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第三十二話 文化祭②

(みーちゃんのことで聞きたいこと......)


小沢が言うみーちゃんとは、中宮美夏のことである。小沢は中学の時から繋がりがあるらしく、今回文化祭準備で起きた出来事を中宮は小沢に相談したんだろう、と大方の予想がつく。冬真は唾を飲み込み、黙って小沢に頷いた。


「単刀直入に聞くけど、みーちゃんのことどー思っているのよ?」


(小沢さんってこんな口調強かったっけ...?)


冬真は小沢の目を見られず、下を向きながら応える。


「自分でもよくわからないよ。小沢さんがどこまで知ってるのか知らないけど——」


「全部よ。」


「へ?」


下を向いていた冬真の顔が一気に小沢の方へ向く。


「あんたがミルクティーあげたとか、女子全員がフルーツオレ好きだと思っているとか、みーちゃんに告白したとか。まぁ全部よ。」


冬真が中宮に対して行ったこと、全ては小沢に筒抜けだった。


「それに加えてあんたが思った以上に変態ってこともね。」


(おい、待てゴラ。変態ってどういうことやねん。それに、フルーツオレあげたとか、結構前な話だぞ。)


「ちょっと、小沢さん。少し誤解というか、告白とかしてないし、全然違う気が......」


つくり笑顔で話す冬真の話を小沢は遮る。


「そんなことより!」


(そんなこと...?)


「次、みーちゃんのこと不安にさせたり、泣かせたりしたら許さないからね!」


小沢はスタスタと教室へ戻っていった。冬真は手に持っていたハンカチで少し目元を拭いてから、小沢の後を追うように教室へ入ると、小沢が夜見と積田が詰め寄っている。


「やよいちゃん!すごい怒号というか、なんか怒ってた?」


積田が小沢の手を取りながら聞いている。それを心配そうに見ている夜見。


「えーと......大丈夫だよ!」


そんなやり取りの横を通り過ぎようとした時、積田が冬真の顔に向けて指をさした。


「ほんと?でも、冬真くんの顔が死んでるよ?」


(え?俺、死んだ顔してるの?)


積田が言うと同時に、3人の目線が一気に冬真へ集まる。小沢は少し慌てながら、口を開く、


「と、冬真くんはな、なんでかなー!だ、大丈夫かなー!」


小沢はバレない程度の強さで冬真の脛をつま先で蹴る。


「イッ!!」


思いの外強く、脛を抱え込みながら床にしゃがみ込む。


「だ、大丈夫?冬真君!」


そんなやり取りを見ていた夜見がすぐに冬真の元へ駆け寄ってくる。


「え、え?ど、どうしたのー?だ、大丈夫かな?」


明らかに挙動のおかしい小沢。なぜ、積田と夜見ほ気づかないのか、冬真にとって不思議でしかなかった。


「だ、大丈夫!あはは。」


ゆっくりと立ち上がり午後に向けて準備をしようとした時、放送が入った。


「本校の文化祭を再開致します。」


冬真は午後から文芸部のことで動かなくてはならないため、この場は3人に任せた。


「んじゃー、冬真君頑張ってねー!」


「うん。」


夜見が手を振って冬真を送り出す。冬真も軽く手を振った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




文芸部が借りて販売している空き教室へ向かう途中、小沢が言った言葉が冬真の頭の中でリピートする。



「——泣かせたりしたら許さないからね!」



(美夏ちゃんは泣いていたのかな......)


廊下ですれ違う人は笑顔で溢れている親子や地域住民の方々。


(今日は文化祭だ。こんなに暗い顔してたらダメだ!)


冬真は一度立ち止まって顔を少し震わせた後、笑顔で一歩踏み出そうとすると背後から聞き覚えのある声が聞こえた。


「やぁー!冬真君!」


恐る恐る振り返ると、そこには廊下ですれ違う人よりも笑顔である三奈方先輩だった。両手にはイチゴ飴を持っている。


「あは〜...どうも。」


三奈方先輩はいつも通り、男装姿である。結構な声量だったため、男子生徒の格好なのに女子声ということで何人かが二度見している。


「てか、先っからなんかすごく見られるんだけど......」


耳元で小声でいう三奈方先輩に冬真は思わず、顔を崩す。


「そら、男子姿なのに女子声ならビックリしますよ。」


「...確かにね。」


そう言いながら、なぜか片手に持っていたイチゴ飴を冬真に差し出す。


「ほい。」


「いや、いらないっすよ。」


「こんなに食べれないから。」


(なぜ2本も買ったんだよ。)


冬真はイチゴ飴を受け取り、教室まで一緒にイチゴ飴を食べながら歩き出した。


教室へ着くと、すでに中宮が色々と作業をしていた。そこにイチゴ飴を食べながら踏み入れることに冬真は躊躇したが、三奈方先輩はそんなことも気にせず入る。


「おっつかレモン〜!」


「お疲れ様です、三奈方先輩。それに綾人くんも!」


中宮も文化祭であるためか、綺麗に三つ編みをしている。すると、中宮が冬真の方へ近づいてくる。


「美味しそうなもの食べてるね。」


「あ、うん。美夏ちゃんも食べる?」


「え?いいの?それじゃー......」


中宮は冬真の手を持って、イチゴ飴を咥えた。頬を少し赤らめさせながら、上目遣いで冬真の方を見る。それが冬真の心臓を大きくドキッと跳ねさせた。


(なんか...すごいエr——)


「早くやるよー!」


三奈方先輩の声にハッと我に帰る。


(いかん!いかん!俺は何を......)


冬真は深呼吸をした後、文芸部の仕事に取り掛かった。

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