102 ダークエルフの宴
大激浪の掃討戦も無事終わると、ダークエルフは大声で勝鬨を上げる。そして笑い声に変わった頃に、メインデルト王から終息宣言と労いの言葉が掛けられた。
プーシーユーはその前にメインデルト王から話を聞いていたので、勝鬨を聞きながら外壁を下りる。そして馬車に揺られて屋敷に戻ると、全員食事をしながら寝落ちしていた。
ダークエルフたちはというと、今日は解散と告げられたので家路に就き、酒場などで大盛り上がりとなっていたけどそのまま就寝。
誰もが徹夜の激務だったから、一気に疲れが来たみたいだ。だったら真っ直ぐ家に帰ったらいいのにね。
翌日は昼まで寝てしまったプーシーユー。メイドの用意してくれた昼食をウトウトしながら食べ終えたところで、やっと眠気が取れたみたいだ。
「あぁ~。寝過ぎた」
「ホンマやな。丸一日寝てたんちゃうか」
「まだ寝足りないどす~。筋肉痛も酷いし」
「シモンはん。筋肉痛はどうなっとるん?」
「めちゃめちゃ痛いねん」
「「嘘臭い……」」
ユーチェの筋肉痛発言からシモンのオッサン説が蘇ったので、シモンは真実を告げたけど信じてもらえない。実際問題、右腕は怠くて上がらないのに、下手なドワーフ弁のせいで演技してると思われています。
「ちょっと散歩に出て来る」
「あーしも」
「ウチも~」
「なんか近くない??」
シモンが立ち上がるとプックとユーチェが挟み込み、同じ速度で歩く。おそらく娼館に行くと勘違いされたみたい。前科あるもん。
そのシモンが向かった先は、外壁の頂上。プックたちは「な~んだ」と興味が失せたよ。
「みんな朝早くから働いていたみたいだな」
王都の外ではダークエルフが魔獣の処理中。外壁に近い位置にある死骸は、エノールムの極寒の吹雪のおかげでいまだに凍り付いたままだから腐臭はまったくない。
「これ、全部食べるんやろか?」
「さすがに無理じゃね?」
「ダークエルフも凍らせるんちゃいます?」
3人で死骸の処理の話をしていたら、後ろからメインデルト王が近付いて来た。
「おお。シモンか。こがいなところで何をしよるんだ?」
「ちょっと様子見に……この魔獣、どうするんですか?」
「凍らして各地に送る予定だが、さすがに処理しきれんじゃろうな」
メインデルト王の計画では、疎開した者を呼び戻すついでに輸送できる商隊も大量に派遣しているとのこと。こちらからも凍らせた魔獣を出荷して、途中で商隊に受け渡す予定になっているそうだ。
それでも間に合わないと思うので、王都から遠い位置にある死骸は凍らせずに樹海の奥に運び、木の養分にして森の復活に役立たせる。
幸い道は魔獣に踏み固められているし、魔獣も当分出て来ないから遠くに運ぶことは容易にできるそうだ。
「ちなみにエノールムって、食べることができるんですか?」
「文献にゃあ、ブチ旨いとなっとったけぇ食う。今晩はご馳走だでぇ」
「やった。六層の厄災の魔獣も旨かったから、もっと旨いんだろうな~」
メインデルト王は世間話程度に喋ったら、まだ忙しいらしく去って行く。するとプックが「意地汚いな~」とシモンをからかった。
シモンがエノールムが食べたいからこんなところまでやって来たと受け取ったみたいだ。ユーチェも食べたいのかヨダレ垂らしてる。
これでいちおうシモンの知りたいことはわかったので、屋敷に戻ってダラダラお喋り。夕方前に王様の使いという人が現れて、高級馬車に乗せられて連れ去られるプーシーユーであった。
『皆の者、よう大激浪を食い止めてくれんさった! 今日は大いに騒ごうぞ!!』
「「「「「わあああああ」」」」」
『乾杯!!』
「「「「「かんぱ~~~い!!」」」」」
メインデルト王の音頭で始まる宴。王都の中心部はどこもかしこも肉が焼かれ、ダークエルフは片手にお肉、もう片方の手にお酒を持って騒ぎ散らす。
シモンたちは、王様の使いに拉致られているので、超VIP席で。シモンはメインデルト王に肩を組まれているので、エノールムのお肉の味がイマイチわからないみたいだ。
メインデルト王が挨拶回りに行くことになって、やっとこさシモンもエノールム肉に感動。プックとユーチェは食べ過ぎてお腹が真ん丸だ。
「はぁ~……くったくった」
「もう無理……」
「確実に太ったどす~」
シモンもお腹いっぱいになったら、今後の話に移る。
「図らずもS級クラスと戦えたことは幸運だったな」
「どこが幸運なん?」
「ホンマに。一歩間違えたら、死んでましたで」
「七層のダンジョンボスは、S級なんだよ。たぶんエノールムほどじゃないと思うけど、いまの俺たちだけでは厳しいってのはよくわかっただろ?」
「「あぁ~……」」
今回はダークエルフ総出で勝利したのだから、プックとユーチェの理解が早い。
「というワケでプック。武器のクラスアップだ」
「てことわ~……プーシー8号を50BMG弾、プーシー4号をウィンチェスター弾で作ってええんか?」
「ああ。あと、50BMG弾で連射できる手持ちもひとつ欲しいな」
「合計3個。いや、4号はもう1個足して4個やな! 腕が鳴るで~!!」
武器は弾丸のレベルを上げての製造決定。ほぼプック用だから、プックのテンションアゲアゲだ。
こうしてプーシーユーは、階層移動の準備に取り掛かるのであっ……
「今回、大激浪に一番貢献してくれんさったプーシーユーじゃ! ダークエルフの英雄に拍手を~~~!!」
「「「「「ありがと~~~う」」」」」
宴の最後は、感謝の嵐。シモンたちは「王様、忘れてくれていたらよかったのに」と、恥ずかしそうに感謝を受け取るのであったとさ。




