第6章 ちょっとしたイタズラ
とはいえ・・・。
私は考える。なんと言えばいいものやら。
あなたの事が嫌いです。
違う、彼が嫌いなのとは少し違う。
もう話しかけないで。
それも違う。きっと彼は落ち込むだろう。それは今までのやりとりでなんとなく想像がついた。
どこか抜けている所があって、でも繊細で。
そんな彼を傷つける。それはなんだか嫌だった。
じゃあどうすればいい? というか、私はどうしたい?
こうして彼を目の前にするまでは、あれを言ってやろう、これを言ってやろうとたくさん思いついたのに、言葉がうまくでてこない。
ぐるぐると考えこんでいた私。ふと気づく。彼がやさしい目をして私のことを見つめてくれていることに。私の考えがまとまるのを、ゆっくりと待ってくれている。
ああ、この人いい人なんだ。
そういえば、
「大事な荷物でしょ?ちゃんと持ちますよ。」
そう言って私の荷物を代わりにもってくれたりもした。
なんだ・・・やっぱりいい奴だ!
そう思ったら、急に彼を身近に感じる。
そして・・・
ちょっとしたイタズラを思いつく。
「前言撤回。デエトしましょう」
「ええ!?」
さすがにこの急展開には驚いたのか、彼が声をあげる。
「驚くことはないでしょう? あなたもこれがデエトだって言ってたじゃない」
「い、いや。あれは、その・・・」
なんだ。あれ冗談のつもりかなんかだったのか。この人、天然なのかジョーク好きなのかわからない。
おそらくどっちも入ってる。
「デエトってもさ、私帝都に来たばかりで、この街のことぜんぜんわからないのよ。だから案内してくれればいいよってくらいの話」
「なんだ・・・。そんなのデエトじゃないじゃないですか」
彼が拍子抜けしたような、がっかりしたような顔をする。
「年頃の二人、学業終わりに帝都に繰り出す。それがデエトなんでしょう? あなたのセリフよ」
「そうですけど・・・」
「というわけで、帝都散策ツアーに出発!!」
「うう・・・。デエトなのか、散策なのかはっきりして欲しい」
彼は困惑した声をだした。私は彼とは反対方向を向いてぷっと吹き出してしまう。
あんなに嫌だった帝都での生活。憂鬱でしかなかったソレに光が差し込んできたような気がした。
執筆:朝寝雲