表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

懐かしい人影

ケーキを食べ終わった後も(あお)黒露樹(くろつゆぎ)の言い合いは続いたが、初めに我に返り、口論を止めたのは黒露樹(くろつゆぎ)の方だった。

両手で顔を覆い隠していたが、耳は真っ赤になっていた。

さっきまでの勢いが無くなった黒露樹(くろつゆぎ)(あお)は少し心配になったが、黒露樹(くろつゆぎ)は絞り出した声で言った。

「こんな子供みたいな姿、部下には見せられない」

「ぷっ・・・確かにお城の人達が知ったら驚きそうだな」

「煩いわね。大体どれだけ言い合うのよ。疲れたから帰るわ」

「そうね。お腹一杯だし、私達も帰ろうか」

「あなた、そんなに細いのによくあれだけ食べられるわね」

美和(みわ)黒露樹(くろつゆぎ)(あお)が口論している間、気が付いただけでも3つのケーキを食べていた。

「久しぶりのケーキだったので、つい」

「私は久しぶりに怒ったから疲れたわ」

黒露樹(くろつゆぎ)も疲れるんだ」

「そうよ。悪い?」


黒露樹(くろつゆぎ)(あお)を見て呆れた。

口論中は常時怒っていた割に、今の(あお)の顔は笑顔になっていた。よくも、コロコロと表情を変えられるものだ。(あお)美和(みわ)も今までの人間と違って調子が狂う。

畏怖の念を向けられる事があっても、普通に会話などあり得なかった。

美和(みわ)は私が何者か聞いていないのかしら?」

「聞いてますよ?魔王さんですよね。大変そうな職業ですよねー」

「職業って」

少女に職業で片づけられてしまった。魔王の威厳がない?いいえ、(あお)の友人だもの、変人なのよ。

黒露樹(くろつゆぎ)が伝票を持ち会計に向かうと、美和(みわ)が慌てて自分が払うと言い出した。

子供に払わせる訳にはいかないと断り、店を出た所でクロと呼ばれてた使い魔と、横に立つ人間の男性が待っていた。

使い魔がカフェで姿を見せないと思っていたら、仲間を呼んでいたのね。一人増えた所でどうでも良いのだけれど。

「何かしら?言いたいことがあるなら聞いてあげるわ」

「俺は蔦谷(つたや) 真司(しんじ)と言います。お名前は?」

黒露樹(くろつゆぎ)

黒露樹(くろつゆぎ)さん、今度食事でもどうですか?」

「はぁ!?いい加減にしなさいよ」

黒露樹(くろつゆぎ)さん?」

「あんた達は何なのよー!!」

黒露樹(くろつゆぎ)は叫びながら空高く飛び去って行った。

その姿を呆然と見送る真司(しんじ)とクロ。

「うーん、真司(しんじ)さんの好みは黒露樹(くろつゆぎ)かぁ。でも間が悪かったわね」

飛び去った空を見ながら美和(みわ)が呟いた。

「え?女子会をしていたんじゃないのか?クロが引っ張ってくるから来たけど、俺が割り込むのも悪いから待っていただけで・・」

「ごめん。私と黒露樹(くろつゆぎ)が喧嘩をしていました」

その状況から店を出た時に真司(しんじ)が声を掛けた。上手くいくものも、行かなくなる状況で。

「・・・・・・・」

がくりと、膝を付き、うな垂れる真司(しんじ)。なんだろう。帰れないと言われた時より落ち込んでいる気がする?

「そっとしてあげなさい。(あお)

「え?でも」

「復活したら帰ってくるわよ。クロも帰るわよ」

にゃにゃあ?クロは美和(みわ)真司(しんじ)を交互に見ながら、おずおずと美和(みわ)の後ろをついて行った。

(あお)も出来ることは無さそうなので、美和(みわ)達の後ろを追いかけた。


夜空の中、飛びながら黒露樹(くろつゆぎ)は荒れていた。

(あお)が生きていた事は喜んでも良い。けれど、(あお)の周りはどうして変な人間が揃っているのか。調子が狂うどころではない。美和(みわ)もそうだが、あの真司(しんじ)も予想外の言葉ばかり並べる。

話をしすぎて、感情が動きすぎて、たった一日でこんなにも疲れるなんて思いもしなかった。

黒露樹(くろつゆぎ)は噴火口まで降り立ち、八つ当たりも兼ねて火竜を叩き起こした。

「何用だ?この間会ったばかりだが?」

「火竜が気に留めていた人間が生きていたわ」

「そうか。黒露樹(くろつゆぎ)、だから嬉しいのか」

「私じゃなくて。あなたが気に留めてから知らせただけよ。じゃあね」

「ああ、そういえば」

黒露樹(くろつゆぎ)がくるりと向きを変え飛び立とうとした時、火竜は思い出した。

「何よ」

蒼之助(そうのすけ)此処(ここ)に立ち寄ると言っていた」

「ふぅん」

「楽しみだ」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。今なんて言ったかしら?」

「楽しみだ」

「ふざけないで!蒼之助(そうのすけ)と連絡取っているの?その前に生きているの?何で火竜だけ?」

「よく息が続くな」

「いいから答えなさいよ!!」

「手紙が昨日転移されてきた。我はこの地に居たから一番に知れた」

確かに火竜以外、皆住居を変えたり、放浪していたり自由にしている。この世界にいても皆の位置は把握できないのだから、向こうに居る蒼之助(そうのすけ)に解るはずもない。

けれど、釈然としない。今まで何百年も音信不通だったくせに、一通の手紙だけなんて。

「何の為にこっちに来るつもりか聞いているの?」

「家族が迷子。向こうに居なかった。次はこちらを探す」

「最近、異世界からの迷子は多いものね。歪が大きくなったとか噂もあるわ」

そういえば、(あお)も迷子だったわね。蒼之助(そうのすけ)に聞けば元の世界に戻る方法を教えてあげられるかもしれない。

「火竜。蒼之助(そうのすけ)が来たら、私に教えなさい」

黒露樹(くろつゆぎ)蒼之助(そうのすけ)に会いたい」

「そうよ。蒼之助(そうのすけ)に用があるの。忘れないでね」

「解った。呼ぶ」

「ふふっ」

黒露樹(くろつゆぎ)、機嫌直った」

「・・・別に暇つぶし」

方法が解れば(あお)達は帰還出来る。帰ってしまう。けれど、喜ぶだろうか。

空を見上げて願うこと。


本日、(あお)はギルドへ、美和(みわ)真司(しんじ)は保護機関へ訪れていた。

(あお)はギルドの掲示板の前で唸りながら仕事を探していた。

「今日は仕事なしか。仕方ない、クロ採取場所に行こうか。何か面白い物が見つかればいいな」

外に出ると、赤い着物を着た黒露樹が待っていた。

「暇なの?」

「相変わらず、礼儀がなっていないわね」

ふふっと小さく笑い、いつもの彼女だった。けれど、着ている着物が明るいと雰囲気が変わって見える。

「その着物似合うね」

一瞬驚いたが、直ぐに戻り当然の事言わないでと怒られた。

「それで、本当にどうしたの?今からクロと材料の採取巡りに行くけど、黒露樹も一緒に行く?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ