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天気輪の柱

 その日も、中に入ると、男は完全な静のなかに置かれたのです。


 そこは、外の喧騒からは隔絶した場所。


 見回すと、無限の創世界がそこら中に並べられていて。

 男はその一つに入りこんで時間を忘れるのです。

 そう。そこでは時間を忘れられるのです。


「ここには星の数の世界があるんだ。ぼくはもうすっかり…。」

 けれど、星の数ほどある世界はまた、どれも彼にとっての永遠ではなく、彼を孤独にするのでした。

 天気輪の柱から銀河の空へ旅した今日の彼にとっては尚一層の孤独でした。


 …でも彼と創世界が完全には重なり得ないからこそ、永遠には重なり得ないからこそ、彼はまた、世界と重なろうとするのです。

 それは孤独を紛らわすためでもあり、孤独を受け入れるためでもありました。


 そこは、現実からの出発点であり、現実への着地点でもあったのです。

 彼はきっと、そうやって現実から離れながら、現実を知ったのでしょう。


 現実でも、やっぱり彼は孤独だけれど、でも誰ともぴったり重ならないからこそ、同じ方向を向けないからこそ、人を、この世界を好きになれる気がしたのでした。



 彼がその世界から抜け出すと、やっぱりそこは音のない静の空間でした。



 窓の外では、もう随分時間も経ったらしくて、すっかり夜になっていました。


 彼は本をしまうと、外へ出て行きました。


 都会の夜空には星なんてなくて、月だけが独り浮かんでいるのでした。

 でも、だからこそ、月は随分世界を明るく照らしている気がしました。


 彼は再び現実の喧騒の中に埋もれて行くのでした。


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