第三十一話 文化祭①
投稿が遅くなり申し訳ありません...
文化祭ウィークはあっという間に過ぎ去り、文化祭当日を迎えた。冬真が通っている高校は地域住民との交流を大切にしているため、土日の2日間で開催されて一般の方も含めて文化祭を行う。クラスで行うお化け屋敷はなんとか完成し、文芸部の方も新たな場所を借りて、1日目から販売することができるようになった。
(もう、こんなに人がいるか...!?)
文化祭が始まるまで約一時間弱あるが、校門の前には長蛇の列が出来上がっており、中にはスマホゲームをしながら友達と待っている小学生集団もいた。
(小学生でスマホかぁ...俺なんか高校生からだぞ?)
そんなことを思いながら校門の方へ歩いていると、後ろから冬真を呼ぶ声が聞こえる。
「あっ、冬真君〜!」
振り返ると冬真の後ろから夜見が手を振りながら歩み寄ってくる。今日が文化祭だからなのか、夜見の容姿はいつもより綺麗に映った。
「あ、おはよう。夜見さん。」
「すごい人の量だね!」
「そ、そうだね!」
(なんか今日の夜見さん...すごい楽しそうだな...)
「今日から文化祭かぁ〜!冬真君の役割って?」
グッと背伸びしながら、夜見が冬真に尋ねる。
「俺は受付係だよ〜。」
「なにそれ、めっちゃ楽じゃん!」
「だろー?」
羨ましそうに冬真の方を見る夜見は冬真のドヤ顔に腹が立って、冬真の脇腹をつつく。
「ひゃっ!」
いきなり突かれたことによって声が裏返ってしまい、校門に並んでいる人の視線が冬真に集まる。
「い、いきなり何してるの?!」
冬真は小さな声で夜見に尋ねる。
「なんか腹たったもん。」
ほっぺを軽く膨らませながら、冬真より1歩先に足を速く動かさせた。そんな様子を見ていた冬真はふと思う。
(......夜見さんって意外と短気なのか?)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冬真と夜見が一緒に教室へ入ると、クラスの大半が颯爽とお化け屋敷の準備に取り掛かっていた。お化け役の人はメイクをしたり、音響や冷風などの装置の操作確認を行なっている。冬真は教室の端に荷物を置き、廊下に机を出して受付できるように取り掛かった。なんせ、受付係は冬真のみ。来るお客さんに注意事項や懐中電灯を渡すだけで、単純作業である。
「よいっしょっと...」
あまり廊下が圧迫されないように、できるだけ壁に寄せて机と椅子を置く。スマホで時刻を確認すると、文化祭開始まで残り30分を切っていた。
「綾人〜!少し手伝ってくれるか?」
教室の扉から顔だけ出した学級委員長——赤坂大翔だった。
「う、うん。いいよ。」
再び教室の中に入ると、色々とダンボールが倒れていた。すぐそばには正座しながら女子たちに罵倒を浴びせられている男子生徒2人組。
(また、コイツらやらかしたのか...?)
「これを直したいんだ。」
大翔が指差したのはもちろん、色々とダンボールが倒れている方向。
「全然いいよ。」
冬真と大翔、他多数の人と修復作業に取り掛かった。修復作業を終えると、学校全体にチャイムが鳴り響く。
「本校の文化祭を開始致します。」
校長先生が開始の合図を生徒に出した。クラスのみんなは落ち着いて自分たちの持ち場へと移動する。冬真もゆっくりと教室から出て、受付の椅子に腰を下ろす。
「ふぅ〜...」
(ここで、昼まで仕事かぁ...)
冬真は頑張って嫌な顔をせず、来るお客さんに注意事項などの説明を手際良く行なった。そうしているうちに時間はあっという間に過ぎていき、アナウンスが入る。
「今から、生徒の皆さんはお昼休憩に入ってください。」
(あっという間だったなぁ...でも、午後から文芸部かぁ...)
午後からも仕事をしなければならないと思うと、冬真の肩はガクッと落ちる。あくびをししつも、椅子から立ち上がり椅子を机の下にしまう時、肩を突かれる。
「ん?...うっ、うわ!!」
振り返ってみると、傷メイクをした夜見が立っていた。頬は赤く火傷したような感じになっており、腕にも擦り傷のようなメイクまでされている。
「あはは!!びっくりしすぎ!!」
(そら、こんなの見たら子供泣くわ...)
何度か子連れの親子の受付をして楽しそうに入っていく子供の姿を見届けていると、必ず子供はギャン泣きで出てきていた。
「いや、リアルすぎない!?」
「これ雫ちゃんがやったんだぁ〜!」
「ヘぇ〜...」
「なんかテッシュとかコットンでぐちゃぐちゃにしてベタァ〜〜ってして、その後、色をドバァ〜ってしてね。それでね、あとは——」
(うんうん、夜見さんは圧倒的に説明が下手くそだな。)
冬真はコクコクと頷きながら、夜見の下手な説明が終わるまで笑顔で聞いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
昼食は教室の端で一人——
(なんで俺は夜見さんと積田さん、それに小沢さんと一緒に食べることになったんだ...?!)
冬真は食堂が混むことを予想して、あらかじめコンビニで買っておいたおにぎりと野菜ジュースを一人で食べようとしていた。しかし、冬真の周りに女子3人。クラスには冬真たちしかいなく、他はどこかのクラスへみんな行っている。
(圧倒的、場違い感...俺はどうすれば...)
目のやり場に困りながらも、買ってきてたおにぎりを静かに口へ運ぶ。夜見と積田、小沢は仲良くお喋りをしている。
(そもそも、ここで食べる必要なくないか?)
「——冬真君はどう思う?」
「へ?」
聞き逃した。3人の目線が冬真の方に突き刺さる。
(これは勘で応えるしか...)
「い、いいと思うよ!」
頑張って笑顔を作りながら応えると、「だよねー!」と夜見が言った。その後の会話から積田が美容の専門学校に目指している事の話をしていたらしい。夜見にした傷メイクは積田がしたそうだ。
野菜ジュースを飲み終えた後、冬真はお手洗いへ向かう。用を済ました後、ハンカチで手を拭きながら戻っていると、腕を組みながら壁にもたれかかっている小沢が視野に入った。さりげなく通り過ぎようとすると、腕を掴まれる。
「ちょっと。」
「え?」
小沢は眉間にしわを寄せながら、冬真の顔を見て言った。
「みーちゃんのことで聞きたいことがあるんだけど。」
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