100 絶体絶命
ダークエルフの魔法使い総動員で放った魔法は、炎、風、雷、爆裂魔法の上位魔法。1人ではSS級の魔獣には大したダメージにならないが、魔法の得意なダークエルフの上位魔法だ。
全てが相乗効果を生み出し、巨大な毛むくじゃらの人型魔獣エノールムも簡単に隠れる大爆発となった。
「すっげ……」
「た~まや~」
「エルフもこれぐらいできるどす」
爆風が吹き荒れるなか、シモンは威力に脱帽。プックは花火気分。ユーチェはエルフも魔法が得意と言いたいみたい。
「こりゃ、あのデカブツもひと溜まりもありまへんで」
「みんなも勝った言うとりますな~」
直径40メートルを軽々超える大爆発なのだから、プックもユーチェも、ダークエルフの大多数も勝利を確信しているが、シモンは緊張を解かない。
「どうだろうな。俺はまだだと思う」
「そんなまさか~」
「そのまさかに備えるのが冒険者だ。備えないヤツは確実に死ぬ。全員、浮かれてないで戦闘準備だ。君たちもだぞ?」
シモンの口から死というワードが出ると、プックたちも気を引き締め直す。弾倉補充もしないで飛び跳ねて喜んでいた見習い騎士も仕事に戻った。
そうして全員で弾倉の補充をしていたら、前方の煙が晴れて来た。
「グガアアァァ~!!」
その少しあとに、耳を劈く大声。
「「「「「嘘だろ……」」」」」
エノールムだ。あの大爆発を耐え切ったのだ。
「さあ! もうひと押しだ! 俺に続け~~~!!」
「「お~!!」」
エノールムの大声に負けじと、シモンも大声。プラス、消音アイテムをオフにしてズドンッと戦闘再開。プックとユーチェもマネしてズガガガガ~と連射だ。
『シモンはまだ戦うとるぞ! 我々も続くんじゃ~!!』
「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」
それに負けじとダークエルフもメインデルト王が加わり、中級から初級魔法を連射。先程の大爆発で他の魔獣は飛び散っているから、弓隊も加えて遠距離組の総攻撃だ。
プーシーユーだけでも前に進めない攻撃なのに、それ程の手数が絶え間なく飛んで来るからエノールムは2歩後退。そしてその場に蹲った。
「嫌な予感! 王様! 全員を伏せさせてくれ!!」
「儂もする! 総員、防御体勢~~~!!」
冒険者の勘。シモンが叫ぶと近くで攻撃魔法を連射していたメインデルト王も呼応して、以心伝心スキルで全軍に通達した。
「ぐおお~~~ん!!」
その直後、エノールムはバッと立ち上がり、大きな口から極寒の吹雪を吐いた。
「さっむ~!」
「ユーチェ! 風の御守りは?」
「使っとります!」
「固まれ! 全員、手を俺の服の中に入れろ!!」
プックの固定シールドもユーチェの風魔法も役立たずでは仕方がない。せめて手が凍えないように、シモンは2人の両手を取って体と服で温める。
「お前らは違う! お前らはお前らで暖を取れ!!」
見習い騎士もマネしようと、シモンの背中から手を入れようとしたからシモンは激怒してるね。
シモンに怒鳴られた見習い騎士は一塊になって寒さに耐えようとしたら、メインデルト王と目が合ったのでド真ん中に招き入れる。
そりゃそうだ。王様を守る騎士だもん。畏れ多くてガッチガチで包み込んでいたから、メインデルト王は「寒いのにすまん」と感謝を述べていた。ただの緊張なのに……
他のダークエルフも伏せたあとは仲間とくっつき寒さに耐えていたら、ブレスは弱まって来た。
「2人とも、指は動きそうか?」
「うん。鼻水凍ってもうたけど」
「ウチも大丈夫どす。シモンさんの腹筋、あったかいわ~」
「じゃあ撃てるな」
シモンがプックとユーチェの手を温めていたのは、引き金を引けるように。2人はそこまで考えていなかったので、感心した顔をしている。
「あとは武器が凍ってないといいんだけど……凍ってたらヤバイよな?」
「間違いなく暴発するな。ちょっと温めたほうがいいかも?」
「それなら儂がやる。火を出したらええか?」
「ありがとうございます。できれば熱だけがいいんですけど」
話を聞いていたメインデルト王は、温めるには火を出すしかできないみたいなので、魔法で松明に火をつけてもらい、弾丸がない部分を炙ってある程度熱を持ったらプックに見てもらう。
「うん。いけそうや」
「よしっ! ブレスも止まったぞ! 俺に続け~~~!!」
「「お~!!」」
またしても再開はプーシーユーが火蓋を切る。シモンたちは立ち上がった瞬間、各々の持つ銃をブッ放す。
「ワレらも手は動くのぉ? シモンたちを助けちゃれ」
「「「「「はっ!」」」」」
「動ける者は、攻撃再開じゃ~~~!!」
メインデルト王の号令で、ダークエルフも攻撃再開。ただ、弓隊は手が悴んでいるからまだ動けない。さらに魔法部隊も3分の1は体が冷えて動けないから、攻撃人数は激減してしまった。
それでもプーシーユーがフル稼働しているからエノールムは前には出れない。ガード体勢で耐える。
「アカン。また弾切れや!」
「こっちもどす!」
「3号使え。プックは俺の腰の取れ!」
しかし、プックとユーチェの連射が止まってはどうしようもない。半自動式拳銃に持ち替えたが、こんな豆鉄砲ではエノールムも息を吹き返した。
ダークエルフの遠距離攻撃は人数がなかなか増えない。魔法部隊も魔力切れとなっているからだ。
そのせいでエノールムはゆっくりとだが前進。1歩1歩王都に迫り、最後の防衛線、近接部隊も攻撃範囲に入ってしまった。
「いい加減死ねよ!!」
「あーしも!!」
「ウチも!!」
シモンは必死に手動連射。プックとユーチェは弾倉を受け取ってサブマシンガンとアサルトライフルに交換して撃ちまくる。
それでもエノールムのHPは削り切れない。エノールムは右手を振り上げ、王都の外壁を叩き潰そうとした。
「クソッタレ~~~!!」
その時、シモンは1秒間にまさかの5連射。今まで同じ動作を繰り返して動きが最適化されたことと、絶対的な死を前にして火事場の馬鹿力が合わさったのだ。
その弾丸は一糸乱れず真っ直ぐ飛び、エノールムの頭に1発目が着弾。そこに次々と弾丸が後を追い、1発目を奥に押し込む。
そして5発目が到着したら、全てがエノールムの後頭部から飛び出した。
「ぐおおぉぉ~~~……」
その攻撃がラストアタックとなり、エノールムはゆっくりと仰け反って倒れて行くのであった……




