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第二十一話 文化祭準備①

いつものように部室に行き、扉を開けると、三奈方先輩と中宮がいた。


「おつかレンタル〜。」


「...」


三奈方先輩の面白くない挨拶に冬真はどう返したら良いのかわからず、愛想笑いをした。できるだけ、笑顔で。


「なんか酷くない?」


「...うん。すまん。」


「一応、先輩なんだけど!」


「前にも聞きました。」


冬真は呆れた顔をしながら、定位置に腰を下ろした。


「美夏ちゃんも、お疲れ〜。」


「ひゃっえ!?」


中宮は驚いた顔で冬真を直視する。冬真は中宮の声に驚いて体が固まってしまう。


(え?俺なんか、やっちゃった...?)


中宮に驚かせるような事をしてしまったのかと、さっきまでの場面を思い返すが、心当たりがない。


「お、俺なんかしちゃった...?」


「え、あ、ごめん。何でもないよ。お疲れ。冬真君。」


顔を少し赤らめながら中宮は本を読み始めた。


(な、何でもないよって...何かしちゃたじゃん、俺。)


腕を組みながら考える冬真に対して、三奈方先輩はニヤニヤしながら冬真の目を見て言った。


「鈍感だね〜。」


冬真は思わず、三奈方先輩から目を逸らした。何度か、ニヤニヤしている三奈方先輩を見ているが、今見えたのは女性姿の三奈方先輩だった。


(俺...疲れてるのかもな...)


「って!何してんすか!」


『え?』


三奈方先輩と中宮は冬真の声に驚く。


「文化祭のことやらなくていいんですか!?」


「あ〜...」


三奈方先輩は呆れた顔で首を振る。


「わかってないな〜、冬真君。」


「え?」


「そんなの明日からやればいいじゃないか!」


ドヤ顔で言う三奈方先輩に同情するように中宮は拍手をした。


(あ〜...だめだこりゃ。)


「知りませんよ。後から泣かれても...」


冬真はリュックからスマホを取り出し、メモアプリを開いた。


(短編ってどんな感じで書けばいいんだ?)


とりあえず、冬真はある程度の内容を頭の中で考えてから、スマホに打ち込んでみる。しかし、すぐに打ち込む手が止まってしまう。それを見ていた中宮が冬真のスマホを覗き込む。


「うえっ!?」


スマホをすぐに引っ込めると、中宮は少し笑う。


「な、なに?」


「いや、冬真君。難しい顔してたから...どうしたんだろうな〜っと思って。」


「あ〜あ。えーと、短編書くのって難しいなぁ〜と思って...」


「じゃーさ...二人で作ろうよ。」


恥ずかしそうに言う中宮に冬真は背中に変な汗をかく。


「それは...いいの?」


「いいでしょ。ね?三奈方先輩!」


「うーん?いいんじゃない?」


本に気を取られているのか、適当な返事をする三奈方先輩に冬真は少し不安になる。なぜなら、後から喚かれるとめんどくさいからだ。


「だって!二人でつくろうよ。」


「うん。そうだね。」


そうして冬真と中宮は二人で短編物語をつくることにした。断る理由もないし、二人でつくるとなれば、作業効率は2倍になる。


「うーんと、ジャンルはどうする?」


中宮はリュックからルーズリーフとペンを取り出しながら言う。


「ジャンルかぁ...SFとか?」


「SF読んだことないんだよね〜。」


「そうなの?それじゃ〜...」


書きやすそうなジャンルを考えている最中に中宮が提案してきた。


「恋愛とかどう?」


「恋愛ねぇ...」


「いや?」


「いやいや!全然。恋愛でいいよ!」


(恋愛したことない俺が、恋愛の物語なんて書けるのか?)


不安と心配がありつつも、物語の構成を決めていった。中宮もつくるのは初挑戦であり、物語に大切な起承転結を意識しながら、考える。




「やっぱり、物語つくるのって難しいな。」


「そうだね。」


「のわりには、スラスラとつくってない?」


「そうかな?冬真君こそ、意見いっぱいくれるし...こんな感じの恋愛を求めてるの?」


ニヤニヤして尋ねる中宮に対して、冬真は胸がドキッとした。


「ち、違うよ...」


「え〜、ほんとぉ?」


顔を近づける中宮の唇に冬真の視線が誘導される。


「ちょっ、顔近いって...」


「意識してる?」


少しずつ顔との距離が近くなる。すると、三奈方先輩は立ち上がり「トイレ行ってくる〜」と言って部室から出て行った。


(いや!この状況にツッコめよ!!)


いつもならツッコむ三奈方先輩に対して、冬真は疑問に感じた。


「二人っきりだね...綾人くん。」


二人っきりになった途端、下の名前で呼んでくる中宮。冬真は頬を赤らめる。


「好きだよ。」


「えぇ?」


「っていうのを、取り入れてみたいんだけど...どうかな?」


「え?」


冬真は何が起こったのかわからなかった。


「え?」


中宮も冬真と同じような表情をして、首を傾げる。


「短編の話してたんだけど...」


「う、うん。だよねー。いいと思うよ!」


(び、ビビったぁぁぁーー!!!)


中宮はニコッと笑顔でルーズリーフにペンを走らせる。その間に三奈方先輩がトイレから戻ってくる。三奈方先輩は冬真の顔を伺うと、ニヤッと笑った。


(なんで...笑ったんだ...?)


冬真は変な汗をかきながら、今日の部活を終えた。

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