第二話 部活動
「はぁ〜。疲れた...」
冬真は大きなため息をついて、家に帰る。家に帰ったとしても、家事は全て自分でやらなければならない。冬真は高校生にして一人暮らしをしている。両親が死別したとかそういうのじゃない。単に一人で暮らすことが許されただけである。
冬真には兄弟などがいなく、一人っ子のせいか両親は冬真に対してとても甘い。冬真が欲しいと言えば、自分たちの食費などの生活費を削ってまで冬真にお金を作る。
そんな親バカな両親でも冬真はとても感謝はしているが、自分がもうずてにダメ人間の領域に足がつかっている時点でさらにダメ人間になってしまいそうで最後のわがままとして、自立することを決意したのだ。今は親のお金で生活しているが、利子をつけて返すつもりである。
(今日は入学式なのに散々驚かされたな...俺の高校生どうなっていくのやら...)
両親の名義で借りてくれているマンションに冬真はカードキーを使って中に入る。エレベーターを使って自分の部屋の階のボタンを押す。エレベーターがゆっくりと上がっていく。
『14階です』
機械音と同時に扉が開く。疲れているため、一歩一歩が重たい。
(なんで俺の両親は最上階の部屋を取るんだ...)
冬真の両親は「どうせ一人暮らしをするなら、眺めの良く日当たりの良い角部屋が良いだろう」と言って、最上階の角部屋を借りてくれた。できたばかりということもあり、マンション自体はとても綺麗である。
鍵を開けて、リビングにあるソファーに腰掛ける。両親に連絡を入れるためにスマホ取り出し、AOMを開く。両親と公式AOMしかメッセージのやり取りしかなく、また大きなため息をする。
「もうクラスAOMとかできているのかな...」
そんなことを考えていると、どこか胸の奥を締め付けられたように感じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
入学式の次の日、冬真の足は入学式の時の足より重く感じていた。初日から仲良くなっているクラスのことを思い出すと、昨日と同じように朝食を戻しそうになった。
初日から仲良くなることは悪いことではない。だが、冬真の考えでは少しずつ距離を縮め、仲良くなっていくのが普通なのではないかと思っている。
(まだ高校生活は始まったばかりだ。マイペースで生活していけばいい。)
冬真は何度も自分に言い聞かせた。言い聞かせているうちに、教室の前まで来ていた。ゆっくりと扉を開けて、自分の席に着く。筆箱などを出していると、
「冬真君だよね?」
いきなり誰かから話しかけられた。
(たしか...あー思い出した。出席番号一番の陽キャ君。ではなく、赤坂だ。)
「どうしたの?赤坂君。」
「大翔でいいよ。でね。今、クラスAOM作っているんだ。俺が招待するし、AOM交換しない?」
「そうなんだ。いいよ。」
冬真は大翔に自分のAOMのQRコードを見せた。
「よし。じゃー招待しとくね!ありがとう、綾人!」
大翔は笑いながら、また友達の方へ戻っていった。冬真は初めて両親と公式以外の連絡先を手に入れて少し嬉しかった。それに、誰かに下の名前で呼ばれたのも久しぶりだった。
『ピコン』
冬真のAOMにクラスAOMが追加される。そこで、冬真の目に入ってきたのは『1年6組(40)』という文字。
(確か俺のクラスは40...人...俺が最後...だったのか...)
スマホをリュックの中にしまって消えるようにトイレへ行った。
「今から配るプリントは部活の入部届です。入部希望者の人は学年、クラス、名前、入部希望の部。それに加えて、保護者さんからハンコを押してもらってきてから私に渡してください。」
水瀬先生がプリントをゆっくりと配りながら言う。前に座っている女の子が素っ気なく冬真に入部届と部活一覧表を渡す。
(部活かぁ...中学の時はやってなかったし、高校でも...いや、待てよ...)
冬真は中学生の時の放課後を振り返る。クラスの大半は部活に入っており、部活に入っている方が学校生活を充実しているように見えていた。
(部活に入るなら...運動系じゃなくて文化系の方だな...)
冬真は配られてた部活一覧表に目を通す。
(この中だと...文芸部かな。アニメ研究部とか漫画研究部はオタクぽっいし、美術部と吹奏楽部とか俺とは無縁。やっぱり...)
「冬真君!先生の話聞いてましたか?」
冬真は自分がどの部活に入るかの方に頭がいっていたため、先生の話を全く聞いていなかった。
「あっ、すみません。」
冬真は一言謝り、水瀬先生の方を向いた。
下校のチャイムが鳴り響き、水瀬先生は昨日と同じようにそそくさと教室から出ていった。普通なら俺もそそくさと下校するが、今日の放課後は部活体験がある。冬真は文芸部の様子を見ておきたく、文芸部の部室まで足を運ぶ。
(ここが文芸部の部室か...)
「し、失礼します。部活体験に来ま...した...?」
しっかりとノックして入室したが、中には誰もいなかった。部室の中は真ん中に机と椅子があり、その右側には本棚が二つ並んでいる。それに加えて、何に使うのかがよくわからないホワイトボードが左側に置いてある。
(あれ...ここじゃなかったのかな...いや、でも文芸部って貼り紙あったし...)
「とりあえず、部員の人がくるまで待っとくか...」
冬真は椅子に荷物を置いて、その隣の椅子に腰掛けた。ボーっと待っておくのも時間の無駄に感じ、今読んでいる恋愛小説を読んで待つことにした。しかし、10分ぐらい待っても来る気配がない。
疑問に感じた冬真は職員室に行こうと、立ち上がって扉を開けようとした時、
『あっ』
冬真がドアの取手を掴む前に扉が開き、冬真の前にはとても顔が整っている男性がいた。
「部活体験の子かな?」
「え?あ、そうです。」
「遅くなってごめんね。今から説明するよ。座って座って〜」
「わ、わかりました。」
冬真は言われた通り、元の椅子にぎこちなく座った。
(うん?声...綺麗なお姉さんボイスだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
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今日の17時頃に第三話投稿予定です!
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