第19章 君のことが
「最後は、僕ですね。」
告白を終えた男たちに並んでいた僕は、1歩前に出る。
視線が集まる。彼女は微笑んだまま動かない。
「僕は、君との関係に飽きました。」
途端にざわつく会場。
彼女は。
「その続き言えるもんなら言ってみろよ。」
さっきまでの優しい聖母のような微笑みを崩し、眉間にシワを寄せている。
「それだけです。」
僕はそれだけ言うとマイクを置く素振りをして。
素早く彼女をあの日、出会った入学式の時のように横抱きにした。
「は、はぁ!?あなたまた何考えて!!」
「どうやら僕は優秀な君と違って頭が悪いみたいです!!」
「馬鹿だよ!ほんと、馬鹿だよ!!」
「これしか思いつかなかったから!!」
「今から君をさらいます!!」
それだけ言い捨てるとマイクをそこら辺に置いて、ドレス姿のままのお姫様を体育館から連れ出した。
体育館からは歓声が響いている。
それが少し小さく聞こえる空き教室。
彼女を下ろすと、振り向きざまに彼女は手を伸ばして。
僕に抱きついた。
「あんなにたくさんの殿方に言い寄られるとは思わなかった。自分がそんな風に見られてるとは思わなかった。怖かった。でもあなたが連れ出してくれたとき、安心したんだ。」
「僕も君があんなに人気だと思ってませんでした。前から美人だとは思っていたけど。」
「馬鹿じゃないの。」
少し離れた窓際に彼女が手を離して移動をする。
「今の関係に飽きたってどういうこと?友達だと勝手に思っていたわ。」
「そうですね。」
どう説明しようか、さっきまで格好つけていたのにいざとなると格好がつかない。不思議そうな彼女の視線に困っていると、彼女のほうがふふっと笑いだした。
「いつも大事なところで困るのはあなたらしいわね。『そういうところ大好きだわ。』」
「えっ。」
彼女のほうを振り向く。一瞬彼女が2人いるように見えた。年老いても美しい彼女。・・・だったような気がする。瞬きするとその幻影はまたたく間に消えた。
「何よそんなに驚いて。好きだって思ってるのあなただけじゃ・・・。」
「僕もです。君のことが好きなんです。」
「私達いつからか想い合っていたのね。」
落ち着いたいつもどおりのトーン。
僕は彼女の方に歩み寄ると、そのまま口づけを落とした。
彼女はそれを拒まない。何度も何度も重ねていくうちに、理性のほうが崩壊しそうなので彼女から離れる。
「ちゃんと言葉にしなきゃな。」
「何を?」
「君が好きです。僕とお付き合いしてください。」
二人きりの教室。
彼女はその返事を、そっと、僕の耳に密かに教えてくれた。
執筆:ネクタイ




