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掘り出し物

ギルドの職員に聞いた発掘ポイントの1つ、北の荒野の端。鍛冶作業の核に使用できる素材が手に入る場所。街から少し離れた場所にある為、治安は悪い。特に誰かが管理している訳でなく、そのエリアへは入退場の許可は不要。悪く言えば、何かが起こっても自己責任。

その為、荷馬車や護衛を雇って訪れる方法を取る者が多いらしい。腕に自信がある者や、自分で移動手段を持っていれば、もう少し初期経費が抑えられるだろうけど。


運よくその方向に向かう荷馬車に乗せてもらい、数時間揺れ、ようやく到着。

話に聞いていた以上に辺り一面岩だらけ、ジリジリと直射日光が肌に刺さる。見える範囲では水場は見当たらず、草もぽつぽつと生えているだけ。地面に大きく穴が開いている場所があり、それを降りた下が発掘場所となっている。人工的に掘ったと思えない程深い。横の広さもかなり広い。前に見た大きな竜がすっぽり収まりそうな空間。

「穴の下は影になっているから少しは涼しいけど、帰りにこの坂を上るのはきつそう」

坂を下り切った後、後ろを振り返りぽつりとつぶやいていると、

「だったら、やめて帰りましょうよ。こんな所の何が楽しいのかしら」

黒露樹は顔をしかめながら言った。


「魔族も暑さに弱い?着物だし余計に暑いとか?」

「どうでも良いから、早く用事を終わらせなさいよ」

黒露樹は会話にならない程、不機嫌になってきた。ただ感情的に怒るわけでなく、静かに彼女の周りの温度が下がっている気がした。どうせなら氷も出してくれたらいいのに。


別について来なくても良かったのに、なんて言ったらもっと機嫌が悪くなりそうだから黙って作業を開始する。目的の素材、水晶の様に透明度が高い石を見つけ、周りには作業者がいない事を確認し、岩を削り始めた。この暑さ、少しのトラブルでも大きくなりそう。素材の取り合いで揉めるのは避けたい。


光が水晶に当たりより一層透明感が増す。無色透明が多い中、赤や緑の色が混じっている物もあり加工するのが、少し勿体無い気もする。でも、加工すればもっと良いものが出来るかも?にやにやしながら上機嫌で採掘を満喫した。


黒露樹は蒼の様子に呆れながら見ていた。

生暖かい視線に気が付き、手早く作業を終え、黒露樹の不機嫌が拡大していない事を祈って近寄ると、会いたくない人物も目前にいた。

「ファイ?」

しつこい、と言うか暇なのか?がくりと項垂れながら近寄ると、予想外に黒露樹と会話している。

あれ?知り合い?もしかして黒露樹に会いに来たとか?


淡い期待は一瞬で打ち砕かれた。物凄く空気が険悪に感じられたから。お互い顔は笑っていても、臨戦態勢に入っている。物騒な事は周りに人がいる所では止めて欲しい。


「生きていたの?邪魔だから灰になればいいのに」

ピリピリした空気を漂わせる黒露樹とは違い、ファイは相変わらずのらりくらりとした反応を返している。

「黒露樹さんも相変わらず、人間保護なんて下らない事してるの?変人は変人のままだね」

「変人筆頭に言われるのは心外よ。保護ではないわ、育成。貴方の頭は飾り?言葉の意味も理解出来ないゴミね」

「毒舌は健在なんですね。だから、皆に嫌われて、火竜くらいしか相手してもらえないんですよ」

「安心しなさい。毒を向けるのは消したい者だけだから」


黒露樹は扇を右手に持ち、スッと上に掲げるとその先に直径50m程の黒い塊が空中に現れ、ぐにゃりと形を変え、無数の矢がファイに向かっていった。

ドドドッ

休みなく降り注ぎ砂埃が舞い上がる。

「黒露樹!流石に不味いって!他の人もいるんだよ!」

蒼は大声を張り上げるが、2人には届いていない。


騒ぎに驚いた周りの人達は逃げ惑っている。

砂埃の中がスパッと割れたかと思った瞬間、中から空気の刃が無数に黒露樹に向って飛び出してきた。

黒露樹はあしらう様に扇で刃を払い落とす。

「蒼の前に遊んでくれるの?」

にやにやしながら立っていたファイは無傷だった。

「二人共止めなよ!何でそう好戦的…え?」

ボコッと地面が割れ、崩れ始めた。

ファイの刃が地面を切り裂いていた、運が悪いのは、下が空洞だった事。

「・・・っ!」

逃げ遅れた人影が足元の穴に落ちていく。近くの人影に咄嗟に手を伸ばし掴んだが、重さに耐えられず2人共暗闇の中へ飲まれて行った。

「蒼?!」

黒露樹は攻撃を止めて穴の近くへ駆け寄った。穴の中を見ても暗闇が広がるだけで底は見えなかった。

「うっわ、残念な終わり方。折角面白い人間だったのに」

「蒼と知り合いなのでしょう?心配ではないの?」

「は?心配?何の為に?」

「そう」

黒露樹はふっと微笑んだ。次の瞬間、ガキンッと巨大な氷塊ができあがり、その中にはファイが収められていた。

何事も無かった様にくるりと向きを変え穴の暗闇に降りていった。


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