表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槐安のフテラ  作者: 佐々木 律
放浪砂丘
22/23

十三歩,

頭を抱えるエレルの後につき、ガウンは部屋を出る。


扉の向こうは外ではなく、まだ建物の中のようだ。


細い廊下を進み始めて数秒、エレルは右に曲がる。


そこには、下へと続く階段があった。


地下へと下がっているのか、自分がいた部屋が二階以上の高さにあったのかは分からないが、明暗の差は無い。


響く足音に加え、何処かから唸り声が聞こえる。



付いてくるべきではなかったのだろうか。ガウンは緊張から息を飲む。




エレルは、一つの扉の前で歩みを止めた。


ドアノブに手をかけたかと思えば、勢いよくドアを叩き開く。


「ユノア!人のものを勝手に持ち出しては駄目でしょう!」


雷でも落ちるような怒声を浴びていたのは、若き青年であった。



部屋の中は油と鉄の匂いで充満しており、大きな機械音が休みなく鼓膜を刺激してくる。


奥の中心にある巨大な円形のものは一体何だ。全ての動力が流れ込んでいるようだが。



青年は太さも大きさも様々なパイプの間で、小さく丸まっている。


「だって、気になるじゃないか。あんな変な武具なんて、見たことないんだから…」


聞き覚えのある、気だるそうで、必要最低限しか出さない声。


彼の名は、ユノアというらしい。波がかった薄い茶色の髪の毛は、右目を覆っている。



「眠っている間に取るのは、ただの犯罪だぞ。まさかとは思うが、さっきの爆発音はそれに使ったんじゃないだろうな。」


どうやらそのまさからしく、ユノアはドレアラから目を逸らす。


「どうして何も考えなかったの?見たことのないものをどうやって弁償するつもり?」


「ち、違うよ。」


迫ってくるエレルとドレアラに、ユノアはたじろぎながらも潔白を主張した。


「いや、爆弾を乗せたのは嘘じゃない、本当だから申し訳ないとは思ってるけど…ちゃんとあそこの台を見てよ。」


彼の指差す方向は、部屋の丁度中心部。


その上には、黒い煙を上げながらも輝く、ガウンのロンフォスが横たわっていた。


「何をしてもびくともしないんだ。切断は勿論、火の中に放り込んでも、急速な温度差を与えても駄目だったから、最終手段で爆弾を使ってみたんだけど…」


「お馬鹿。」


エレルは、躊躇なく青年の頭を叩く。


「それはあくまでも結果でしょ。何ともなくお返しできるから良かったものの…ちゃんと謝りなさい。」


ガウンの目の前に引きずり出された青年は、彼女の頭二つ分程上にあった一から頭を下げた。


「ご、ごめんなさい、勝手にこれ取って…」


「取っただけか?」


「取って、その…色々と負荷を与えて、ごめんなさい…」


エレルとドレアラも、ユノアに並んで頭を下げた。


現状理解はできていないが、モンドもガウンに謝罪をした。


「いや、そんなに謝らなくても平気。無傷で返してもらえたし、私自身助けてもらった身だから、責められない。」


顔を上げたエレルとドレアラは、どこか不服そうな顔をしている。


何に納得がいっていないのだろうか。


「いえ、それでは駄目よ。あなたを助けたのは、あなたに懇願されたからじゃないもの。運良く罪とならなかっただけで、この行為は許されるものじゃないわ。何か、他に私たちにできることはない?」


「息子の過ちは、親の責任でもある。このままでは、俺たちが納得できない。」


だから、何に納得を求めているのだ。今度はガウンが頭を抱える番らしい。




その後ガウンがどう訴えても彼らの主張は変わらず、ガウンはとりあえずこの油臭い部屋を出ることを提案した。


階段の途中で、ガウンはふと重要なことを思い出した。


「聞くのを忘れてたんだけど、ここは一体何処なの?」


「ここは、リスィアだよ!」


ガウンの右手をいつの間にか掴み拘束していたモンドが、元気に答える。


「そう、ここは忘却口リスィアよ。テクノル砂丘の下、南側に位置しているわ。」


まさか地下にこのような澄んだ空気が通っているとは。ガウンは思わず目を見開いた。


「あの砂の下に、暮らしているの?」


「そうだ。砂の下って…おまえさん、テクノル砂丘を知らないのか?」


無論知るはずもなく、ガウンは首を横に振る。


これまた珍しい旅人もいたもんだと、ドレアラは驚いている。




階段を上り終え、先程の部屋とは反対方向に廊下を進む。



すると、随分と天井の高く開けた部屋に出た。


テーブルや植物、釜戸等を見るに、ここは彼らの居住スペースにおける中心部なのだろうと考えがいく。



「さ、座って。飲み物でも飲みながらお話しましょ。」


時間はあまり無いと言ったことを、忘れられたのだろうか。


ガウンは再度それを伝えようとしたが遅く、既にテーブル上にはコップが五つ並べられている。



「テクノル砂丘は、非常に広大な人工の砂丘よ。何かしらの乗り物が無ければ、幾晩を過ごしても水には辿り着けない。」


エレルが岩の奥から取り出してきた黄色の飲み物は、香りからして甘く、ガウンの嗅覚を奪った。


一口飲んでみれば、そこらの木の実と比較して何倍も濃い甘味が下を襲う。


かといって、その甘味はくどい訳ではない。



あのスープといい、彼らはそのような食糧を元に生活を営んでいるのだろうか。一気に飲み干す前に、ガウンは慌ててコップをテーブルに置く。


「ガウンは、一体何処から来たの…?」


ロンフォスから興味が湧いたのか、ユノアはガウンの顔色を恐る恐る覗き込んでいる。


「私は、ミレーの橋の向こうからこちらに来たの。元々住んでいたのは、その先にある森。」


「ミレーの橋だって?」



その単語を述べた途端、彼らは身を乗り出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ