第一話 入学式
みんなは『陰キャ』と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
オタク気質な人?
コミュニケーション能力がない人?
社会性に乏しい人?
それぞれ思い浮かべる事はあるだろう。今挙げた例はただの偏見にすぎない。しかし、そんな陰キャでも青春を求める人はこの世に山ほどいる。
そう、その山ほどいるうちの一人が俺だ。
冬真は家の鍵を閉めて学校に向かう。今日は初登校。つまり、入学式なのだ。
家から最寄り駅まで歩いて、電車に乗る。10分ぐらい揺れながら目的の駅に着く。
降りると、自分と同じ制服を来た生徒がたくさん視界に入る。
(学校の行き方覚えてないけど、みんなについて行けばいいか...)
冬真はまだこの土地勘がないため、今自分がどこにいるのかさえ、わからない。
なぜなら、ここに引っ越して3日しか経っていないからだ。
何も考えず同じ制服の人についていくと、いつの間にか学校の校門についていた。
玄関前にある自分の名前とクラスを確認してから、階段を登り、自分のクラスの前まで着く。
(大丈夫だ...みんな、緊張している。一からやり直すんだ。)
ゆっくりとクラスの扉を開けた。
「えっ...」
冬真は思わず、声が出てしまった。
「昨日の動画見た?」
「面白かっよね〜」
「昨日、コンビニにいなかった?」
「え?まじ?どこ?」
「いや、あそこの駅下のやつ。」
「それ俺だわ。」
入学式当日、もういくつかのグループができていた。しかし、中には一人で過ごす人や読書をしている人、スマホを触っている人がいる。だが、そんな人が浮いて見えるほど、周りが仲良くなっている。
冬真は黒板に書いてある自分の名前を探して、自分の席に荷物置き、すぐトイレに向かった。
(もうすでに...青春始まりそうな奴いんだけど!!え?俺、あの中入れんの?いやいや!絶対に無理!てか、もう始まってるよね!?)
そんなことを考えていると、朝ごはんを戻しそうになった。しかし、もうすぐHRが始まる。冬真はゆっくりと自分のクラスに戻った。
自分たちの担任である先生らしき人が教室に入ってきて、入学式の説明を受けた後、全員廊下に並んで体育館に向かった。私立高校だけあって、体育館は広く、綺麗だった。一人一人名前が呼ばれた後、長い校長先生の話は終わったらすぐ、退場の指示が出される。それに従って、クラスに戻った。
みんなが自分の席に着くと同時に担任の先生が入ってきて、書類などを配っている。そんな配っている最中でも、周りはヒソヒソと話して交友関係を築いている。
「はい!みなさん、静かに。書類など全て配り終わりましたので、それじゃー自己紹介しましょう!」
(きた。強敵の第一イベント。嫌な思い出しかない自己紹介!ここでミスする事は絶対に許されない!!)
「先生から自己紹介しますね。このクラス担任の水瀬結衣です!みんな気軽に話しかけてねー!」
クラス担任の水瀬先生は明るく元気で、とても人気がありそうな先生である。
「じゃー、出席番号の1番の人から順に自己紹介してください。」
先生が指示した後、出席番号1番の人が立ってみんなの方を向く。
(自分は16番。前の人と同じようなことを言えばいい...ただ、それだけのことだ...)
「赤坂大翔です。出身中学は北第一中学校です。中学ではサッカーしてました!よろしくお願いします!」
出席番号1番の人はスラスラと自己紹介をし、陽キャを感じさせる。徐々に冬真の出席番号に近づくにつれ、冬真の鼓動は徐々に早くなる。
「......よろしくお願いします!」
冬真の前の席の子が自己紹介を終え、番がきた。
「えーと、冬真綾人です。出身の中学校は南附属第一中学校です。趣味は読書とかです。
(よし!いい感じだぞ!この調子で...)
よろしくお願いしましゅう。」
冷たくて乾いた拍手が冬馬に向かってされる。少しざわつく中、冬真は顔が熱くなるのを感じながら自分の席に座る。
(やってしまったぁぁぁぁぁぁ!!最後の最後で油断したし、なんだよ!しゅうって!数秒前に戻りたい...)
全員の自己紹介が終わると、次にくる第二イベントは席替えである。冬真はそこでも鼓動を早くさせていた。
「この箱から一枚だけ取ったら、黒板に書かれている番号と引いた番号を見て、移動してください。」
先生が指示を出した後、出席番号順に引くことになった。
(一番後ろ...一番後ろならどこでもいいから...頼む!)
冬真は心の中で祈りを捧げていた。冬真よりも出席番号が早い人は盛り上がったり、落ち込んでいる人がいた。
そして、前の人が引き終わった後、冬馬は恐る恐る箱の中に手を入れて紙を探る。
(とりあえず、一番前だけはなりたくない!せめて前から三列以上!!頼む!!)
冬真ゆっくりと紙を掴み、黒板の前で紙を開けた。
(いち...番...嫌な予感しかしないけど!!)
冬真は急いで自分が引き当てた番号を探す。
(え?一番後ろの窓側!?主人公席じゃねーか!!!よっしゃー!!)
冬真は心の中でおもいっきりガッツポーズし、気分良く席を移動させた。
(自己紹介は噛んじゃったけど、まぁ終わりよければすべてよし!だな!)
冬真は引き当てた席に腰を下ろして、皆んなが移動し終わるのを待った。
「この席は1年間同じなので、周りの人と仲良くしてください!少し男女の配置に偏りはあるけどね...」
先生が冬真の方を見て、気まずそうに言った。それに便乗してクラスの男子が
「ハーレムじゃねーか!」
「良かったなー!」
「ヒュー!」
と冬真を冷やかす。冬真はそれに対して冷や汗を出しながら、苦笑いした。
(どうして、こうなるんだ!!嫌な予感はこれのことだったのかよ!終わりよければすべてよし?まだ、終わっていなかったのかよ...)
〜遡ること5分前〜
冬真は誰が隣になるのかワクワクして待っていた。
(隣は...女の子か。前...も女の子...右前...も...え?なんか、俺の周り女の子多い?)
冬真は一番後ろの窓側の席。冬馬を軸にして円形状に女の子が座っている。
最終的に冬真は他の男子との距離がとてもある。もちろん、手は届くはずない。
(仕方ない...一年間耐えるしかない...)
冬真は嫌な顔しないように、頑張って平常心を保った。
平常心を保つことに夢中になっていたせいか、気がつけば終了のチャイムが鳴っていた。
「それでは、明日も元気よく学校に来てください!さようなら〜」
水瀬先生はそう言ってそそくさと教室を出ていった。
冬真はこれからここの席で一年間過ごしていくのに自信がない。
また中学の頃と同じようになるのではないか、と心配と不安が募る。
"本当に青春を謳歌することができるのだろうか?"
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今日、15時に第二話投稿予定です!
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