変な団体と遭遇しました
「おい!起きろ!」
知らない男の声が聞こえる。
「無理だと思うよ、蒼って寝起き悪いから」
美和の呑気な声が聞こえる。
耳元で大声を出され(うるさい)、体を揺さぶられ(酔う、酔います!揺らすな!)、段々意識が覚醒していく(最悪の朝だ)。
目を開けると風景は一変していた。地面はコンクリートが土へ、ビルや店は木々や苔、岩。
全くの違う風景に呆然とした。
他に確認出来る事は・・・荷物は盗られていない、後は・・・黒猫!
急いで起き上がり周りを見渡してみる。
にゃー
黒猫が膝の上に前足をのせながら鳴いた。
抱き上げて確認してみたけど、良かった怪我は無いみたいだ。
「おはよう、びっくりだよね」
呑気な美和は置いておいて。
「えーと、誰か状況わかる?」
駄目元で聞いてみる。
周りを見渡して嫌な事に気がついた。
此処は森か?山か?木々が生い茂る場所だけど、起こしてくれた黒髪、黒縁メガネの男性は、スーツ姿に革靴、そして営業向けのカチッとした鞄。
私はマシな靴だけど、他に自然の中に対処出来そうな姿の人がいない。
状況を知る人がいれば、もう少し歩き易い靴にしてるだろうし。
「この辺りには3人しか居ないようだ。誘拐なら見張りが居そうなものだけど…」
「んー、その割に手足自由だよね。もしかして、最近はやりの行方不明者になっちゃった?」
あれ?男性の方は地味に焦って居るようだけど、美和さん?落ち着いてません?肝が座っているって事かな。
「とりあえず、怪我が無いなら今の内に警察に助けてもらった方がいいか。道路見つけて暫く歩けば民家にたどり着けるだろう。」
流石大人だ、冷静な判断。美和と私はこくこくと頷き早速移動する事にした。
青年を先頭に美和も歩き始めた、私も二人に続こうと立ち上がった瞬間、ひゅっ と何かが飛んでくる気配がしたので、慌てて美和と青年の襟首掴んでのけぞらせた。
「うきゃあ!?」
「ごほっ…何し…!」
二人が文句を続けようと口を開いた瞬間
ビィィン
皆、音の元になる場所に視線がいく。
木に短剣が刺さっている。
「…」
避けなければ木の代わりにどちらが確実に怪我をしていた。
「短剣?日本なのに?斧や刀じゃなくて?」
「蒼、驚く所そこじゃない!」
美和から頭を叩かれた。痛い。
「おぉ、避けるの美味いじゃねぇか」
どう予想しても嫌な予感しかしないけど、スルーする訳にもいかず、後ろをキギギと無理やり見てみると、少し離れた草むらから5人の男が出てきた。
体格の良い、人相の悪そうな男が。
そこまではいい、そこまでは!
何故、斧や、剣を持ち胸当てや軽装ではあるけど鎧を付けている男もいる?その上猫耳、尻尾付けてる!?コスプレか?!?筋肉質のおっさんに似合わない!!
「有り金置いて行けば殺しはしねぇけどな」
「ホントかよ」
ゲラゲラ笑いながら、こちらを見ている。定番なセリフ。誘拐犯ではなく変な団体に遭遇してしまった。