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第十話 お遊び計画

「はぁ...」


冬真はどうにかして、部活動を休めないか悩んでいた。昨日あのあと、中宮にあんな恥ずかしい「愛してる」の動画を見られてしまい、どんな顔をして会えばいいのかがわからない。それに加えて、扉一枚挟んで聞かれている。つまり、生の声が聞かれたのだ。


こんな醜態(しゅうたい)を晒している高校生は、冬真綾人ただ一人だけだろう。三奈方先輩も三奈方先輩でなぜ、あれを笑いながら中宮に見せるのか。あれがもし、自分だと考えてたら、100%いや200%拒むだろう。初めは優しい先輩かと思っていた冬真だが、ただの性格クソな腐女子と言う認識に変わった。


(はぁ...考えるだけでも無駄か...)


冬真は部室の扉を開けた。すると、壁にもたれながら腕を組んで待っている三奈方先輩と椅子に座って苦笑いしている中宮がいた。なぜ、こんなに早く部室に行けるのかが不思議でたまらないが、それよりも壁にもたれて腕を組んでいる三奈方先輩の方が不思議だ。


「なにしてんすか?」


「やぁやぁ。僕は醜態晒しの冬真君を待っていたよ。とりあえず、座りたまえ。」


「いや、まじでシバきますよ?...てか、本当になにしてんすか?」


「そこは黙って座るの!てか、冬真君ならシバきかねないし!もぅ...」


冬真の腕を引っ張って無理矢理、中宮の隣に座らせられる。少し乱暴なところは怖いが、これはこれで面白い展開になりそうであるため暖かい目で見守る。なにやら、三奈方先輩はペンを持って長年使われていないだろうホワイトボートに文字を書いていく。


「文芸部...ゴールデン...ウィーク...遊ぼうの会...え?本当になにしてんすか?」


「ゴールデンウィークこの3人で遊ぼうって意味だよ!」


このやり取りが面白かったのが、苦笑いしていた中宮が体を震えながら笑いを堪えていた。それが少し嬉しくて、つい冬真は笑ってしまった。




「じゃー案出してください!」


(そこは人任せなんかい!)と心の中で突っ込んだが、3人で遊ぶのも悪くないと感じた冬真は真剣に考えた。


「水族館とか...?」


中宮が自信なさそうに案を出した。三奈方先輩は頷きながら、ホワイトボートに書いていく。冬真も慌てて考えるが、なんせ友達と遊んだことがなく、家族と遠出したことぐらいしかない。陰キャの冬真には至難の技である。冬真が考えているうちに中宮がいくつもの案を出していて、冬真が案を出す必要はないようだ。


「冬真君から意見ないの〜?」


「えぇ...」


ホワイトボートには、水族館、動物園、カラオケ、観光、映画、ご飯、聖地巡りが書かれており、ほぼ出尽くしている気がする。一つ案を出さなければと思い、絞りに絞り出した結果、


「図書館...」


「冬真君...友達と遊んだことある?」


笑いを堪える三奈方先輩は冬真の肩を軽く叩きながら慰める。実際、遊んだことがある記憶は小学生までであり、中学の時は一切なかった。


「それぐらいしかありませんよ!」


「まぁ、確かにね〜」


そう言って、三奈方先輩はペンを置いた。




話し合った結果、映画を見た後、少し休憩がてら喫茶店に入り、その次に水族館に行くことになった。今日の部活は 文芸部ゴールデンウィーク遊ぼうの会 で時間が潰れた。最終のチャイムが鳴り、三人で帰ることになった。


「いや〜、楽しみだね。一度やってみたかったんだ〜。部活仲間と遊ぶの。」


三奈方先輩は本当に嬉しいそうだった。冬真も内心、久しぶりに遊ぶためわくわくしている。中学時代は一切友達も出来ず、遊んだことがなかった。いつも家で本を読むか、ゲームをするかの二択だった。遊ぶ日まで体調管理を徹底しようと思った。




〜文芸部ゴールデンウィーク遊ぼうの会 当日〜


(楽しみすぎて集合時間より一時間早く着いてしまった...)


昨日の夜は楽しみすぎて寝れないのではないかと、心配していたが案外寝れてしまった。スマホを見ると、時刻は10時00分。集合は11時であるため、探索がてら集合場所を歩き回る。冬真はここの土地勘がないため、この機会に色々探索しておこうと思った。


かと言っても、周りには何もない。コンビニや塾、マンションがあるだけで、座って時間を潰せる環境はベンチぐらいしかない。しかし、ずっとベンチに座ったままもしんどいため、ぶらぶらしてみる。道路脇に小さなお地蔵さんがあったり、鳥の巣などが発見できた。


結局はすぐに集合場所に戻ってきてしまい、やることがなくなってしまった。大人しくベンチに座って待っておこうと思った時、


「あっ!冬真君〜!」


中宮が手を振っていた。一瞬、ドキッとしたが、手を振り返す。


「早いね。まだ集合まで40分もあるよ?」


「あはは。なんか、早く着いちゃって...なかっ...」


「うん?」


今更ながら、中宮のことを何と呼べばいいのかがわからなかった。よくよく、考えてみればまだ一度も名前を呼んだことがない。


「あのさ...名前なんて...呼べばいい?」


「え?普通にみ、美夏でいいよ。」


「そ、そうか。み、美夏ちゃんも早いじゃん...集合11時なのに...」


(下の名前で呼ぶのってなんか恥ずかしいな...てか、俺キモくないか?)


「う、うん。今日、楽しみで早く来ちゃった。」


「そうなのか。」


中宮は冬真が座っているベンチの隣にゆっくりと腰掛けた。周りからしたら、カップルなんて思われているのだろうか。そう考えると、恥ずかしくなり考えることをやめた。意味もなく、冬真はスマホを取り出し時間を確認する。この無言の時間を後、35分以上耐えるのはしんどい。


長く続く話題を考えていると、冬真と中宮は後ろから肩を軽く叩かれる。びっくりして振り返ってみると、知らない女性がニヤニヤしていた。でも、そのニヤけ顔はどこか見たことがあった。


「まさか...」


『み、三奈方先輩!?』


「ピンポ〜ン。この姿では初めましてかな?」

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