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第二十四話 文化祭準備④

「めっちゃわかる〜!」


何やら、部室で中宮が舞い上がっており、テンションが高い。部室の外まで中宮の声が響いており、いつもの中宮とは異なる。冬真はゆっくりと部室の扉を開けた。


「お、おつかれ〜...」


気まずそうに軽く挨拶すると、冬真の視界には河上と中宮が映る。まだ、二人は冬真の存在に気づいておらず、腹を抱えてながら笑っている。ここまで笑顔で笑っている中宮を見るのは初で、新鮮さを感じた。


「でさでさ〜...」


中宮が河上に話を続けようとした時、冬真の存在に気がつく。まだ、冬真の存在に気がついていない河上は「それでそれで?」と話の続きを促すが、中宮が黙っているのを不思議に思い顔を上げる。


「あっ、とうまっち。」


「ど、どうも〜」


3人の間に沈黙の時間が流れる。誰一人も喋らず、ただ外から運動部の声が聞こえる。


「え?ここ、図書室?」


そうツッコみながら、河上は一人で笑う。上手いようで上手くないような微妙なツッコみで、反応に困る。


「え?ここ、職員室?」


ここまで一人でツッコみ笑っているのを見ていると、心配になる。終始、中宮はどこを見ているのか、ボーッとしている。この状況をどうするべきなのか、何が正解なのか、冬真には難題だった。


「あはは...」


とりあえず、下手くそな笑顔を作りながら椅子に腰をおろす。


「そういや〜、とうまっち。描いてきたよ〜」


河上は少し笑いながらも、リュックからファイルを取り出し、A4の紙に昨日の絵が色付けされていた。


「お〜お!すげぇ〜!!」


プロの絵師が描いたと言われても、納得してしまうほどの画力だった。正面図だけでなく、右斜め上からの視点だったり、下から見下ろす視点、指先までしっかりと描かれていた。こんなに早くできるとは思ってもいなかった。


「えへへ〜。そう?」


「美術部ってやっぱり、すげ〜な...」


A4の紙を眺めながらそう言うと、河上が笑いながら言った。


「奈々美は陸上部だよ!」


「へ?」


「私も、この絵を見た時は本当に陸上部なのか疑ったよ。」


冬真はてっきり、これだけ上手い絵を描けるということは美術部だと勝手に思っていた。確かに、河上は短髪で初対面では陸上部などの運動部系に見えるが、この絵を見せられると、勘違いしてしまう。


「ってことは...この絵って...」


「うん、趣味で描いてるだけだよ〜。」


(才能の塊じゃねーか!!)


「しゅ...趣味ね...」


趣味の領域でこれだけの画力があれば、本気になるとどれだけ化けてしまうのか、と想像するだけで鳥肌が立つ。


「えーと、描いてくれてありがとう。本当に嬉しいよ!」


「ななちゃん、ありがと!」


「えへへ」と河上は頬を赤くしながら、照れくさそうに頭をかいた。




河上は陸上部があるためA4の紙をファイルに挟み、部室を後にした。何通りかの表紙を描くらしいため、また近々部室を訪れるのこと。文芸部でもない、河上に冬真は頭が上がらない。


「この短編って売れないのかな?」


突然、中宮が冬真と執筆している短編を眺めながら言った。


「う〜ん...顧問の先生に聞いてみないとわからないね...」


「売るとしたら、いくらだと思う?」


正直に言って、高校生が書いた短編作品など売れないと冬真は思う。だが、ここ冬真が通う高校は文化祭で有名な部分があり、小さい子供からお年寄りの方まで幅広い年代の方々が訪れる。そうなると、売るとしたら誰でも買うことができる値段設定にしないといけない。


「理想は100円のワンコインで売ると、買ってくれると思うけど...100円じゃ印刷とかいろいろで赤字になると思う。だから...500円がマックスだと思う。」


中宮は難しそうな顔でゆっくりと頷いた。


「あー、ごめん。なんか、本気になっちゃった...」


「ううん、嬉しいよ!綾人くんが本気で考えるの。」


「そ、そうか...」


まだ短編もできていないため、とりあえず短編を作ってから考えることにした。一応、中宮が顧問の先生に話だけは通しておくとのこと。冬真も販売は頭の片隅に置いておいて、執筆に取り掛かった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




徐々に文化祭ウィークに近づいて、文化祭ウィークまで残り3日となった。今日、冬真のクラス、6組の担任の水瀬先生は体調不良により、水瀬先生が持つ授業は自習となった。しかし、副担任である原川信茂(はらかわのぶしげ)先生は特別にトランプゲームを開催してくれた。


本当は文化祭のことを進めようとしたが、学級委員長の赤坂大翔が優秀すぎて今、できることが何もなかった。そのため、トランプゲームになった。原川先生は黒板にグループを作っていくが、もちろん、冬真の周りは女子ばっかであり、男子一人だけになってしまう。


(クソ...廊下側の奴らが羨ましすぎる...)


軽く下唇を噛みながら、机を移動させ4人グループを作った。


「冬真君だよね?確か...」


「う、うん。そうだよ〜...」


冬真の前の席に座っていた女の子、小沢(こざわ)やよいが話しかけてきてくれた。入学始めは、素っ気なく塩対応だったが、最近ではプリントを渡す時、しっかりと手に渡してくれる。


「いや、ありがとね〜。みーちゃんと仲良くしてくれてるんでしょ?」


(みーちゃん?誰のことだ...?)


「えーと、みーちゃんって?」


「あーあ、ごめんごめん。美夏ちゃんのことだよ。」


「あ、美夏ちゃんのことか...」


しかし何故、いきなりそんなことを言ってくるのかわからなかった。冬真は小沢と中宮のどんな関係すら知らない。


「時間あったら、みーちゃんのこと聞かせてね。」


小沢は冬真にそう言うと、各グループに配られたトランプを手に取り、シャッフルして配ってくれた。


(なんか、すごく美夏ちゃんのこと心配そうにしてたなぁ...)


小沢と話した時の表情が気になりつつも、トランプゲームを始めた。

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