101 掃討戦
今まさにエノールムの巨大な手が王都を叩き潰そうとしたその時、シモンの5連射が頭の中心を貫いた。
その攻撃を受けたエノールムはゆっくりと後方に倒れ、地響きを立てる。
「「「「「……」」」」」
九死に一生を得たダークエルフは無言。朝から24時間戦い続けた疲労もあるかもしれない。エノールムの凄まじい生命力に、もう終わりだと思った者も多かったのかもしれない。
「「「「「うおおああぁぁ~~~!!」」」」」
だが、エノールムは倒れたのだ。喜ばない理由がない。約5秒後には、ダークエルフの声が弾けた。
「シモンはん! 大丈夫でっか!?」
「シモンさ~~~ん!!」
そんな騒ぎのなか、シモンもエノールムと同じように仰向けに倒れたから、プックとユーチェは声を掛けていた。
「ぐうぅ~……だ、大丈夫だ……それより、トドメを……」
「動いたらアカン! 右腕、紫色になっとるで!?」
「王様が兵士に伝えてくれてるから大丈夫どす!」
火事場の馬鹿力を使った弊害。身に余る力が出てしまったからには、シモンの右腕は瀕死の重傷となって倒れたのだ。
ただ、シモンはまだ戦おうとするので、プックが状況説明をして、ユーチェは膝枕で労う。若干、ユーチェは役得とか思ってる。
エノールムが倒れてからの状況はというと、近接部隊が囲んで突いたり斬ったりしても動かなかったとのこと。念のため頭に登って剣で目玉をズタズタにしたけど、これでも動かなかったから死亡認定となった。
そんなことをしていたら大激浪の最後の一波が近付いて来た。これは多少強い魔獣は残っていたが、近接部隊は体力をかなり残していたから、援護ももらわず防御陣形で応戦中だ。
「やはり俺も……」
「まだ寝とき。てか、右腕、倍になっとるで。プププ」
「倍? ……ホンマや!? 気持ち悪っ!?」
「なんでこないなことになるね~ん。あははははは」
「笑うなよ~……てか、全然腕が上がらない。これは鎖骨をやったかも? いってぇ~……医者! 回復術師呼んでくれ~」
「もう手配済みやっちゅうの」
プックが馬鹿にして笑うと、シモンもやっと痛みが来たのか右腕が超心配。信じられないぐらいの腫れ方だもん。
「これ痛い?」
「痛いに決まってるだろ」
「ふ~ん……」
「痛いからつつくな。やめろって言ってんだろ。聞けよ!」
プックが悪い顔でチョンチョンとシモンの右腕をつついていたら見習い騎士が走って来て、治療薬をユーチェに手渡した。
「は~い。いま飲ませますからね~?」
「なんでユーチェが飲もうとしてんだ??」
「え? 飲めへんかと……」
「飲めるから!!」
でも、ユーチェは口移しで飲まそうとしたのでシモンのツッコミ。プックが瓶を奪い取って、シモンの口に突っ込んでやった。
「お、おお……おお~。すげっ。ナニコレ? あっという間に元に戻った。痛みも消えた。何を飲ませたんだ?」
「エリクサーじゃ」
シモンの右腕が元に戻ったところで、全ての指示を終えたメインデルト王登場。
「エ、エリクサーって、すっごい貴重なんじゃ……」
「そうじゃのぉ。市場でも年に数本、出回るかどうかじゃ」
「そんな物を俺に!?」
「大激浪の立役者なんじゃけぇ当然じゃ。というか、毎年掻き集めとった物が1本も使わんかったけぇ余りに余っとるんじゃ。言うなりゃあ在庫処分じゃけぇ気にしんさんな」
「あ、ありがとうございます……」
「そりゃあこちらの台詞じゃ」
メインデルト王は掃討戦でまだ忙しいらしいので、「感謝はまた後日にする」と言って本部に戻る。シモンはエルフみたいに英雄扱いされるのではないかと、ブルッと震えたのであった。
「さて……俺たちもちょっとは手伝おうか」
ダークエルフはまだ下で戦っているので、シモンは立ち上がるとスナイパーライフルを持ち上げた。しかし、右腕に力が入らないのか撃鉄が引けない。
「アレ? 指も上手く動かない。なんでだ……痛くないのに」
「疲労ちゃいまんのん? 丸一日撃って、最後に無茶な撃ち方したんやから、力も入らへんのやわ」
「そっか~……俺も5号で行くか」
「左手でやりますん? なら、ウチも勝てそうや~」
プックに指摘されたシモンはさもありなんとアサルトライフルを左利きで構えたら、ユーチェも参戦。プックもサブマシンガンで掃討戦に参加する。
「なんでや! シモンさん、右利きどすやろ!?」
「そうだけど……」
「だから変態と勝負したらアカン言うとるやろ」
利き手じゃなくともシモンの命中率はユーチェ以上。納得がいかないユーチェと、気持ち悪い物を見たような顔をするプックにシモンは挟まれて掃討戦は続く。
斯くして、大激浪は1人の死者もなく、お昼前に完全に沈静化したのであった……




