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第九話 消えないデータ

高校生になって初めての土日、金曜の雨のせいなのかわからないが、冬真は風邪を引いた。肩を濡れっぱなしにしていたのが原因か、駅から家までの距離を傘無しで帰ったのが原因か、どれもカッコつけた結果がこれである。


「ハクション!!」


鼻水を啜りながら、ベットで安静にする。この時にも、親の有り難さを痛感する。それに、一人でも大丈夫だと、思っていた冬真は案外寂しがり屋であることに気づく。一人暮らしというのは、舐めてはいけないと学ぶことができた。


(そういえば、三奈方先輩。昨日、休んでたんだっけ?風邪かな?心配メール送っとくか...)


心配なった冬真はAOMを開き、三奈方先輩とのトーク画面にする。そこには、愛してるゲームの罰ゲームの動画が送られている。


(そういえば、「送っておいてあげるよ!」とか言って3つも送ってきたんだった。既読つけたまま、放置しちゃってたな...)


「あぁぁぁぁ!!思い出したくねーよ!!!!」


枕に顔を埋めながら叫ぶ。叫んだせいか、頭がクラクラする。一旦、落ち着き目的を思い出す。再びトーク画面を見て、文字を打って送信した。すると、すぐに既読が付いて返信がくる。


綾人 : 昨日、休んでたようですが、大丈夫ですか?


真雪 : ありがとう!風邪引いちゃってね。


綾人 : 自分も風邪引きました笑


真雪 : そうなの?大丈夫?


綾人 : 寝てたら大丈夫です。ありがとうございます。


真雪 : 早く良くなってね!^_^


冬真はグットスタンプを送ってスマホを閉じた。初めて休日に女子と連絡して、少しだけ嬉しかった。それに、AOM上でも会話できただけで気持ちが楽になった。


(やっぱ俺、寂しがり屋なんだな...てか、既読はや!)


そんなことを思いながら、再び冬真は目を閉じて眠った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



休日は風邪のせいで読みたい本が読めず大人しく寝込んでいたせいか、月曜日の朝はいつもより目覚めがよかった。しかし、学校には行きたくない。このまま家でゆっくりと本でも読んでくつろいでいたいが、学校を休むと親に連絡がいくため休めない。


朝ごはんはコンビニのおにぎりである。自炊しなければ不健康で早死にするのはわかっているが、めんどくさいというのが現実。しかし、本当に生活習慣病になりそうな生活を送っているため冬真自身、日々食事以外のことは気にして生活を送っている。


『ガチャ』


冬真は鍵を閉めて学校に足を運ぶ。駅に着くと、見たことのある人が駅のホームで電車を待っていた。また中宮がくるのではないかと期待していたが、来なくて残念だった。




いつもより長く感じる月曜日の授業が終わり、冬真は部室に向かった。部室に入ると、すでに三奈方先輩と中宮が本を読んでいた。中宮はなぜかそわそわしていた。


「お疲れ〜。」


三奈方先輩は本を読みながら適当に言ってくる。中宮も軽く頭を下げている。


「お疲れ様です。」


冬真は荷物を下ろして、いつもの定位置に着いた。しかし、ずっとそわそわしている中宮が気になって集中して本を読むことができない。三奈方先輩は気にせず、本を読んでいた。


「どうした?大丈夫か?」


声をかけるか迷った冬真は、声をかけることにした。すると、中宮はピタリと動きが止まり、手に持っていた本をテーブルの上に置いて、下を向きながら話した。


「ごめんなさい!」


『え?』


冬真と三奈方先輩は同じ反応をする。特に三奈方先輩は何が起こったのかわからず、固まっている。


「冬真君は悪くないんです。私が悪くて...」


(お、俺!?)


「冬真君。美夏ちゃんに何かしたの?」


目を細めながら聞いてくる三奈方先輩は冬真をガン見した。


「な、何もやって...ない...です。」


(心当たりがあると言えばあるが、わざわざ三奈方先輩の前で言わなくてもいいことだし...)


「本当に私が悪いんです。そ、その...その!金曜日に冬真君と相合傘して帰ってごめんなさい!」


『え?』


またもや、冬真と三奈方先輩は同じ反応する。中宮は体を震わせている。


「冬真君と三奈方先輩が付き合っているのに...帰ってしまいました...本当にごめんなさい...」


「え?ちょっ、俺、三奈方先輩と付き合ってなんかいないんだけど!」


冬真は必死に弁解をする。中宮はポカンと魂が抜けたような顔をしている。


「美夏ちゃん。なんで僕と冬真君が付き合ってることになってるの?」


落ち着いて中宮に聞く三奈方先輩。


「なんでってこの前、部室で「愛してる」って言い合ってたので...」


「ぶっはははは!!」


それを聞いた途端、三奈方先輩は爆笑し、冬真は頭から足のつま先まで熱くなったような感覚を覚えた。


「美夏ちゃん〜。それ、ただゲームだよ!」


あまりにも笑いすぎて、目から出てきた涙を手で拭いながら言う。冬真は何も言えず、ただ下を向くことしかできなかった。


「え?ゲーム?付き合って...ない...」


中宮は顔が真っ赤になりテーブルにうつ伏せる。横目でみると、中宮は耳まで真っ赤だった。しかし、中宮に三奈方先輩との「愛してるゲーム」を聞かれていたことがとても恥ずかしく、今すぐに死にたい気持ちだった。




「まぁ、僕と冬真君は付き合ってないし、「愛してる」って言い合っていたのはただのゲームだよ。ねっ!冬真君。」


「「ねっ!」じゃないですよ...本当に...もう...イヤ...サイアクダ...」


いまだに中宮の顔が見れず、すぐにでも死にたい気持ちは消えていなかった。


「美夏ちゃん。これ、冬真君が「愛してる」って言ってる動画だよ〜。」


三奈方先輩は中宮に動画を見せようとするが、反射的に三奈方先輩のスマホを奪い取る。そして、すぐに削除した。


「冬真君〜。それ削除しても意味ないよ〜。」


「え?」


「大切なデータはちゃんと複製してる決まってるじゃん。」


爆笑しながら言う三奈方先輩はどんなに性格が悪い女子よりもより悪い女子に見えた。


冬真の「愛してる」の動画は一生、三奈方先輩のスマホに保管されることになった。


(どうか...三奈方先輩が誤って流失しませんように...)


動画を視聴する中宮の隣で、冬真は涙目になりながら願った。

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