第28章 素人だとしても
ノートから視線を上げた僕は目に困惑の色を浮かべた。
「これ・・・は?」
担当は、ははっ! と一声笑い声を上げると、
「ひどいでしょう? まるで三文芝居だ。きょうびこんなやりとりを雑誌に載せた所で、読者の評判を回復できるなんて素人考えだ」
僕は担当の言葉に不可解さを増していく。
「だが素人も素人。このノートをフミハル社に持ち込んだのは誰だったと思います?」
僕は首を振ってわからないという意を示す。
「あなたの彼女ですよ。彼女なりに精一杯考え、あなたが再起を図れるよう、世間での評判を取り戻せるよう、自分が汚れ役を務めてでもとこのノートを書いてきたのですよ、そして」
担当は一瞬目を閉じ、ためをつくってから、
「このノート作成に関わっているのは彼女だけではない。彼女の友人、そして彼女の上司にあたる教授。そう、あなたには脅されていると伝えたあの教授も携わっているようです。ほかにもいろいろな人が知恵を絞ってこのノートの文面を考えている」
そう担当が言う。
僕は言葉を発することができない。
「まあ、できあがってきたものはしょせん素人の浅知恵で、読めたものではありませんがね。しかしその心意気は大いにくむべきところがあるのではないですか?」
僕は何も言えない。
「それだけの人があなたに期待しているということですよ。あなたはこのノートを見て何を感じますか? このノートをどうするかはあなたしだいだ。雑誌に掲載して欲しいというのなら一肌脱ぎましょう。あなたの将来性を見越しての投資でもある。また、あなたの胸のうちにしまいこみ、なんらかの行動の糧にするのもいいでしょう。あなたのお好きにしなさい」
そう言って担当は立ち上がり、
「お話は以上です。健闘を祈りますよ、詩人さん」
そう言って去っていく。
僕は無言でそのノートを見つめていた。
僕は・・・




