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第2話 魚雷

毎日投稿大10回です。

まだ続きます。

 カッツェの船は小さな一人用の帆船だ。

 帆船というよりもヨットに近かった。

「今ちょうど試作中だったんだけど、魚雷を撃てるようになったんだ」

「魚雷!? みせてみせて!」

 コココが子どものように騒いだ。

 海へ出ると、外はすっかり暗くなっていた。

 月の光が海を照らしている。もうすぐ満月だった。

 

 カッツェは遠隔操作機のボタンを押し、近くに停めてある自分の船を呼び寄せた。

「船もコレで動かせるの!?」

 コココは驚いた。

「一応ね。まだまだ実験段階だけど」

 カッツェは言った。この間、失敗して沿岸の岩にぶつけて修理に一週間かかったのだ。

「一応コレで遠隔操作もできるようにしてあるけど、うまく動くかはまだ試してないんだ。やってみる?」

 カッツェが訊くと、コココは勢いよくヘッドバンキングした。

 

「じゃあ、照準はあの岩に合わせてあるから、ボタンを押してみて。追尾機能もついてるけど、微調整は横のレバーでもできるよ。まぁ、うまく起動するかも、そこまで威力がでるかもわからないけど」

 カッツェが手短に魚雷の説明をする。

「わかったわ! とにかくやってみる!」

 コココがボタンを押した。

 魚雷は凄まじい勢いで発射される。

 コココが操作するまでもなく、岩へとまっすぐ向かっていった。

 ドッカーン!

 大きな爆裂音が響いた。

 標的にした岩は粉々に崩れ、衝撃によって破片が波打ち際まで飛んできていた。

 想像の何倍もの威力に唖然とするコココ。

 カッツェは今の実験結果を見て、ぶつぶつと思案を巡らせていた。

「照準の機能は問題ないみたいだ。追尾機能に関してはまだわからないな。威力については……」

「カッツェ! これ、大丈夫なの? 思ったよりも……」


「おい! 一体なんの騒ぎだ!」

 音を聞きつけたのか村の方からガメルがやってきた。

 ガメルは二人と同い年で、コココと同じくらい泳ぎのうまいやつだった。

 乱暴者で、なにかというとコココとカッツェにつっかかってくるのだった。

「へへへ、やっぱりお前か、カッツェ! テメェ魚人のくせに泳げもしないってのに、変なガラクタばっか作りやがって……ほんとによ」

 ガメルがニタニタしながら言った。

 ガメルは、魚雷によって破壊された岩を見て興奮した様子になった。

「おいおい、ずいぶん楽しそうじゃねぇか。おい、俺にもちょっと貸せよ」

 ガメルがコココから無理やり遠隔操作機を奪う。

「まってよ、まだ調整中なんだ。たぶん次撃ったら……」

 ガメルがボタンを押した瞬間、遠隔操作機が熱を帯び、シュー、という悲鳴をあげ始めた。

 瞬間、ガメルのもつ遠隔操作機が爆発した。

「あぁ、言わんこっちゃない。これでまた作り直しだよ」

「なんじゃこりゃ! カッツェ! どうなってんだ! やっぱガラクタじゃねぇか!」

 勝手に使っておいてすごい言い分だった。

 この力強さが自分にもあれば父にがっかりされずに済むのに、と考えてしまいカッツェは悲しい気持ちになった。


「ったく! 俺を嵌めやがったのか! 覚えてやがれ! 今度のレースで痛い目みしてやるからな!」

 ガメルは捨て台詞を残して去っていった。

 今度のレースというのはグアランの儀式のことだった。

 グアラン族の風習で成人となった若者たちがレースをするのだ。

 そこでの順位はそのまま漁師としての能力と直結するとされていて、各個人の実力を示す絶好の機会だった。

 無論、泳ぐことすらできないカッツェにとってはあまり楽しくない行事だ。

 

「グアランの儀式までには泳げるようにならないと、参加することすらできないかも」

 カッツェは不安になった。


「いっそ、この船で出れたらいいのにね」

 コココが呟いた。


まだ続きます。

自分のペースが少しだけ掴めてきた気がします。

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