出たユーチェはやや不機嫌。エルフのほうがダークエルフよりシモンに感謝の量で勝ってるとかブーブー言ってるよ。
シモンは適当に返し、買い食いして歩いていたら、ユーチェの機嫌は直った。デート気分になったみたい。プックへのお土産も買ってるのに……
冒険者新聞の件でゴタついたし、いい仕事もないのではやることもない。屋敷に戻ってダラダラして、夕食の時間になったらプックも交えてパーティ会議だ。
「なんなエライことになってまんな~」
今日の出来事を教えてあげたら、プックの感想はこんなもん。他人事だ。
「早く八層に行きたいけど、武器ができるまで動けないし……ここには仕事もない。どうすっかな~……」
「迷宮街に行ったらどうなん?」
「冒険者新聞を読んだ勇者パーティーがどう動くかもわからないんだよな~」
「ああ~……王都に押し掛けるか、迷宮街で待ち伏せするかかいな。そりゃ動けないわな」
「しばらく様子見しかないな。俺たちは訓練でもするか」
八方塞がり。プックだけ働かせるのも何か言われそうだから、シモンには必要のない訓練と言うしかないのであった。
翌日は、シモンとユーチェは訓練のしやすい岩場にて銃をブッ放す。ほとんどユーチェへの指導だ。
「あれ? シモンさんも訓練するんどす?」
お昼休憩を終えたら、シモンがプーシー9号を手に持ったからユーチェは首を傾げた。
「ああ。大激浪のおかげでスキルレベルがふたつも上がっていたからな」
「それはよかったどすね。てことは新しい弾が出たんどすか?」
「いや、弾数が増えたのと、何故か新しいスキルを覚えたんた」
「へ~。そんなこともあるんどすな~。見せて見せて~」
「いまからやるから下がってろ。あと、もしもの時は、この回復薬を飲ませてくれ」
「……へ??」
纏わり付くユーチェに回復薬を押し付けて下がらせたら、シモンは三脚を立ててスナイパーライフルを固定する。
そして目の前の大きな岩を目掛けてスキルを使った。
「くうぅ~……やっぱいってぇ~」
それは攻撃スキル。ただ、使った本人しか何が起こったのかはわからない。
「一発撃っただけどすよね? それで失敗するって……」
「あ、見えなかった? いま、5連射したんだけど」
「5連射?? 手の動きすら見えませんどした~」
「そういうスキルなのかな? てか、俺の右腕大丈夫? 変な色とか太くなってない??」
そう。シモンの新しいスキルは5連射。MPと引き換えに1秒の間にリロードから発射までの動作ができるのだ。
この技はエノールムの時は火事場の馬鹿力で無理矢理やって右腕が死に掛けたけど、今回は右腕に何も起きなかったからホッとしてる。
「なんでMPがあるのかと思っていたけど、このスキルのためだったのか~」
そして長年の謎が解けたシモンはスッキリ。
「どうでもいいことなんどすけど、連射できる銃があるのに、そのスキルって必要なんどすか?」
「……ホンマや!?」
でも、ユーチェに指摘されてガッカリ。シモンの知り得ないことを補足すると、この狙撃手という職業は単発銃を想定した職業で、女神様もまさかマシンガン等を作るとは考えていなかったらしい……
「おお~い。痛いだけで使えないじゃないか~」
「まぁまぁ。回復薬飲みなっせ」
斯くして、新しいスキルはHPとMPを減らしただけなので、シモンはヤケ回復薬に走るのであったとさ。




