表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

騒ぎの結果

街外れに廃墟となっている一角があり、そこで作業する事になった。持ち主不明で何十年と放置されているので、多少壊しても問題ないと言う話。ただその反面、この場所に入って、崩れてきた建物に巻き込まれても自己責任。街は関与しないと言われている。

安全の為に壊して広場にしたら良いのにと、トルに言うと、瓦礫撤去の場所と予算の問題があるからまだ暫くこのままだろうと説明された。


作業中、建物が崩れて来るのは避けたい。

建物に囲まれた中に中庭を見つけ、そこに修繕する装備を広げた。

真司(しんじ)が試したい事があると言うので、見守っていると、腕輪の土魔法を発動させた。

地面の土はボコボコと盛り上がり徐々に石へ変化し、やがて半円状の形の石窯が出来上がった。

「疲れる!何だよこれ、美和(みわ)(あお)も普通に使うから、やってみたら全力疾走した気分だぞ!」

「若さの差?」

「埋められたいのか?」

物騒な言葉を笑顔で言わないで欲しい。

「冗談ですよ、嫌だな。窯を造ってくれてありがとう。じゃあ、トル達は4日後位に様子見に来て」

「解った。よろしく頼む」

「職人の方には紹介して頂け無いのですか?」

「えーと、装備を引き渡す時に」

「やった!楽しみ」

「すっげぇ爺さんだったりしてな」

純粋に喜ぶのは止めてほしいな、プレッシャーで冷や汗が出てくる。

今私が造ると言わないのは、やる前から断られる可能性が高いから。

だまし討ちみたいで気が引けるけど。最善を尽くすのでご勘弁下さい。


(あお)、4人分あるけど一人で大丈夫?」

「ご飯は持ってきてくれると助かる。作業に入るから4日この街に足止めになるけど、2人ともごめんね」

「全員同意した事だから気にするな。他に手伝う事はあるか?」

「今の所はないかな。じゃあ早速」

(あお)?もう夕方よ?明日からで良いじゃない。野宿でもする気?」

「え?そうだけど?それにこんな所に預かった物、放置できないよ?」

にゃあにゃあ、とクロが裾を引っ張ってきた。

『クロが見張ってくれるらしいで。人間なんやから、睡眠取れ言っとる』

「ほら!クロもこう言ってるし、戻るわよ」

「クロありがとう、朝早めに来るから。お願いします」

ずるずると美和(みわ)に引きずられ宿に戻った。


一方、(あお)達と別れたトル達は、4日間で出来る仕事がないかギルドを覗きに寄る事にした。しかし、今残っている案件は期間は長いが、高ランクの仕事。装備なしでは自殺行為になるので、諦めて早朝出直す事に。

早朝、リョク、カガリ、タタラは朝食を取る為、オープンカフェの店を訪れていた。人気があり、長時間並ぶ事も常の店。急ぎの仕事がない今回を逃す手は無いと、女子二人に押し切られ決定した。じゃんけんで負けたトルは一人、先にギルドで仕事を確認し合流する予定。

「今日も並びそうね」

「でも、楽しみです。見た目も凄く可愛いと噂なんです」

「店主の気分でメニューも変わるらし…」

楽しそうに話ているのが急に止めたのを見てタタラはどうかしたのかと聞くと、二人は微妙な顔でお互いの顔を見た。

「微弱なんだけど、魔力が一定の方向に集まってない?」

「カガリも気になりましたか?廃屋がある方向、修理を頼んだ場所ですよね?」

「魔道士しか分からない」

「タタラが喋った?!・・・じゃなくて、私達は理由分かるから良いけど、知らない人は気になるかな?」

「大量に流れてる訳ではないので、大丈夫だとは思いますが・・・ギルド長はどうでしょうか?」

「騒ぎになったら、その時は一緒に謝ろうか」

「そうですね。あ、順番回ってきました」

「トルったら何にしてるのかしら、早く来ないと食べ終わるわよ」

3人が店内へ入ってから暫くして、トルは無事合流を果たした。


リョク達の心配通り、1日2日は微弱の魔力が動くだけだったので、特に気に止める者はおらず日常を過ごしていたが、それは3日目の夕方に終わった。

街中から大量の魔力が一瞬かき集められ、ドンッと落石が落ちた様な大きな音と振動が伝わってきた。

振動が止むと何事も無かったように魔力の流れも元の穏やかさを取り戻していた。


トル達は単発で危険の無い仕事を繰り返し過ごし、本日分の報告書を提出する為、ギルドへやって来ていた所で異変に気がついた。

「リョク、今の…」

「何かあったのでしょうか」

「地震か?まぁいいや、報酬金を山分けするぞ。・・・カガリ?どうした?」

「分けるのは後!(あお)達の所に行ってみない?」

「何で?引取は明日…」

カガリがトルに説明する前にギルドの奥の方が騒がしくなっていた。

「ちょっと聞いてきます」

リョクは慌てて受付に聞きにいき、再び戻ってくると、がしっ、とトルとタタラの腕を引き、外に向かいながら。

「カガリ、説明は向かいながら」

「やっぱりー」

何事もない事を祈ってカガリは後を追った。


ギルドの上級魔道士達は一瞬だけとはいえ、膨大な魔力の変動は調査が必要と進言し、受理され、調査隊が派遣される事となった。

特定された場所が普段人が立ち入らない地域という点から、敵が侵入した可能性、街の住人であっても犯罪者が不穏な活動の可能性が考慮される。

リョクが受付の者に聞きに行った時、ちょうど編成を決める時だったので、自分達のパーティーが向かうと立候補した。

しかし、調査のみとはいえ懸念される点がある理由から、リョク達のレベルでは選抜外と判断された。

リョクは(すぐ)にトル達と共に、(あお)達のいる廃墟に向かう、調査隊が辿り着く前に。


中庭へ向かうと、運良くギルドの人間は誰も居なかった。

けれど、(あお)が見知らぬ者に攻撃を受け、激しい攻防戦が繰り広げられている。

理由は解らないけれど、(あお)に加勢しなければと思ったが、装備はまだ無い。

焦るトル達だが、ふと少し離れた所に美和(みわ)達を見つけた。

クロが障壁を張って、その後ろに呆れている美和(みわ)と、青ざめる真司(しんじ)が静観を決めていた。

緊急事態ではないのか?トル達は状況を聞く為、(あお)達の戦いの衝撃を避けながら、美和(みわ)真司(しんじ)の所へ向かった。


3日目の夕方。

(あお)は雨が降るなら室内も考慮していたが、そんな心配もなく晴天が続き、頼まれていた装備の修理は終えて、美和(みわ)達が持ってきてくれた晩ごはんを皆でのんびり食べていた。

トル達との時間まで、まだ余裕があるので、何か売る用に作れないか話し合っていた。

ある程度決め、作業に取り掛かっていた頃、この世界に来て始めて訪れた村にいた面倒な人物のファイが現れた。(あお)は作業中で気が付かなかったが、美和(みわ)真司(しんじ)は驚きと同時に厄介事がやって来たと思ってしまった。


軽く挨拶を交わし、村を出てから今までの話を聞きながら、ファイは暫く大人しくしていたが、(すぐ)に飽きて(あお)に近寄ろうとしたので、美和は慌てて()めに入った。

(あお)は作業中に邪魔されるのだけは本気で怒るから()めて、と。

だが、ファイは止める程なのだと、にやりと笑い、余計に興味を持ち(あお)の邪魔をし始めた。

話しかけて無視されたので、風魔法で(あお)が使う火元の火力を操作し、炎の柱を作って見せた。

結果、(あお)が作成していた何かは溶け、修復不可能な有様に成り果てた。

ファイの希望通り(あお)は切れた、想像以上に。

「クロ!美和(みわ)達を守れ!」

怒気を含みそう叫ぶと同時に膨大な魔力をファイに叩きつけ始めた。

クロは指示され慌てて、たしったしっと前足で地面を叩き魔法陣を広げ円状の防壁を張った。

一瞬でも遅れていれば、爆風と瓦礫の破片が降り注いでいただろう。


ファイは(あお)の想像以上の一撃を食らって、一瞬ひやりとしたが、気を取り直して攻撃を開始すると、だんだん楽しくなってきた。風魔法で鋭い半円状の刃を作り連続で投げても、器用に避け、時には器用にナイフで軌道を変え打ち返してくる。接近戦に持ち込み剣で攻撃しても、紙一重で避けられる。結構本気で戦っているにも関わらず、どの攻撃を放っても一向に当たらず、逆に、稀にではあるが(あお)の攻撃を受ける羽目になっていた。

(あお)の無駄のない動きは戦っていると言うより、舞っている様に見える。

ファイはボロボロになりながらも、相変わらずにやにやと笑いながら戦っているが、対照的に(あお)は無表情で攻撃を繰り返していた。


クロが作った防壁の中で、戦っている理由の説明を聞きながら(あお)の戦いに見とれていたが、リョクは我に返り自分達が来た理由を説明し始めた。

「え?やっぱり騒ぎになっちゃってる?結構建物壊れたけど、謝っても駄目かな?」

「建物は問題ありませんが、要注意人物扱いになってしまっては、自由が無くなる恐れがあります」

「それは不味いな。美和(みわ)(あお)を止める方法知らないか?」

美和(みわ)もあんな風に戦えるの?」

「私は(あお)みたいに変人じゃないです」

「よかった。(あお)みたいなのが、そんなに何人もいたら俺らの立場がなくなる」

「え?リーダー、立場あるつもりだったんですか?」

「リョク?!」

「そんな事よりも、(あお)を連れて隠れた方が良いと思います」

「そうだね」

「・・・優しい仲間が欲しい」

後ろでトルがいじけ始めたので、タタラに押し付けた。

美和(みわ)(あお)の方に向かって叫んだ。

「そろそろ止めないと、お爺さんに言いつけるわよ!!!」

「・・・・!!」

最後に特大魔力の一撃でファイを沈め、くるりと向きにっこりと笑顔で。

「なんの事?建物壊した犯人、ここで伸びてるファイだからね?」

良い笑顔で言われても不気味なだけ。(あお)を怒らせる事は止めよう、と皆の心が一つになった。


「とりあえず、修理は終わっているよ。それぞれ確認してね」

美和(みわ)達同様、装備品もクロの防壁で無事守られてた。

「賢い使い魔、私も欲しい」

カガリがじいっとクロを見ていたので、クロは警戒して(あお)の後ろに隠れた。

「カガリ・・・動物怯えさせんなよ」

「失礼なこと言わないでよ」

「わ、すごいです。新品みたいになっています」

「おー、すげぇ。前回のより断然大丈夫な気がする」

「むぅ、悔しいわ。安い価格でこの仕上がり・・・前回高かったのに」

「感謝」

装備を装着し確認をし始めたトル達のそれぞれの反応を見て(あお)は一安心した。納得してくれるだろうと自信はあったが、やはり本人達の言葉を聞くまでは安心は出来ない。


「初めは弱い敵と戦って、なじむか確認してから通常の敵に当たってね。じゃあ、私達はギルドの人達と鉢合わせない内に行くよ」

窯を砕き、人の痕跡を無くすようにバタバタと周りを片づけを始め、立ち去ろうとした。

「ちょ、ちょっと待て!職人の紹介は?さっき言ってた爺さんってなんだよ」

やはり、見逃してはくれなかったか。まぁ、もう隠す必要はないからいいか。

「職人は私、美和(みわ)が言っていた爺ちゃんは私の師匠」

「「「「!?」」」」

真司(しんじ)は驚き固まっているトルに肩を叩き

「友情に感謝するよ。原因の俺達を逃がしたと知られれば逆にトル達が目を付けられるだろうし」

「あ!」

今気が付いた様にさらにトル達は驚いて、さっと青ざめていた。お人よしにも程がある。

「まぁ、実際ファイが絡んでこなければ平和だったんだ。ギルドにはあいつを連れて行けば話は丸く収まる。よろしく頼む」

「お、おう」

真司(しんじ)って結構酷いよね」

(あお)に言われたくない。ほら、さっさと行くぞ。どうせ、ファイの事だ。何事も無かった様にまた絡んでくるんだろうよ」

「えー、いらない」

「あの、このファイさんて方は、(あお)のお友達ではないのですか?」

リョクさん、丁寧に聞かれても、転がるファイをタタラと一緒にロープで捕縛作業をしながら言う言葉じゃない気がしますよ。この世界で出会う女性って強いな。

「知り合いだけど、友達じゃないから安心して」

少しゆっくりし過ぎて、遠くから足音が聞こえてきた。

「じゃあ!またね!」

(あお)達は急いで建物の陰に隠れて移動を始めた。けれど、向こうの足音が聞こえると言う事はその逆も・・・。

トル達から見えない位置に移動すると、クロに頼み宿まで飛んでもらい無事離脱できた。


蒼達の姿が見えなくなると、ギルドの調査隊が到着した。トル達が何故此処にいるのかと、不審に思われたが、暴れていた原因の人物を引き渡すと取りあえずは引いてくれた。後日詳しく問い詰められる可能性が出てくるが。

調査隊がぐったりしているファイを運ぼうとした瞬間、ファイは震えていた。笑いを堪えて。

「く、くくくっ。そうでなきゃ、そうでなくちゃ!!」

急に大声で笑い出したかと思えば、あっさり縄を引き千切り自由になった。

「魔力で強化していたのに!」

ロープを用意していたカガリはショックを受けていた。

調査隊は直ぐに重力魔法でファイを捕縛しようと試みるが、軽く弾かれてしまった。ギルドでも上級魔導師を揃えたにも関わらず。捕縛手段を切り替え、剣士達がファイに向かって行くが、つまらなそうに攻撃をいなし、後ろに放り投げた。

「お前たちはつまらない」

「この場所で騒ぎを起こして何が目的だ!!」

調査隊のリーダーは緊迫した雰囲気で叫ぶが、当のファイはやる気をなくし立ち去ろうとした。

「逃がすな!!」

号令と共に魔導師、剣士達が連携を取り、攻撃を間を開けず繰り返す。ファイは避けながら大きな建物の前まで誘導され、彼らが取り囲み追いつめたかのように見えた。

「目的を言え!!」

「もー煩いよ。邪魔するな」

膨大な風魔法を発動させ竜巻を作り、一瞬で周りのものが吹き飛ばされ、ファイを中心に何も無い10m程の綺麗な円状の空間が出来上がった。

悲鳴を上げながら飛ばされた調査隊は、全ての者がうめき声を上げながら瓦礫の中から出てきた。怪我を負っているが、死者は出ていないのが幸いか。けれど、ファイは既に立ち去っていた。

トル達は辛うじて飛ばされはしなかったが、(あお)達との戦いを見た後に調査隊の戦いを見ると寒気がした。

調査隊が負けたのはファイと言う青年が本気を出したからの結果なのか。

ファイを負かした(あお)は誰よりも強いという結果なのか。

魔族でも無い人間があれ程の強さを持てるものなのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ