Chapter 01:「貧困と騒乱のゆりかごで…」
登場人物
「エクセリュス」(16歳)
主人公。女性。本名を「エリス・エクセリュス・リウスライア」というが、その本籍は当人も長らく知らぬままであった。(後に、過去に父親が多数の女性と関係を持っていたという事実を知り、それが名前の由来とされるが詳細は不明。)
基本的には「エクス」または「エリス」と呼ばれる。
世界一の貧困国たるイクセリドにて、生まれながらに貧しさと共に生き、愛情に飢えて育ってきた少女。常に自らより幸せな人間を恨み、時にそれは、何らかの形で具現化される。幼い頃に両親は離婚し、母親に引き取られたが、日々の生活さえも苦しく、笑顔を見せない母親と共に暮らしてきたため、心は非常に荒んでいる。
学校ではいつもいじめや暴力を受けてきたが、「受けた傷は必ず返す」という信念があり、己を苦しめた相手が誰であっても反撃するため、問題児と解釈される事例も多々ある。
生きるためなら罪も裏切りも厭わない残忍さも持っているが、一方で心を許せる相手には、どこまでも同情的になれる一面もある。
「翡翠の瞳」(10歳)
本名は当初は不明。エクセリュスがとある場所で偶然出会った少女で、その時は名前を聞きそびれたため、(翡翠のような)瞳の色であったことから、当時は「翡翠」と呼んでいた。
彼女は内乱のさなかに生まれた赤子であった頃、実の親に捨てられてしまう。あと一歩で命尽きるという所で、彼女を引き取ることになった「イリュン・ラリュス」という女性が、事実上の母親となり、同時に、自らの率いる”Unsung Dazzler”(讃えられぬ輝き)という、反政府革命連合の一員として相応しい人物になるよう教育してきた。
エクセリュスとは対照的に、温厚でやさしさに満ちた性格だが、国とその人々の幸せを奪った暴政とその主君らに強い敵意を抱いており、いずれ自分も正義と未来のために戦う時が来ると覚悟を決めていた。
しかし”Unsung Dazzler”はすでに政府軍の標的とされており、そのリーダーであるラリュスはもちろん、翡翠もまた、国民運動を実質「幇助」しているため、身柄を確保される危険と隣り合わせに生きている。
「メグ・レアスフィード」(17歳)
とある街でエクセリュスと出会った少女。もともとは地下アイドル「Purple Snow」(紫の雪)の一員であったが、グループの秩序腐敗による対立などにより、メンバーを脱退。以後、エクセリュスと似た、貧困の生活に落ちたが、それゆえに、二人は強い心で結ばれた。
知性があり、国情からその社会の裏側などに詳しいが、少々頑固で、融通がきかない一面も時折垣間見える。しかし親友と慕った相手には何を捧げることも惜しまない性格で、エクセリュスが雑草を食べてでも生きようとする姿と魂に惚れ、共にガンを握ることになる。
「イリュン・ラリュス」(31歳)
かつてイクセリド国が「アイガライヴァ連邦国家」と呼ばれていた時代に、政府高官の夫と結ばれたものの、夫は後に来る内乱の中で、国家に対して異議を唱えたため処刑される。
一時は自らも命を絶つ寸前まで追い詰められたが、そんな時に町の片隅に捨てられていた翡翠を拾う。そして彼女を育て、共に生きることを誓い、正義を語った夫に無念を与えた現政権の打倒に熱意を燃やし、同じ意志を持つ者が集まった反政府革命連合”Unsung Dazzler”を結成。これまでに民衆と共に大きな声を上げ、暴政の終焉と国民の幸福を訴え続ける活動を繰り返してきたが、政府軍は彼女を快く思うはずもなく、現在は追われる身となっているため、人目につかぬ場所でひっそりと暮らし、反撃の好機をうかがっている。
「ゲルツ・グロウバ」(59歳)
現イクセリド国の大統領であり、アイガライヴァ連邦国家時代より国情の裏で暗躍してきた、いわば「カゲの王」たる存在。
4年前にイクセリドを襲った謎の伝染病の阻止に立ち上がり、強硬な方策ながらもそれを成功に導き、一時は多くの国民の支持を集め、結果的に旧政権を退陣へと追い遣ったが、その時から「力による国家の絶対平定」を唱え、重税や悪法の数々でたちまちイクセリドを不幸と貧困の大国へと豹変させた。
自らの願望や理想を叶えるためには手段を択ばないタイプであり、伝染病から多くの命を救いながら、それを己の暴政の結果として抹殺している…と叫ばれている。
しかし、グロウバ政権を支持する人間は彼から強い恩恵を受けているため、政治の表舞台から抹消することができず、内紛も貧困も尽きることのない日々が続いている。
Chapter 01:「貧困と騒乱のゆりかごで…」
これは、とある貧しい国と家庭に生きる、ひとりの少女の物語…。
「エリス・エクセリュス・リウスライア」こと「エリス」は、幼い頃から薄汚い服を着て、食べるものもろくに食べず、常に腹を空かしていた。周りの人間は事ある度にそれをからかい、罵るが、エリスもやがて、反抗意識が芽生えるようになり、学校生活では喧嘩が絶えなかった。
エリスは基本的に、大人を信用していなかった。
大人は勝手な理屈と理想ばかりを掲げて、自分の苦痛を理解しようとしない。時には被害者たるエリスが、何らかの理不尽な言葉や処遇を受けるのだから、なおさらだった。
エリスが13歳の頃…
クラスメイトの男子が、あくまでも「いたずら」のつもりで、彼女の胸を触ったことがあった。
当然、怒りと悲しみが同時に湧いたが、この時の男子の言葉に、色々と人生の行き先を捻じ曲げられた。
「わぁー!エリスって、こう見えて胸は出てるぅ…!」
「てっ…テメェ…!!ふざけん…!!」
エリスが叫ぶが早いか、男子は指を二本立てて…
「な、なぁ頼むよ…。”コレ”で、一晩俺と付き合ってくれよ…。エリスお前、お金欲しいだろ…?だったら、俺、お金あげるから、…た、た、頼むよ…!他の女子じゃ、こんなこと絶対にOKしてくんねぇし…」
「何を言ってんの…!!アタシだってそんなこと…!!」
…と息巻いてみたが、現実に見える「お金」は、今日明日を生きるために必要であるに決まっている。当然ながら、貧困のどん底にある家庭である我が家では、教育などにかかる最低限のお金以外、つまり“小遣い”は自分で稼ぐことが暗黙の了解だった。
とはいえ、まだ中等部生徒のエリスが働ける場所はなく、誰かの仕事を軽く手伝ったり、拾った小銭を貯めておいたり等、欲しいものが無数に脳を誘惑してくる中で、それはそれで苦痛として抱いていた。
まだエリスの考えも幼いもので、「体を触らせるだけなら、特に減るものもないし…」と、黙って男子の誘いに対し、首をタテに振った。
そして約束していた時間に、彼の家を訪ねた。その家は決して富裕な様子があるとは言えない、あちこちボロボロの粗末な建物で、エリスの貧乏を笑う資格などない…というのが本音だった。
男子がこっそとエリスを手招き、自室へと案内した。異性の部屋に入ることはなかったエリスにとって、男子(ただし本気で好きな相手ではない)と二人きりの時間を過ごすというのは、思春期真っ只中の自分には、あまりにも大きな緊張を伴うものであった。
「んあーーー!!も、もう我慢できねぇ…!!エリス!!」
「わっ…いやぁっ…!!」
咄嗟に彼の手がエリスの胸を掴む。
男子は興奮のあまり声が出ない。
無音の部屋の中に聞こえるのは、二人の少し荒い息遣いだけであった。
気が付けばジャージやトレパンを脱がされ、最後には一糸纏わぬ姿となっていたエリス。しかし、この時エリスは不思議な感情を抱いた。
さっきまでは嫌がっていた自分が、快感を求めて男子に抱き着いてしまっている…。
「こ、これって、どうして…なの…??」
男子はエリスを好きなだけ弄んだ。それは、どれだけの時間に及んだだろうか…。
気が付けば夜も遅い、月明かりが眩しい頃になっていた。
「エ…エリス…ありがとう…。ホラ、約束の金だ。受け取れよ…」
エリスはこの時、心の幼さゆえに、「快楽を得て、金銭も得られる最高の仕事だ」と思ってしまった。
「あ、ありがとう…。また、しようね…。」
その一言は、彼女の本心ではなかったのかもしれないが、思わず、口を突いて出た。
…それから数日後…。
数名の男子が、エリスに金をチラつかせ、ベッドで過ごす「交渉」を行うようになった。恐らく先日の男子が口外してしまったのだろう。そして、思春期の男子が、いくらかのお金を差し出せば女子と行為に及べる…と知ったなら、そんな話を見逃すはずもないのだろう。
ある男子は指3本、またある男子は指5本…と、次々とエリスと「行為」したがる彼らの態度はエスカレートしていった。
当然、1日のうちに相手できる人数には限りがあるため、やがては「安い取引」を断るようになったら、男子の中には、「ベッドの前に食事に誘ってやるよ!」とか「欲しいグッズを買ってやるからよ…!」と、いわゆる「オプション」的なものを掲げる者が現れ始めた。
そしてその時エリスは、生まれて初めて食べる高級な(…と言ってもエリスにとってはそう思えるだけ)食材、女の子なら欲しくて当然なアクセサリー等、それまでの貧困生活を笑い飛ばせるかのような待遇を受けた。
勿論、男子らの目的は性交渉ひとつであり、エリスと本気で恋愛するつもりは基本的に皆無だった。まだ13歳の彼女にとって、体を使う金稼ぎは、楽に富を得る手段としか認識できず、同い年の者のみならず、上級生からも時折誘いを受けるようになった。
そもそものエリスのような人間は立ち入ることすらできないような店で、味わったことのない食べ物を口にして、お土産にイヤリングやネックレス等を貰った。
性の交渉も時には気の進まない相手と行う場合もあったが、お金のため、そして、貧乏だった毎日から抜け出したいという一心で、文句を言わずに応じていた。
…なお、エリスがしていたことは、とある島国では「パパ活」あるいは「援助交際」と呼ぶものだという。
多少の男子の気持ち悪さを我慢すれば、欲しいものは選り取り見取り。
友達だの恋仲だのを無視すれば、後は自分の儲けになる。
これは簡単にやめられるものじゃない…。
エリスは、そんな不純な交流に溺れる一方であった。
だが、エリスがこうした異性交遊を繰り返しているという情報が、教師陣の耳に入った。
エリスは当初それを否定し、卒業するまで隠し通して有耶無耶にしようと画策していた。問題の内容が内容だけに大人も、深く追求や調査することができず、特に対策も打てないまま、エリスは14歳の誕生日を迎えた。
…その日のことだった。
「うわ…っ…!!お、おなか…いたい…っ!!な、なによこれ…!?」
突然、エリスは謎の腹痛に襲われた。
その尋常ではない激痛を母親に隠し通すこともできず、母に連れられ、産婦人科を受診した。
その結果、エリスは「性病」に罹っていたことが判明した。
真っ先にエリスは、妊娠したことを心配したが、幸か不幸か、それは確認されなかった。
だが、性病はかなり進行しており、このままではエリスは命を落とすとまで医者に言われた。
「今のうちであれば、手術をするなどして助かる可能性はあります。…ただし、手術は大掛かりなものとなりますので、入院などの費用も大きなものになりますが…」
すると、エリスの母親はこう言った。
「お願いします!どうかエリスを助けてあげてください…!!」
それまで仏頂面を絵に描いたような母親のイメージからは、信じられない一言が飛び出して、エリスは驚いた。
自分なんて死んでしまっても、母は涙ひとつ流さないだろう…と思っていただけに…。
そう。エリスの母は、たった一人の娘である自分を、未来へ導く義務があると、強い信念のもと育てていたのだ。
母の言葉に涙が止まらないエリス。早速、手術へと取り掛かられた。
誰と性行為をしたのか?…などを聞かれたが、これまでに何人もの男子と性交渉を繰り返してきたため、誰から性病を伝染されたか、答えようのない質問だった。
性交渉の相手が明確にわかるなら、その者に一定の責任を問えるだろうが、これは「自分の体を売り物にしていたエリス自身の責任」に他ならないものだった。
…かくして、危機的な状況ながらも、手術は成功した。
目を覚ますと、そこにはエリスの母が、顔を歪めながら自分を見つめていた。
「エリス…!大丈夫かい…!?」
「お、お母さん…」
二人は、ひとまず命の危機を脱出できたことに安堵して抱き合った。
しかし、エリスがふと、病室のテーブルの上を見ると、そこには母親の預金通帳があった。
窓からの風で捲れたページの最後の方には、治療費として(日本円で)数十万円をおろしたことが記されており、預金の残高は、わずか三桁しかなかった。
その後エリスは病後の回復を待って、一連の援助交際の事実と金銭のやり取りについて母親や教師らから事細かに真実を聞き出され、最終的に彼女は、学校の風紀や規律を著しく乱したとして、「30日間の停学処分」を受けた。
イクセリド国においても、中等部までは義務教育なので、仮にそういった処分や欠席があっても、時が来れば卒業はできるが、その後の進路は絶望の二文字に苛まれるのみとなる。
また、学力もかなり低いエリスには、どう頑張っても普通に合格できる高等部(高校)が存在せず、一時期は高等部へ進学せず、アルバイトを転々とする生き方を提唱したが、彼女の母は、彼女の将来を案じて、高等部だけは卒業させたい…と、必死に入学可能な学校を探した。
いくつか候補となる学校は見つかったが、私設高等部ということで学費は高く、ただでさえ爪に火を点す暮らしをしているエリスの生活は、ますます劣悪なものとなることは確実であった。
「そんな思いをしてまで学校に行って何になる…!!」と、母に噛みついてみたエリスだったが、この命を救ってくれたのも、この未来を案じてくれているのも本当なので、流されるままに高等部進学を決めた。
何人もの男子と金銭のやり取りをしつつ性交渉していた…という事実に、母は色々な意味で強いショックを覚えたらしい。
娘がそうまでしてお金やモノに飢えていたこと、軽々と自分の体でカネを稼いだこと、そして、そうした行為に抵抗も恥じらいもなくなってしまっていたこと…。
当初はエリスを勘当するつもりであったが、貧困の原因を作ったことや、そんな行動に走らせたのもある意味、母としての愛情が欠如していたため…として、二度と同じようなことはしないとエリスに約束させ、その後は再び貧乏な暮らしに逆戻りとなった。
なお、男子からもらったお金は性病の治療費に消え、アクセサリーなどもまた、日々の暮らしのためにやむを得ずそのほとんどを売り払った。
イクセリド国には貧困家庭に対し、生活援助制度(生活保護)が存在するが、それはエリスが高等部を卒業するまで。その後は直ちに独り立ちしなければならない。
母の気持ちに応えて、エリスは「聖リクレアーナ高等教育学校」への進学を決めた。
春を迎え、エリスは中等部を卒業した。まだ肌寒い風の吹く4月、高等部の入学式への参加を終えた彼女は、特に友達もいないし、何か目的があったわけでもないが、夕暮れ時の街へと足を運んでいた。
周りを見渡すと、手を繋いでいるカップルや、楽しそうに話をしている友達同士など、エリスの心を逆なでする存在がごまんと溢れかえっている…。
「もし手元に銃でもあったら、こんな奴ら片っ端から撃ち殺してしまうのに…」
…と、またも不穏な心を抱きそうになったエリスは、なるべく人に目線を向けぬようにして、トボトボと街を歩いていた。
そして気が付いたら、街はずれにあるライブハウスの前に立っていた。
街の中心の賑やかさはなく、どこか陰気臭いムードも感じられるそこで、エリスは、ライブハウスの中から聴こえてくる、アイドルの歌であろう音楽を少し聴いていた。
その時、エリスは会場の中から威勢のいいお兄さんに呼び止められた。
「よっ!そこのお姉さん!今日はうわさのアイドル”Purple Snow”のデビュー3周年記念公演だよ!今日に限って入場無料です!さぁ!さぁ!どうぞ中へお入りください!!」
ライブハウスだの、アイドルだの、そんな言葉とは無縁だったエリスだが、無料ならば…と、騒々しいホールへ足を踏み入れた。
「Purple Snowだって…?聞いたこともないな…。ってか、今は地下アイドルなんて腐るほどいるわけだし、アイドルなんて、名乗ったもの勝ちって気もするよなぁ…」
会場の観客は決して大人数というわけではなかったが、どの人も筋金入りのファンという感じで、歌に合わせて、ここぞとばかりに大声をあげたり、投げ銭をしたりする様子が見て取れた。
「これがいわゆる“キモヲタ”ってやつか…。まぁ、そのキモヲタがいるからこそ、アイドルも商売が成り立っているんだろうけどな…」
ステージにはヘソ出しのミニスカ姿で踊る、6人の女子の煌びやかな姿があった。
年齢はエリスと同じくらいか、やや年下という感じだろうか。中には明らかに幼い女の子もいる…。
知っているはずもない歌を呆然と聴いているエリス。だがそれでも、何かを感じたか、ダンスをするアイドル達に、少しだけ手を振ってみた。
すると、ひとりのアイドル少女が、明らかにエリスに目線を合わせ、手を振り返してきた。
「…えっ…!?」
「わ、私は間違っても、女子と恋に落ちるつもりはないからね…」
冗談半分でそう心で叫んだ。
アイドルもまた、きっと少しでもファンに自分を買ってもらおうと必死なのだろう。
「…というか、私がアイドル、しかも人としても未熟な女の子にお金を出せるわけなんてないのに…。」
一人でブツブツ言っているうちに、ライブはお開きとなった。
大歓声の中、アイドル達は緞帳の背後に消えたが、その後は観客の男達を相手に、グッズの即売会やサイン会、握手あり撮影あり…と、一見すると無秩序な空間になっていた。
初めてアイドルのライブを見たエリスは、状況にただ戸惑うばかりだったが、そんな彼女に、先ほど手を振ってきたひとりの女の子が近寄ってきた。
「うわーぁ、珍しいなぁ!このライブに女の子のお客さんが来てくれるなんてマジで珍しいよー!ありがとうー!」
「あ、あ、いや、あの、わ、私は…」
「私は“メグ”っていうの。このグループでは最年長ね。ねぇ、せっかくだから、楽屋裏でちょっとお話ししましょうよ?あ、大丈夫よ。私はこういう時、一番ヒマになるメンバーだから。あはははは…!!」
「メグ」と名乗る人物に連れられて、人の気配のない楽屋へ案内されたエリス。
初対面ながら、エリスの話を色々と聞いてくれる気さくな女子だった。
エリスはどうしても暗い過去しか話題にすることがなかったため、あえてそれを包み隠さず語った。
するとメグは、少し涙を浮かべながら話した。
「そうだったんだね…。エリス…。実は私もね…、このアイドルグループに入って、色々とあって…ね…。」
「って、あーもう!陰気くさーい!!ねぇ、せっかくだから外であれこれお話ししましょうよ!あ、ちょっと待ってね!いくら地下アイドルでも、服装くらいは変えておかないと…ね。」
メグは、メガネをかけ、アイドルの衣装を脱ぎ捨てて、エリスと同じような恰好になった。
そして、スタッフであろう男性に「おつかれさまー!」と一言投げかけると、そのままエリスの手を引いて、噴水のある公園へ走った。
そしてメグは語った。
「さっきの様子見たでしょ?確かにヲタク…あ、いや、ファンがつくとそれだけ儲かるのは自然の摂理なんだけど…」
「えっ…?儲かっちゃいけない理由でもあるの?メグ?」
「そうだね…。儲かっちゃいけない…ってよりは、儲ける方法に、異議あり!って感じかな…?」
エリスは、高等部卒業後の進路として、こうしたアイドルに転身することも考えている…と話すと、メグは途端に表情を険しくした。
「それだけは絶対におすすめしないわ…!」
「だって…」
「だって…って…?」
エリスは、メグの話を聞き、地下アイドルのリアルを知るのだった…。