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金属探知

作者: 星雷はやと

 

「次の方、どうぞ」


 僕は空港で搭乗前の検査をしている。


「はい」


 艶やかな黒い髪を靡かせ、白いノースリーブワンピースを着た美女が金属探知機のゲートを潜った。


 ビーッ!


「何か金属の物を身に付けていらっしゃいますか?」

「いえ……特には……」


 金属探知機が反応した。彼女の貴重品はトレーの上にあり、貴金属は身に付けていない様に見える。だが、金属探知機が反応したのは確かである。


「そうですか……では……」

「あ! すっかり忘れていましたわ!」


 身体検査へと誘導しようとすると、美女は思い当たる節があったように声を明るくする。そしてトレーの上に手を翳すと、金と銀の指輪が金属音を立てながらトレーへと落ちた。その数はおおよそ、三十個ほどである。

 彼女の服装では袖口に仕込むことは出来ない。ではこの大量の指輪は何処から出てきたのだろう。美女の職業が手品師ならば合点もいく。


「もう一度、お願いします」

「はい」


 再度、彼女は確認の為に金属探知機を潜る。今度は何も鳴らなかった。如何やら、金属探知機が反応していたのは指輪だったようだ。


「こちら、貴重品をお返し致します」

「お手数をおかけしました」

「いえ、このままお進みください」


 問題がないようなので、美女にトレーを差し出す。彼女は先程と同じ様に、トレーに手を翳すと大量の指輪が消えた。やはり彼女は手品師のようである。


「私、既婚者が好みなの」


 手を振る彼女の手のひらには、小さな唇が弧を描いていた。


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