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第六話 一緒に登校

(喉が痛すぎる...)


昨日、2回叫んだことによって喉を壊した。今となっては二回とも大声で叫んだことに後悔している。二度と2回叫ぶようなことはしてはいけないと学んだ。


舌でのど飴を転がしながら、学校へ向かう。今日は金曜日であるため、明日は土日。つまり、高校生活初の休日。と言っても、何もする事はない。


(てか、どうすればいいんだろう。俺、文芸部に入るにしても親が遠いからハンコなんて貰えないし...土日に行ける距離じゃないし...)


駅のホームに着くと、同じ学校の人が列を作って電車を待っていた。その中には男女で登校している人もおり、朝から惨めな気持ちになった。


(朝から一緒に登校...羨ましい...クソ)


「おはよう。冬真君。」


後ろから誰かが名前が呼ばれて振り返ってみると、そこには中宮がいた。


「え?あ、おはよう。」


声を出す度に喉がジーンと痛くなるが、我慢しながら挨拶した。


「その声、どうしたんですか?昨日の叫びですか?」


ニヤニヤしながら聞いてくる中宮の姿を見ていると、昨日よりも元気なったということがわかる。元気になってくれたら、それに越したことはない。


「あはは。そうなんだよね〜」


喉が痛く、掠れ掠れになっている声で答えた。


(これ喉が痛すぎる...極力あまり喋らないようにしないと...)


そうしているうちに電車が来て一緒に乗る。


(あれ...?俺...今女の子と一緒に登校してるくね?)


半分嬉しい気持ちだが、もう半分は周りの目やそんなことに気づく自分に対する嫌悪感があった。それに今日の電車は混んでおり、中宮と冬真の距離はとても近かった。


(よく恋愛アニメや恋愛漫画とかで見るけど...これって現実だとキツいな...気まずいし...)


電車が止まる度に揺れが生じて、他の人に触れたり、中宮の肩に手が当たったりして気まずい雰囲気が流れた。


「次降りよっか。」


中宮が冬真の耳元で囁いた。なぜ、学校の最寄り駅のその前に降りるのかがわからなかった。腕を掴まれてゆっくりと電車から降りた。降りた際に周りを見てみると、何人か同じ制服の人も降りていた。


「こっちの方が人が少なくて良いんですよ。」


「そ、そうなのか。」


「それに、当たらないように頑張っていたみたいだし。」


「え?あはは。」


笑いながら冬真は中宮について行った。まさか、この駅からでも同じように行けるなんて知らなかった。それに、最寄り駅と指定されている駅より少し近いというのは驚きだった。確かに近いというのは実感するが、なんせ道が複雑すぎてどこにいるのか、マップアプリを使わないと迷ってしまう。そう考えると、学校が指定している最寄り駅は単純な道順でわかりやすい。


しかし、またしても無言の時間ができてしまう。喉が痛くて喋れないのは事実。だが、この無言の時間が気まずく冬真は話しかけた。


「こ、こんな行き方あったんだね。」


「そうだよ〜。後、喉潰してるから無理に喋らなくてもいいですよ。」


「大丈夫だよ。それに、タメ語で話そうよ。」


(時々、タメ語の時もあるけどな...)と一人二役でつっこんだ。


「え、あ、そうだよね。」


「いや、無理にはしなくても...」


急に中宮の歩くスピードが少し速くなる。その時、冬真が曲がり角でミラーをみると、自転車が見えた。中宮はそれに気づかず歩き進めようとしているため、冬真は腕を引っ張って自分の方に寄せた。その瞬間に自転車が通り過ぎた。


「ちゃんとミラー見ないと...」


「あ、ご、ごめん。ありがとう...」


中宮の顔を見ると、少し赤くなっているような気がした。それを見た冬真も顔が熱くなる。すぐに引っ張った腕を離した。


「ご、ごめん!そんなつもりでは...」


「大丈夫。ありがと。い、行こっか...」


「はい...」


なんやかんや冬真と中宮は最寄り駅よりも時間がかかって学校に着いた。冬真は中宮と別れ、自分のクラスに入った。


(この入る瞬間は慣れないな...)


そんなことを思いながらもゆっくりと扉を開ける。


「女子と来たってマジ?」

「もうヤッたのか?」

「あれ彼女か?」


同じクラスの男子生徒が冬真に群がる。一体何が起きているのかが理解できなかった。


「な、なんのこと?」


「いやだから!女子と登校したんだろ?」


「え?」


「惚けるなよ。俺は見たぞ!」

「俺もだ!」

「てか、なんか声変じゃね?」


扉の前で問い詰められる冬真は一刻も早く学校が終わってほしかった。




終了のチャイムが鳴り部活生徒は学校に残り、入っていない生徒は帰宅する。毎時間、のど飴を舐めていたおかげか、喉の調子が良くなった。冬真は特に学校に残る必要はないためそそくさと教室を出ようとした時、先生に呼び止められた。


「あっ冬真君。」


「はい?」


「昨日、保護者さんから電話があって、文芸部に入部するだよね?」


「そのつもりですけど...」


昨日、冬真は家に帰った後、両親に文芸部に入ること、入部届のハンコが必要だということ、を伝えておいた。


「それじゃ、今日から文芸部の部員なので頑張ってね!」


と言ってそそくさと先生は教室を出た。


(今日から文芸部の部員?え?まじで?)


まさか体験入部したその次の日に入部するとは思ってもいなかった。とりあえず、文芸部の部室に向かった。


文芸部の部室に着くと、三奈方先輩が椅子に座って本を読んでいた。


「え?冬真君じゃん。どうしたの?」


「いや、先生から文芸部の部員になったって言われて...」


「え?ほんと!?」


まるで子供がクリスマスプレゼントを貰った時のように喜んでいる。そんなに喜ぶことなのかと冬真は思ったが、一年間一人ぼっちだった三奈方先輩のことを考えてると嬉しいのはわかる。


「そういうことなので、よろしくお願いします。」


そう言って、昨日と同じ席に座り荷物を置いて本を取り出した。


「いやいや!なに本読もうとしてるの!?部室で男女二人っきりだよ!?」


「何言ってるんですか?」


「じゃー、愛してるゲームしようよ!」


「は?」


後でこの愛してるゲームが飛んだ勘違いを生むなんてこの二人は思ってもいなかった。

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