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第二十七話 文化祭準備⑦

「っていうのは冗談だよ。」


いきなり素に戻って、椅子に座り直す。情緒不安定な三奈方先輩をこれからも相手しなければならいないと思うと、しんどくなってきた。


「はぁ...」


大きなため息をつく。今のやりとりは必要あったのか、そもそも、こんな嘘つく必要あったのかなど色々考えていると、体がアイスのように溶けそうになる。三奈方先輩は椅子に座りながら、腕を組んでじっくりと表紙絵を選んでいる。


(そしたら、なんで男同士が抱き合ってる絵があるんだよ...)


「決めた!この笑っている絵にするよ。」


三奈方先輩はテーブルにある絵を指差す。


「おっけー。まゆっち。」


河上は三奈方先輩が指差した絵を差し出し他2枚を片付けようとした時、三奈方先輩が河上の手を握った。


「どしたの?まゆっち。」


「こ、この絵貰ってもいいかな?」


三奈方先輩が言った"この絵"とは、男子2人が抱き合っている絵である。河上は「いいよー!」と抱き合っている絵を三奈方先輩に渡した。


「はぁ...そそる...♡」


『なにが!?』


冬真と中宮は口を揃えて、ツッコんだ。顔を赤くして、ニヤニヤしている三奈方先輩はどこかやらしさを(かも)し出していた。


「綾人くん...」


低い冷たいトーンで中宮が冬真を呼ぶ。冬真は慌てて、三奈方先輩に尋ねた。


「み、三奈方先輩。そ、その絵どうするんですか?」


「...うへ......」


(うん。これは聞いちゃだめなヤツだな。)


冬真は心の中で反省した。河上はこれから教室で文化祭準備の手伝いに行くらしく、部室を出る準備をする。


「綾人くん...」


「あー、河上さん。ありがとね!」


またもや、低い冷たいトーンで中宮が冬真を呼ぶ。今、中宮と会話すると面倒なことになると思い、必死に会話をつなげる。


「いきなりどしたん?とうまっち。」


「いやー、本当に嬉しいから。」


「うへ。照れるな〜...それじゃーね!」


少し顔を赤くしながら、河上は部室から出ていった。


「綾人くん...」


「ちょっ、ちょっとお花摘みに行ってくるね〜...」


椅子から立ち上がろうとすると、結構な力で肩を掴まれる。


(あっ死ぬわ。殺される。)


「さっき、三奈方先輩のこといやらしい目で見てたでしょ!!!」


「いやいや!!見てないって!!」


「うへへ...うん?僕をいやらしい目で見てた...?」


さっきまでよだれ垂らしながら、河上から貰った絵を見ていた三奈方先輩がふと我に返る。


「冬真君の変態!!!」


「いやいや、よだれ垂らしながら絵を見ていた三奈方先輩に言われたくないっすよ!!!」


慌てて言い返すも、冬真は自分の顔が真っ赤になっていることが熱として伝わってくる。


「そもそも!三奈方先輩は男装してるじゃん!」


「だけど、綾人くんの目はいやらしかったよ!」


「いやいや...うん?河上さんって三奈方先輩と普通に喋ってだけど...男装してるって知ってるの?」


「た、確かに...僕と普通に喋ってたな...」


「って!綾人くん!!話題変えないのー!!!」


中宮は腕を振りながらパンチを冬真に何度も与える。しかし、弱すぎていい感じのマッサージになってしまっている。




「ヘクチッッ!!」


一方その頃、河上はクラスの友達としっかり文化祭準備に取り掛かっていた。


「どしたの?ななみちゃん、風邪?」


「いや〜、誰か噂してるかも...」


河上は鼻を(すす)った。


(てか、まゆっち...男子の姿なのに女子の声だったな...次あったら性別きこー。)


冬真が責められていることを知らず、呑気にダンボールに色を塗っていた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




翌日、冬真は昨日と同じように文化祭準備に取り掛かった。小沢と積田は衣装チームらしく、お化けの衣装を作ったりしている。夜見は冬真と同じく制作チームで、淡々と与えられた仕事をこなしている。


「あー。ダンボール少なくなってきたし、誰か取りに行ってくれる?」


制作チームの1人が言った。冬真はちょうどダンボールに黒色のペンキを塗り終える。しかし、冬真にとって、"あそこの部屋"はあまり行きたくない。


「じゃー、冬真君と...他誰か行ってきて〜!」


(俺だけ指名!?なんかハブられてる感じ...てか、4人で運んだダンボールもう無くなるの!?)


「それじゃ、私が行くよ。」


冬真と一緒に取りに行ってくれるのは夜見だった。


(なんか夜見さんには申し訳ないなぁ...)


「それじゃ、行こっか!」


「う、うん。」


また、小沢の時と同じようなことは起きないと願ってダンボールを取りに行った。幸い、無事にダンボールを持ち運べることができ、冬真は一安心した。夜見と教室へ戻っている時、中宮に遭遇した。


「綾人くんじゃん。」


「あ、ども。」


中宮は友達2人を連れていた。


「これ美夏ちゃんが言ってた子?」

「これ〜!?」


(なんか俺...否定されてるくね?)


「ち、違うよ〜!それじゃ、またね〜、綾人くん。」


中宮は友達2人を連れてどこか行ってしまった。


「あの子知り合い?」


すると、夜見が尋ねてきた。


「まぁ、部活一緒で。」


「ふーん...」


(美夏ちゃんが言っていた子って...誰だろう...)


中宮と一緒にいた2人のうち1人の発言が、冬真の頭の中でなぜかリピートされる。


(って!なんで俺、気にしてんだ!!)

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