気を付けようがない出来事
『最新のニュースをお知らせします。昨晩、都内で行方不明者が二名出たとの情報が入りました。付近の方は十分に注意を・・・』
「最近多くなってきたね。行方不明者」
朝のニュースで見た事を思い出し、隣を歩く友人に話しかけた。
「あぁ、あれね。物騒だよね。でも、それよりもテスト対策しなきゃだけどね」
一瞬でも忘れたかった事をあっさりと話題を戻されてしまいました。現実逃避失敗。
空は快晴、ピクニック日和!お昼寝日和!なのに現実はこれからテスト勉強・・・頭が良くなりたい!
これからテスト勉強の為、路地奥にあるレトロ風の喫茶店に向かっている所だった。
高校3年 水川 蒼の父親はサラリーマン、母親はパートと一般的な家庭に育つが、祖父は鍛冶師、そして人柄も個性的な人物だったため、その影響か周りの女子からは少し浮き気味だった。
本人はまったく気にしていないので現在、直す気配はない。
友人の皆森 美和はおおらかで細かい事は気にしないので、気が合いよく遊んでいる。
ただ気になるといえば、自分はショートヘアの黒髪、パーカーにジーパン、スニーカーにリュックとカジュアルだが、美和はロングヘアの茶髪、白地ベースの花柄のワンピースにレザートートバック、パンプスと女子力が高い。ちょっと羨ましいけど、私には無理だな。
駅を降りて高架下に並ぶ店を右手に暫く歩くと、広めの十字交差点に出る。その先の信号を渡り、左側の細い路地に目的地の店がある。
十字交差点の中央に差し掛かった時、視界の端に黒いものが見えた。近寄ってみると黒猫が丸くなってる。両手で収まるサイズだ。
飼い猫?野良猫?怪我してる?この辺りに動物病院あったけ?
でも、放っておいたらそろそろ信号も変わる。
何で誰も気にかけない?
信号は点滅し始め、人もまばらになってきた。
「蒼、なにしてるの?信号変わるよ」
「あぁ、もう!」
鞄の中からタオルを出し、子猫を包んで抱き上げてすぐに移動しようとした瞬間、足元に約直径1mの青白く光る波紋が広がって見えた。
「は?」
次の瞬間、光は強くなり視界は真白の空間に変化、浮遊感を感じ意識はそこで途絶えた。