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第二十八話 文化祭準備⑧

「さては、気にしてるね?」


冬真の顔を覗き込み、目を合わせる。


「し、してないよ...」


「嫌だよね。あんな感じで言ってくるヤツ。」


(うん?)


「別に冬真君は悪くはないと思うんだけどね......べ、別にそういう意味で言ってるじゃないよ!!」


顔を少し赤くしながら夜見は弁解する。


(いろいろツッコみたいことがあるが、そっちで安心した...)


「ありがとう。夜見さん。」


冬真は微笑みながら、歩き始める。夜見は少し遅れて、冬真の後をついて行く。


(やっぱり、冬真君...覚えてないのかな...)




冬真と夜見は教室にダンボールを運んだ後、再び制作作業に取り掛かる。黒板には学級委員長である赤坂大翔が昨日、まとめてくれたTo Doリストが書いてある。制作チームはやるべきことが多く、あまり休憩している暇はない。しかし、中には空気が読めないヤツもいる。


「おら!おら!」


「ちょっ!やめろって!!」


制作に使うための新聞紙を細く丸めて、チャンバラごっこをしている。やはり、男子は高校生になってもガキ心は持っているんだよなぁと冬真は思った。

(※冬真綾人も立派な男の子です。)

面倒なことになる前にやめてくれ と思いながら作業していると、悲劇は起きる。


「テメェー!顔はなしだろ!おらぁーー!」


「やめろって!!あっ...」


チャンバラごっこをしていたうちの1人が避けるために一歩後ろに下がった時、下に置いてある筆で体勢を崩す。倒れないように反射でもう片方の足が後ろに下がった時、カッターを使っていた女子の机にぶつかる。


「イタッ!!」


カッターを使っていた子が左手の人差し指を切る。周りにいた女子は何事と言わんばかり、その子の方に駆けつける。冬真もその子の声を聞いて顔を上げる。チャンバラごっこしていた男子たちが謝っていることからだいだいの予想がつく。


横にいる夜見もあちゃーっというような感じの顔をしている。怪我した女の子は指を押さえて教室から出て行く。複数の女子がチャンバラごっこしていた男子を責めている。


「冬真君もしちゃだめだよ。」


ボソッと夜見が冬真の耳元で呟く。


「しないよ...そもそも、友達いないし...」


「かなしっ!」


怪我した子は戻ってきてテッシュで止血している。チャンバラごっこしていた男子はその子に何度も頭を下げて謝っている。怪我した子は左手の親指で切った部分を押さえて、片手でバックの中を漁っている。


おそらく絆創膏を探していると思い、左ポケットにいつも常備している絆創膏を夜見に渡す。


「え?」


「怪我した子に渡してきてくれないかな?」


目を点にしながら驚く夜見は、「うん!」と言ってその子の方に駆け寄った。


「はい、これ。()()()から。」


(わざわざ俺の名前言わなくていいだろ!!)


冬真は恥ずかしくて、必死に作業し、聞こえてない風を装う。すると、冬真と一緒に作業していた男子が「女子力高いなー!」と感心する。


「そんなんじゃないって。」


「なーに?恥ずかしいのか?」


「うっ、うっせぇー!」


からかってきた男子は笑っている。


(やっぱり覚えてないよね...)


そのやり取りを見ていた夜見は心の中で思った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「販売許可されました〜!!」


冬真が部室に着いて椅子に座ると、いきなり素早く拍手しながら三奈方先輩は言った。


「それ、美夏ちゃんのおかげですよ。」


冬真は冷たい目で三奈方先輩を見る。


「な、なんだい!その目は!」


三奈方先輩は、冬真の頭をグリグリしようと近づく。それを受けないように冬真は椅子から立ち上がって避ける。すると、三奈方先輩は立ち止まって何かを考え込む。


「やっぱり、冬真君。最近、柔軟剤変えた?」


「変えてないですよ...俺く、臭いですか?」


「いやいや、なんか甘い匂いのような...」


「えぇ...ってちょっ!」


三奈方先輩は冬真の肩を辺りに顔を近づけて、匂いを嗅ぐ。中宮も気になったのか、三奈方先輩と同じように匂いを嗅いだ。すると、三奈方先輩はニヤけながらわかったような反応をする。


「さては冬真君...この匂い...女だろ!!」


「いや、絶対ないでしょ。」


「確かに、陰キャの童貞にはないね。」


「それ、春崎先輩が言ったやつですよ!!めっちゃ、悪口ですからね!!」


冬真のツコッみに対して、三奈方先輩は腹を抱えて笑った。すると、中宮が恐る恐る冬真に尋ねる。


「この匂い...今日、会った子の匂いじゃない?」


「へ?」


冬真もそんなに匂いがするのかと思い、嗅いでみるとほんの少し夜見の匂いがした。


「まぁさか...冬真君。そんなに匂いつけてるってことは......抱き合ったりとかしたの?」


「そんなのしませんよ!!」


心当たりがあるとすれば、カッターで怪我した子の時である。冬真の耳元で呟いたり、なんせ、夜見は冬真の左側にいることが今日一日中、多かった。


「綾人くん...どういう関係なの!?」


中宮が冬真に顔を近づけて尋ねてくる。


「普通にクラスの人だよ!?」


「知ってた?女性の人は男性の左側に行きやすいんだって。それはね、男性から守られたいと思っているからなんだよ。つまり、その女の子は綾人くんに守ってほしいっていうことであってそれはつまり...」


「ストォォォォッッップ!!すごい、早口で何言ってるかわからないよ、美夏ちゃん。」


三奈方先輩は中宮の早口で喋る姿をボケ〜としながら見ていた。今もボケ〜としている。


「あ...ごめん...」


「俺、彼女いない歴=(イコール)年齢だからね!?陰キャだからね!?自分で言うのとっても恥ずかしいけど!」


必死になって言っていると、中宮がクスクスと笑い出した。


(なんか俺、面白いこと言ったか...?)


「やっぱり、綾人くんでよかった。」


何がよかったのか、冬真には理解できなかった。

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