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001 蒼き群雄


 奈落……それは女神が邪神に敗北した世界。


 元々は球体だった惑星が邪神によって歪められ、小さな大陸から順番に縦に積み上げられた世界だ。


 人々は海を渡れなくなって混乱していたが、女神が残った力を使って現状を説明してくれたから、なんとか平静を取り戻す。


 しかしそれは上の階層のみ。下の階層ほど邪神の力が強くなり、手下のモンスターや、邪心のオーラに触れた獣が変質した魔獣によって蹂躙されていた。


 数年後にはその影響は上層部にも現れ、人々は恐怖することに……


 ただ、女神はまだ勝利を諦めていない。少し取り戻した力を使って、異世界から勇者パーティを召喚する。


 勇者パーティはモンスターや魔獣を蹴散らし、唯一階層移動ができる迷宮も破竹の勢いで踏破する。

 そのおかげで下層にいた人々も多く助けられたが、邪神の力には及ばなかった……


 勇者パーティは全滅したが、邪神はこの遊びを気に入ったのか、進行速度は遅くなった。

 そこに女神が人々にも戦える力を与え、いつしか元の世界を取り戻せるようにと祈りを捧げて、長い時が流れる……



 女神が邪神に敗れてから258年後……


 奈落の五層を踏破しようと、一組の冒険者パーティ【蒼き群雄】が迷宮ボス、人間の体に牛の頭を乗せた巨大なモンスター、ミノタウロスキングと戦っている姿があった……


「シモンさん! まだですか!?」


 いまミノタウロスキングを斬り付けて叫んだあまりパッとしない顔の男は、アールト18歳。ジョブは魔法剣士。蒼き群雄のリーダーだ。


「超特急でやってるって! ……よしっ! 準備完了! (おとり)に向かうぞ!!」


 地面に座ってゴソゴソしていた細身で老け顔の男は、シモン22歳。ジョブは弓を肩に担いでいるから弓使い。返事をしたあとは全力疾走で走り出した。


「アールト君! 回復するね!!」


 ミノタウロスキングと剣戟を繰り広げていたアールトに回復魔法を使った幼さの残る巨乳美女は、セシル18歳。ジョブはプリースト。蒼き群雄の回復役だ。


「こっちも準備整ったよ!」


 シモンがゴソゴソしていた位置から離れた場所にいるお下げ髪でキツイ目をした小柄な女性は、カティンカ18歳。ジョブは魔道士。蒼き群雄の遠距離アタッカーだ。


「いつでも来い!!」


 シモンがゴソゴソしていた場所から数歩下がった場所に陣取った鎧を着た大柄の女性は、ゾーイ18歳。ジョブは大盾戦士。蒼き群雄の防御の要だ。


「アールト! ()つぞ! 合わせろ!!」

「はいっ!」


 準備は全て整った。シモンは走りながら弓を構え、ミノタウロスキングの眉間に矢を放った。


「グルアアァァ!!」


 その矢は見事に命中。ミノタウロスキングが怒りの目をシモンに向けたと同時に、アールトは最前線から離脱した。


「おら! こっちだ!!」

「グルアアァァ!!」


 さらにシモンは矢の追加。完全にミノタウロスキングからロックオンされたら、おちょくるように逃げ回る。


「タッチ交代!」

「ああ!!」


 向かった先はダフネの下。シモンはダフネの肩をポンッと叩いて走り抜けた。


「グルアッ!」

「シールドバッシュ!!」


 ミノタウロスキングの振り下ろした大斧に合わせて、大盾で押し返すダフネ。狙った通り、ミノタウロスは後退して動きが止まった。


「いまだ! シモンボンバー!!」

「そんな名前じゃないって言ってるでしょ! フレアサークル!!」


 シモンの掛け声にカティンカがツッコンでからの炎魔法。その魔法はミノタウロスキングを中心に火柱が上がり、包み込んだ。

 それと同時にパンパンと弾ける音が何十発と鳴り響き、ミノタウロスのHPを大きく減らす。


「よっしゃ~! これで終わりだ!!」


 いつもの必勝パターン。このパターンに嵌まった迷宮ボスは確実に倒れるのだから、シモンは勝ちを確信して拳を振り上げた。


「ま……まだだ! 一斉攻撃! このまま仕留めろ~~~!!」


 しかし、HPは削り切れず。冷静なアールトの号令で、シモン以外のアタッカーが最強攻撃を放って、ようやくミノタウロスキングは倒れるのであった……



「さてと……このまま次の階層に向かうか?」


 ミノタウロスキングが迷宮に吸い込まれ、ドロップアイテムも回収したら、シモンはアールトに確認する。


「いや……もう少しここでレベル上げをしてから、次に挑もうと思う」

「だよな~……俺も賛成だ」


 蒼き群雄は堅実。これは途中参加したシモンが慎重だから、アールトもそれに(なら)って生存率を上げるようにしているのだ。


「でも、ここ最近、無理な探索をしていたから、たまには長期間休もう。それでいい?」

「俺に聞くな。リーダーはアールトだろ。てか、休みは嬉しいけどな」

「じゃあそういうことで……気を付けて帰ろう」

「おう!」

「「「うん!」」」


 こうして蒼き群雄は来た道を戻り、迷宮街に帰還して体を休めるのであった。



 1ヶ月後……


 宿屋の一室に、蒼き群雄が勢揃いして神妙な顔をしていた。


「はあ? 俺が、クビ……」


 それは突然、シモンだけが解雇を言い渡されたのだから……


しばらく毎日複数更新いたします

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