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第二十三話 文化祭準備③

(いや、なんで俺!?美夏ちゃんに頼めばいいじゃんか!)


挙動のおかしい冬真を横で見ていた中宮が心配そうに言う。


「だ、大丈夫?」


「うぇえ?あ、う、うん。だ、大丈夫だよ。」


「ほんと?すごい焦っていr」


「大丈夫だから!」


ポケットにスマホを突っ込み、部室から出る準備をする。中宮は冬真のことを気にしつつも、机の上にあるものを片付けた。


「鍵は俺が返しておくよ。」


「い...一緒に帰るんだから、別に...」


(ファ!?)


「そ、そっか〜...」


冬真はリュックを背負い、中宮が部室を出れるまで待つ。部室を出て施錠した後、二人で鍵を返し、学校を出た。校舎は赤く淡い金に染まっているように見え、夜になる時間が遅くなっているのを感じる。


「そういえばさぁ、綾人くんのクラス。文化祭は何するの?」


「あ〜、俺のクラスはお化け屋敷することになったよ。」


「へー、なんか定番だね。」


後ろで手を組みながら、背中を伸ばしながら言った。


「み、美夏ちゃんのクラスは?」


「私のクラスは逆メイド喫茶だよ。」


「あぇ〜、それも定番だね。」


「普通のメイドがやりたかったけどね。」


「なんで?」と尋ねる冬真に中宮は立ち止まって、


「綾人くんに見てもらいたかったからだよ。」


夕焼けに照らされているせいか、中宮の顔が赤くなっているように見えた。その後は互いに気まずくなり、駅まで一言も話さなかった。




『次は...〜駅〜駅でーす。』


三奈方先輩がいつも降りている駅名がアナウンスされると、冬真は読んでいた本をリュックにしまう。そして、三奈方先輩から送られてきた住所をマップで再確認する。


「え?次だっけ?」


中宮は不思議そうに言う。


「えーと、まぁ用事があって...」


「あやしい...」


目を細め、腕を組みながら冬真をガン見する。中宮の発言にギクっと冬真は反応する。


「べ、別にそんな、大した用事じゃないんだけどね...」


「ふーん...」


「いや、ほんとに...変な勘違いは...」


「変な勘違いって?」


そんな話をしていると、目的の駅に着いた。


「それじゃー、また明日。」


そう言って、そそくさと冬真は電車を降りる。中宮は何も言わず、手を振るだけで何か不満そうな顔をしていた。中宮のことを気にしつつも、改札を出る。


(えーと...みかんゼリーだっけ...)


駅の近くにある薬局に向かい、そこでスポーツドリンク、おでこに貼る冷却シート、みかんゼリーなど必要そうなものを購入した。購入後、ポケットからスマホを取り出し、マップアプリを起動させる。三奈方先輩から送られてきた住所をコピペして、ナビに従う。10〜15分程度歩くと、立派な一軒家に着いた。


(え、三奈方先輩って金持ちなの?)


何度も送られてきた住所と間違っていないかを確認した後、恐る恐るインターホンを鳴らした。数十秒待つと、いつもとは声が低い三奈方先輩がでた。


「ドア開けるし、勝手に入ってきて〜。」


「え、あ、はい。」


ドアの方から鍵が開く音がし、ドアを開けてゆっくりと中に入った。


「お邪魔しまーす...」


人の家に上がること自体、初めてであり緊張する。すると、三奈方先輩は階段から降りてきた。


「ほんとごめんね〜。気にせず、上がってね〜。」


「はい〜...」


靴を揃えて三奈方先輩がいる方へ向かった。その途端、三奈方先輩がふらつく。


「ちょっ!だ、大丈夫ですか!?」


「へーき。へーきだよ。」


そう言っても、階段でふらついて頭を打たれたりしたら大変であるため、冬真は三奈方先輩を抱える。


「え、え?と、冬真君?」


「部屋まで案内してくださいよ。」


三奈方先輩を抱えながら、冬真は部屋に向かった。三奈方先輩の部屋に入ると、女の子らしい壁紙にベットにはぬいぐるみがいくつか置かれていた。冬真はゆっくりと三奈方先輩をベット付近におろした。


「ごめんね。わざわざ。」


「病人は安静にしないと。」


「うん。」


冬真は小さい机にみかんゼリーとスポーツドリンク、おでこに貼る冷却シートを置いた。


「え...そんな買ってくれたの?」


「みかんゼリーじゃ、回復しないと思って。」


「申し訳ないな〜...」


その時、三奈方先輩のお腹がぐぅ〜っとなった。三奈方先輩は顔を赤くしながら必死にお腹を抑える。


「お腹空いてるんですか?」


「...」


「レンジだけ借りますね。」


「うん。」




「はい、どうぞ。」


ベット脇にある小さなテーブルにお粥を置く。冬真は三奈方先輩がベットから起き上がるのを、サポートする。


「ほんと、ごめんね。」


「いやいや、今の時代、レンチンでできますから。」


冬真が出したお粥はレンジで温めれば、できるという簡易的かつ、衛生的なお粥である。三奈方先輩はそれを食べようと、スプーンで(すく)うがその手が止まる。


(ま、まさか...お粥苦手だった...?)


「べ、別に無理して食べな...」


「...食べさせて。」


「え?」


「食べさせて。」


「今、自分で掬ってたじゃん!」


冬真がそう言っても、食べさせて の一点張り。冬真は小さなため息をしつつも、お粥を三奈方先輩の口に運ぶ。


「美味しいよ〜。」


「そ、それはよかったです...」


冬真は顔が赤くなったのを感じた。三奈方先輩はお粥を完食した後、自分の手でみかんゼリーを食べる。それを見て、冬真は大きなため息をついた。


「俺、帰りますけど、鍵って...」


「あ〜、うちオートロックだからいいよ。」


そう言って、三奈方先輩はベットに潜り込んだ。冬真はテーブルのものを片付けて出る準備をする。


「なんかあったら、また連絡してくださいね。」


「...」


「それじゃ、お大事に。」


「まって...手...握って...」


ドキッと心臓が大きく脈を打った。聞き間違いかと思ったが、三奈方先輩が手を出している。冬真は手汗を拭いて、そっと三奈方先輩の手を握る。数分もすると、三奈方先輩は眠った。


冬真は起こさないように三奈方先輩の部屋を出た後、玄関に向かう。行きし、三奈方先輩を抱えていたせいか、高そうな花瓶や絵画が飾られていた。当たらないように気をつけながら、三奈方先輩の家を後にした。


(てか、三奈方先輩の両親は何してんだ...娘が体調不良だと言うのに...)


駅まで歩きながら考えていると、ポケットにあるスマホが鳴る。開けてみると、AOM(メールアプリ)から通知がきていた。


美夏:ななちゃんが描いてくれたよ!


その文の下に、色が塗られていない絵が写真で送られてきた。


(え、仕事早すぎやろ...)


あまりの早さに驚きながら、返事をする。


綾人:めっちゃ良い!ありがとう!って伝えておいて〜


スマホをポケットにしまい、ゆっくりと駅を目指した。

最後までお読み頂きありがとうございます!!

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