第33章 新舞台
彼女と仲直りを果たした僕は、そのまま家の中へ招かれた。
「その様子じゃとうまく行ったようだの。」
「お陰様で。なんとお礼を言っていいのか。」
「まぁ、勘じゃったしな。」
「へ?」
「おじいちゃん、また直感で人つれてきたの!?」
「前例あるの!?」
なんだかとんでもない人だったが、彼女のおじいさんは優しい人だった。彼女は僕の横で楽しそうに微笑んでいる。子どもたちはおみやげのお菓子に舌鼓をうちながら、おじいさんの周りを囲んでいる。
「戻るのか、帝都へ。」
「そうですね・・・。」
「おにいちゃんもここにいたらいいのにー!」
「帝都みたいに華やかじゃないけどここも楽しーよー!」
子どもたちが僕の方に視線を向ける。それもいい。彼女と彼女が生まれ育ったこの村で生活するのも悪くない。
それでも僕は。
「帝都にやり残したことがあるんです。仲間を、舞台を、僕は捨てたままにしておけない。」
「活動写真を撮るのか?」
「復興の一環として。」
まだ帝都は荒れた状態だ。裏通りではきっとよろしくないことも起きている。それでも僕は帝都に戻ると決めていた。
「彼女はここに置いていきます。」
「なんでっ!」
横で聞いていた彼女が焦ったように声を上げる。
僕はそれに優しく微笑んだ。
「って言ったら君はついてくるって言うだろう?」
「当たり前じゃあないか。」
「おじいさん。」
「ちょっと待ってなさい。」
おじいさんはそう言うと奥の部屋へ少しの間こもっていた。やがて目当てのものを見つけたのかゴソゴソと出てきた。
「わしの名刺じゃ。困ったら渡すといい。」
その日のうちに帝都行きの汽車に乗り、僕と彼女は村をあとにした。
「ほんとについてきて良かったのかい?」
「野暮なこと聞くんじゃないさね。」
「ふふふ。」
「あはは。」
汽車は夜の中を進んでいく。
執筆:ネクタイ




