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第八話 雨

「ひゃっ!?」


下から覗き込んで顔をみると、中宮は変な声を出して驚いた。


「な、なに?」


「いや、顔が赤いから熱なのかなって...心配になって...」


「全然熱ないし、大丈夫だよ!」


「それならいいんだけど...」


気にしすぎても気持ち悪いと思い、冬真は大人しく椅子に座って本を読む。しかし、中宮のことが心配で集中して本を読み進めることができない。


(う〜ん...そういえば、三奈方先輩まだ、来ないのか?)


いろいろと気になることが増えて、さらに本に集中できなくなる。


「あの...三奈方先輩のこと聞いてるか?」


本を読んでいる時に申し訳ないが、恐る恐る聞いた。


「や、休みだって。」


「そ、そうか...ありがとう。あとさ、昨日はごめん。」


「え?」


「いや、昨日から怒ってるっていうか、なんか避けられてるような気がして...」


「いや、別に怒ってないよ。避けてるつもりもないし。」


笑いながら中宮は言った。


(今、見てる限り笑っているといことは俺の勘違いか...)


「そうか...」


そのまま、帰宅のチャイムが鳴るまで二人は黙々と本を読んだ。さっきよりも、集中して読むことができ読書を楽しめた。


最終のチャイムが鳴ると、冬真はキリの良いところで本に栞を挟んで、リュックにしまった。中宮もちょうど同じぐらいに片付けた。


「俺が鍵閉めて返しに行くよ。」


「いや、私がいくよ?」


「大丈夫だよ。帰りぐらいは俺が行くよ。」


そういって扉に掛かっている鍵を手に取った。中宮は最後まで「私が行くよ!」と言っていたが、笑いながら受け流した。部室の鍵を閉め、中宮とは別れて冬真は職員室に鍵を返しに行った。その後、階段を降りて昇降口に向かう途中、窓から雨が降っているのに気がつく。


(雨降ってるのか...まぁ、リュックに折りたたみ入ってるし。)


昇降口に向かいながら、リュックを前にして折りたたみ傘を取り出す。靴に履き替えて外に出ると、中宮が昇降口の屋根の下で雨が止むのを待っていた。冬真はスマホを取り出し、いつに止むのかを調べると、あと二時間ぐらいは降るそうだ。


(相合傘するのも気が引けるし...無視できないし...しょうがない...)


冬真は中宮のところまで行き、折りたたみ傘を差し出した。


「え?あ、冬真君。」


「これ使っていいよ。」


「で、でも...」


「俺は教室にもう一本折りたたみ傘あるし、大丈夫だよ。」


(本当は無いけど...まぁ、走ったらなんとかなるし...)


「折りたたみ傘、二本持ってきてる人今まで見たことないけど...」


痛いところを突いてくる中宮に冬真は少し動揺した。確かに言われてみれば、折りたたみ傘を二本持ってきている奴なんて見たことがない。


「そ、そうかな...あはは。」


「やっぱ、悪いよ。」


そう言って折りたたみ傘を受け取るのを拒む。しかし、二時間も一人で待たせるわけにはいかない。考えても良い案は思い浮かばなかった。ただ、一つの案を除いて。


これしかないと思った冬真は、少し顔を赤らめながら言った。


「い、一緒に入るか?」


「え?」


さらに顔が熱くなっていくのを感じる。恥ずかしくて中身の顔を見れない。


「べ、別に嫌ならいいんだ...」


「...い、嫌じゃないよ。入り...ます...」


中宮はそう言って冬真に近づく。折りたたみ傘を開いて、ゆっくりと駅まで一緒に向かった。折りたたみ傘は普通の傘に比べて小さいため、濡れないようにするには極力近づかないといけない。冬真は中宮が濡れないように傘を中宮よりにする。


「ぬ、濡れてない?」


「だ、大丈夫...です。」


お互い初めての相合傘。誰が見ても恋人同士だと思うだろう。


(こんなところ、同じクラスのやつに見られたらなんて言われるか...)


冬真は周りを警戒しながら、進んでいるといつの間にか駅に着いていた。折りたたみ傘を閉じて、しっかりと水を落としカバーをつける。中宮を見るとリュックは少し濡れているが、肩や腕は濡れていないようだった。


「それにしても、雨降るって言ってたっけ?」


ずっと無言のままもすごく気まずいため、冬真から話題を振る。


「い、言ってなかったと思う。」


「だ、だよなー。」


再び無言の時間が訪れる。


(会話続かねー。こういう時ってどうすればいいんだ...)


そんなことを思っているとちょうど電車が来た。一緒に電車に乗って冬真が角席に座ると、その隣に中宮が座った。無理に話しても会話が続かなければ、意味ないと思った冬真はリュックから本を取り出す。取り出した本を読もうとした時、


「冬真君。肩...」


「うん?」


言われた肩を見てみると、雨で濡れていた。そこまで濡れていないため、気にせず「大丈夫だよ。」と一言いった。


「ハンカチ貸そうか?」


「え?いやいや、そんな大して濡れてないし。」


心配そうに冬真の肩を眺める中宮を見ていると、(優しい子なんだな)と心の中で思った。




本を読んでいると、次が冬真の最寄り駅だった。冬真は折りたたみ傘を中宮に渡した。


「俺、駅から近いし使ってよ。」


「え?で、でも...」


「次の月曜日、部活で返してくれたらいいし。気にしないで〜。」


そう言ってタイミングよく最寄り駅に着き、逃げるように降りた。中宮はすごく申し訳なさそうな顔をしていたが、冬真的には濡れずに帰って欲しかった。


冬真は駅から家まで近いと中宮に言っていたが、そこまで近くない。屋根のあるところを極力通り、屋根が無いところは全速力で走った。




「ハクション!!」


自分が住んでいるマンションに着くと全身濡れていた。すぐに風呂に入り、体を温めた。この時、親の有り難さを知った。


(今から家事全般やるのか...風呂から上がりたくねー...)


風呂から上がって洗濯物などの家事をした後、ベットでスマホをみた。みると、AOMから通知が一件きていた。AOMを開くと、美夏という名前が表示されており、


美夏 : 今日は傘、ありがとう!

   月曜に傘返すね。


と届いていた。冬馬はグットスタンプを送り返してスマホをテーブルの上に置いた。

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