住む世界
ああ、あの人たちは嫌だなあ。そう思っていても、僕自身が滑稽に見えて、僕は苦しかった。確かに僕は繊細だから傷ついた。陰口とか悪口とか、そういうのが蔓延る銃弾の雨のような共同体だった。僕はさっと身を引いた。とりあえず一人、この静けさは安息だった。
僕は予てより親しかった数人とより話すようになった。時が経つ事にそういう人たちは沢山いることも知れた。すると気づくのは、僕の嫌いだったああいう空気が煙り始めること。今度は僕らが陰口とかを言う側だった。もちろんあの人たちには気づかれてはいないだろうけど、僕は居心地が悪い。ああ。また少しだけ身を引いた。今度の静寂は孤独だった。
僕も確かにあの人たちは苦手だったはずだけど、忌み嫌うのはどうもしっくり来なくなってきた。むしろ親友たちの驕った冷淡さよりも、純粋に見えた。そのまま笑って、そのまま憎む人達。ああ、正直な人っていいものだね。単純な人って、尊いものだね。僕はまた一つ身を引いた。少し前のめりだった。
しかし近づきすぎると耳は痛いからどうしようもない。でも僕の心を惹く人はそういう中にいるんだろうと思った。僕よりも純粋で、美しくて、あどけない人。僕は複雑でも、なんだか何重にも純粋で何重にも策士な気もする。全て理由があってやっている。親友はそれを尊がるけど、そんなものは些細なことだろう?
僕がこうして思うのは、両者は結局このまま会うことはないってこと。お互いそれを悲しむこともないってこと。でも僕にとってはとても惜しい。僕はなるべく両方の人たちと相対したいし、楽しくありたい。しかし、僕は欲張りだからやっぱりひとりだ。四面楚歌。結局俯瞰の静謐だった。
子供のように喋りたい、甘えたい。あの人たちには出来ること、あの人たちなら受け入れてくれること。シニカルな風情を知っていたい。それは親友と共にすること。
僕はどうしようか。この世界には数多もの世界がある。人々はすれ違うようで、出会うことはない。子供時代、誰もが異世界人を憎み、そして理性が育って、自分の世界に戻っていった。僕は憎むべきものを愛せずにはいられなかった。僕だけが取り残されたような世界。あの昔の美しい、つかの間の共存は何処へ……