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旧友の集まり2

街に戻り、ギルドに納品分を提出する為に立ち寄ると、隣接している鍛冶組合の人員が慌ただしくしていた。

既に避難済みの人達が落盤事件を報告していた。


魔族の襲撃。


幸い死者はいなかったが、安全を確認するまで一部のエリアを封鎖する動きにとなる。

発掘場が減るのは鍛冶師にとって受注範囲が制限されてしまう恐れがあるが、生死に関わる事なので不満を漏らす者は少なかった。


蒼達の様に地下へ落ちた人間は黒露樹が拾って街の門前へ転移済。一番困惑したのは門番かも知れない。

突然目の前に気を失った数人が現れて、身元確認に奮闘した姿が目に浮かぶ。お疲れ様です。


「組合の場所なんか知るわけないでしょう。地下に放っておいても私は何も困らないけれど、蒼は文句いうでしょう?」

「ありがとう。黒露樹(黒露樹とファイのせいなんですけど?)」

「何だ。随分丸くなったなぁ」

「うるさいわよ」


蒼は黒露樹達の後ろを黙って歩いていた。久しぶりに家族に会えた嬉しさより、ファイや黒露樹と異様に慣れ親しんだ姿に驚きの方が大きかったから。

姿は同じだけど、実は別人だという可能性もあるかも?じいちゃん程濃い人物を見間違えたりはしないだろうけど。

ぐるぐる考えている内に、裏路地を進んでいる事が気になった。黒露樹の説明では大人数で店に入ると悪目立ちするので、黒露樹の家に向かう事にしたそうだ。

裏路地・・・あまりいい雰囲気ではない。道に座り込んでいる人達の目つきは鋭く、一人では絶対通りたくないと思う。

こんな所に家が?と思ったが、家自体がここに有るわけでは無かった。


行き止まりの場所まで進むと、黒露樹は詠唱を唱えた。すると、言葉に反応して壁に青白い模様が浮かび上がり、扉が現れる。

扉を開き中に入ると一転して大理石で作られた壁や柱の空間が広がった。なんて便利な。

何処でも繋げられる訳では無く、一度その場所に行き術式を張らないと使用出来ないそうだ。ちょっと不便。


「何か綺麗な建物の中・・・しかも大きい」

「まぁ城だしな」

「え?城?なんでじいちゃんが知ったように言っているの?」

「来た事あるから」

「はぇ?」

「おい、黒露樹。あの酒はないのか?」

「有るわけないでしょ、って言うか出さないわよ。そこの部屋使っていいから、さっさと蒼に説明でも何でもして、その部屋の隅のうざいモノ持って帰ってよ」


案内された部屋は応接間の様に大きなテーブルを中央に六席の椅子が設けられていた。

部屋の角には花瓶が飾られている。そしてその一角に無理やり連れてこられて項垂れているマグと、つまらなそうにしているサリリュナがいる。


「説明と言ってもなぁ・・・とりあえず、座れ」

「う、うん」

「迎えに来たんだが、思ったより馴染んでしまっているから、ちょっと厳しい」

「!?」

「ばあさんが昔身体弱かったの覚えているか?あいつもこっちの世界に来たことがあってな、向こうに戻る事だけは出来たが中々体調が落ち着かなかった。生死を彷徨う事もあった。

蒼が今戻ると同じ様な状態になるだろう」

「・・・じいちゃんもこっちに来た事があるから詳しいの?」

「あ?俺は元々こっちの住人。ばあさんの願いであっちに移住しただけ」

「は?だけって・・・こっちの人?だから黒露樹達と知り合いなの?魔法使えたりするの?何で好きに行き来出来るの?何でもっと早く来てくれなかったの?」

「落ち着け」

「落ち着いてられないよ!訳わからないまま何とか頑張って来たよ!だけど!」


完全に八つ当たり。解っている、理不尽に甘えているだけ。

蒼にしてみれば運は良かった。一人で飛ばされていたら生き残るだけなら、出来たかもしれない。

だけど、友人の美和がいなければ笑っている余裕があったかは分からない。

蒼之助は蒼の頭ををわしゃわしゃと撫でながら言った。


「遅くなって悪かった。だけど、さすが俺の孫だ。よく頑張ったな」

「・・・・」

「まぁ、他の奴らよりちょっと魔力が多いから、行き来は出来るが・・・すまん。久しぶりに来たから観光してた」

「観光!?じいちゃんの・・・アホー!!!!」

「蒼之助、あんたいちいち一言多いのよ。言わなければ丸く話が収まるのに」

「収まるもんかよ。イライラモヤモヤ、とりあえず大声出してみれば、マシにはなるだろう」

「うぅ~・・・」

「悪かった。うまいもん食わせてやるから機嫌直せ」

「帰れないのに!食べ物で誤魔化されない!!」

「こっちの鍛冶の方が得体のしれない物作れるぞ」

「!!」

「蒼・・・あなたはそんな事で機嫌直すの?」


「他人に優しい蒼之助なんて気持ち悪い」


部屋の片隅で大人しくしていたマグが呟いた。黒露樹は呆れた顔をし、言われた蒼之助は怒る所かにやにやしている。


「俺なんてこき使われてばかりなのに!今日だって来たくなかったのに!」

「それは悪かった。だけど、マグにしか出来ない仕事だから」

「む?」

「マグが忙しいのは十分知っている。だが、お前にしか頼めない仕事なんだ」

「・・・・・・・なら、仕方ない」

「そうか、助かる。やっぱりマグは頼りになる。ちょっと黒露樹と話があるから席を外すな」

「蒼、少し此処で待っていてくれ。すぐ戻る」


黒露樹と蒼之助が部屋を出ていくのを眺めながら蒼は思った。蒼之助の口車に乗せられている気がする。と言うか、マグって人(魔人?)ちょろすぎる。

何時もは一番騒がしいはずのファイが嫌に静かだと思ったら、寝てた。あ、うん、相変わらず自由だね。


「おい、おまえ蒼之助の孫なのか?」

「そうですけど・・・」

「だから肝が据わっているのか」

「?」

「お前も魔族なのだろう?普通の人間なら魔王城にいて平気な訳ないしな」



******************************************



「蒼之助」という名前は、昔知り合った人間が、名前が無いと不便だと勝手に付けた名前。いつの間にか定着していたが、訂正するのも面倒なのでそのままにしている。

この世界で生きていた頃は火竜とファイと黒露樹の四人で、同じ場所に留まらず結構好き勝手に生きていた。他の奴らによく喧嘩を売られていたので、悪目立ちしていた事には自覚はある。

何年ぶりに会った火竜とファイは相変わらずだったが、黒露樹が自分から人間に関わっている事には驚いた。執務室に移動した黒露樹は慣れた手際で書類や指示をこなしている。


「随分面倒くさい事しているらしいな。人間に自分を倒す様に仕向けて、配下に下る国は結界で保護して」

「保護なんてしていないわ。利用しているだけよ」

「おまえの領土に半端な奴は手を出さないだろうけど厳重な結界までいるか?」

「結界を簡単に壊しといて、あなたが言う?」

「だから聞いている。中見たら普通の街だったぞ。殺伐としているかと期待したんだが」

「はぁ・・・・別に隠す様な事じゃないけどね。ジョイアスの事は覚えている?」

「ん?・・・・・あぁ、無駄に好戦的な面倒くさい魔王か?そういや昔凍らせたままだったな」

「その封印がそろそろ解けるのよ。私程度倒せなかったら、また昔みたいに滅びかけるわよ」

「で、危機感与えていると?貧乏くじだな」

「人間を妻にした変人に言われたくないわ」


そりゃそうだ。魔王の職業に就いていた頃は、自分を倒しに来た勇者が今の妻になるとは思わなかった。

あいつの「元の世界に帰りたい」と言う願いを叶える為、奮闘していた頃が懐かしい。

奮闘と言っても理屈は簡単。急激に魔力枯渇が起きなければ良い。魔道具経由で魔力を補充しつつ徐々に「無い状態」に慣れれば良い。

「補充するもの」が確保出来れば。その点俺は魔力が多いから問題なかった。


「手伝ってはくれないのよね?何時迄こっちにいるつもり?」

「蒼を連れて帰れたら良かったんだが・・・・一旦家族に状況報告しに戻ってから又考えるか」

「?昔連れて帰ったじゃない。何が問題なのよ」

「蒼の親兄弟はそうでもなかったんだろうが、蒼自身は俺に近い」


「・・・そうね。血縁者と言われて納得する位には魔力が酷似しているわね」

「魔力量は大事だが。コントロール出来ないなら意味がない」

「自身の消滅だけで終わらないって事?」

「さぁ、憶測だがな。・・・ん?この予算見積もり間違っているぞ」

「もぅ!こっちいる間だけでも手伝ってよ!」

「いやいや、めんど・・・・・ポッと出の奴が仕切ったら連携荒れるだろ?」

「面倒くさいって言おうとしたわね」


昔よりも黒露樹もファイも強くはなっている。それでも、昔の第二の魔王ジョイアスよりは下だろう。

第三の魔王マグはジョイアスと同等の実力はあるが、性格が色々と問題があって内勤向き。

黒露樹も自分の実力を理解しているから『強い人材育成』を目的としているのだろう。


「配下に置いた人間達の国、もっと荒れていると思ったんだが」

「結界内に収めているだけで、人間の領地は管理報告以外は人間に任せているわ」

「人間の為にか?」

「管理するのが手間なだけよ」


蒼之助はわしわしと黒露樹の頭をなでる。黒露樹も別の意味で面倒な奴だ。根は良い奴なんだが。


「子供扱いは不愉快よ」


そう言いながら、頬を染め口元はによによ笑うのを堪えているのが丸解りなのが昔と変わらない。



******************************************



「黒露樹、私、街に戻る」


城の兵士に案内された蒼が執務室にやって来た。書類を片付けていた黒露樹は顔を上げると、蒼の魔力が揺らいでいる事に不審に思った。


「蒼之助は今軍師に会っているから、もう少し待って貰える?」

「いい、一人で戻れる。門開けて」

「蒼?」

「・・・・・・じいちゃん・・蒼之助が魔族って本当?」

「?!」



訓練所には軒並み倒された多数の兵士が転がっている。先程から、次々と兵士達が一人の男に立ち向かっていくが息一つ切れずに捌いていく。

直ぐ傍でボウシュリ国の王と指揮官がその様子を見ながら検討している。


「ふむ。やはり再構成が必要ですね」

「ふっふっふっ、俺ってまだ現役だったりするのか?」

「お前ら、じじい相手に何やってやがる。その調子だと、明日から訓練量増やすぞ!!!」

「「「・・・・!?!」」」


蒼之助は黒露樹に少し兵士の力量を見て欲しいと頼まれ、訓練所に足を運んでいた。

部外者が立ち入れば、早々に追い出される事を期待して引き受けたが、運悪く顔見知りが居た。


ボウシュリ国王 シュリ


座して指揮を執るのは向かず、先陣を切って戦場に赴き駆け巡る人物。人当たりが良く彼の周りには人が多い。

魔族の軍門に下った今も、それは変わらない。

魔族と人間の間には今も昔も争いが起き、種族間の溝は深い。それをうまく諫めるのは並みの事では出来ない。


「国王が呑気に見学とは、とうとう隠居生活か?」

「俺は現役だ。残念だったな。蒼之助こそ、しばらく見ないうちに老けたな」

「お二人とも、配下が居る前なのですからもう少し話し方を考えて下さい。威厳の欠片もありません。」

「・・・・・・・とりあえず」

「・・・・・・・そうだな」


蒼之助とシュリは笑顔でそれぞれ武器を構え始める。周りの兵士は止めても無駄だと理解しているので、邪魔にならない様壁際に避難し始めていた。

ただ一人、二人を止める様に近づく人物を除いて。


「じゃれている所悪いけれど、蒼之助」

「何だ?黒露樹も暴れるか?」

「これは黒露樹殿、一戦どうです?」

「蒼は帰ったわよ」

「は?」

「蒼・・殿とは誰だ?」

「蒼之助の孫。あの子に魔族って事話したの?」

「いや。言う必要ないだろ」

「はぁ・・・本人に聞いた話と、他人から聞いた話で受け取り方が変わるって知っている?」

「・・・・・・・マグかファイか・・・・」

「そ、蒼之助?ちょっと何処行くのよ?」

「あー蒼之助、出来るだけ建物は壊すなよ?仕方ない、通常訓練に戻ってくれ」


一気に不穏な気配を纏った蒼之助は城の中へ入って行った。半ば呆れながら二人は蒼之助を見送ると、訓練を指揮官に任せ、黒露樹とシュリは壁際に寄り部隊編成の話をし始めた。

黒露樹が施している結界は彼女より弱い者に対しては物理攻撃も魔法攻撃も完全防御効果があるが、強者に対しては期待出来ない。蒼之助の件で立証されてしまった。

蒼之助が無理やり連れてきたマグや、ファイを加わったと仮定しても現状は厳しいと予測される。


「期間的に厳しいのは解るけれど、何とかしなさい。生き残りたいなら」

「無茶を言うな。だが、何度聞いても信じられねぇな。厄災についても、黒露樹殿が人間の味方をしている事も」

「はっ、笑えない勘違いね。人間の味方をした覚えはないわ。ただ、魔族だけが生き残った所でこの世界に意味がないだけ」

「意味がない?」

「とにかく、思う所は多々あるでしょうけど、生き残る事だけを考えなさい。」

「解っている。不満を言う奴は・・・まぁ、何とかする」

「物分かり良すぎて気持ち悪いわね。あなた自身も魔族に友好的で、逆に人間側から反感持ちそうね」

「俺や古株連中は蒼之助を知っているから仕方ない。孫が来ていると聞いたら揃って会いに行きそうで面倒だな」


蒼之助は何処にいっても良くも悪くも周りに影響を与えて、今も色濃く残っている。その孫の存在に勝手に期待し、利用する人物が出るかもしれない。

黒露樹は少し気に留めて置こうと思う。それで潰される様ならそれまでの話なのだけれど。

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