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ドール=チャリオットの魔剣が語る  作者: ぼうしや
止まらぬ邂逅
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6:死を忘れ、命を忘却された願い

カチコチと時計の針の動く音がこの間の静寂を物語っている。


『リンド…これは』



超再生リジェネレイト。それは依存するモノによって種類が幾つかありますが。アリシアのそれは貴方の中に蓄積された魔力に依存して成立するものです。」



『超再生って…どんな事をしても死なないって事なのか?』



「そうです。今のアリシアは魔剣あなたの持つ魔力とリンクしてその生命を維持してます。」


俺の中の魔力…?


依存している?



『アリシアは・・・痛くないのか?』



「え?うん」




『え、だって首取れたんだよ??』



「う、…うん?」



普通の女の子なら泣き喚く場面だぞ

なんでそんな平然としてられる。


そもそもだが…彼女は家族を、屋敷のみんなを殺されているのに

さもそれが無かった事のように普通でいやがる。


こればっかりは

この感じる違和感は…


はっきり言って気味が悪い。


「気づいているようですね魔剣」


『リンド…これは―』


「『狂化』。魔剣所有者特有の能力スキルです。彼女は今、魔剣の力によって感情や感覚を制御されているのです。」


狂化されているだと?意味がわからん


「それについてはあなた自身…魔剣について説明する必要があります。」


魔剣に魔剣の説明をするのも甚だ疑問ではありますが


と付け足して彼女は魔剣とリューネスについて語った。

ちなみにアリシアは食事を終えリンドお手製のクマのぬいぐるみを抱き抱えてててと先ほどの寝室に向かった。

一瞬振り返りこちらを見たアリシアの顔は、少し寂しそうであったが、

また何てことなさそうにケロリと笑っている。

まぁ、大丈夫なんだろうよ。

そして、俺こと魔剣は椅子に立てかけられたままだ。


『つか、自作ぬいぐるみとか 可愛いところもあるんだな おまえ』


「ん…んん、趣味です」


リンドは少し顔を赤くして喉を鳴らす はいはい余計なこと言って申し訳ないね。



―魔剣


人が踏み込むには命が足りないと言われる魔界

そこで希に発見される、マグナ・ウェポンと呼ばれる超兵器らしい

その出生、能力はそれぞれが不規則。不明な点が数多く

アリシアの父リューネスが何処でそれを手に入れたかも彼は答えようとしなかった。

ただ分かる事は、曰くその剣は人格を宿し悪魔的な囁きをする。

そして持ち主に強大な力を与える代わりに多くの血を求め

啜った血は魔剣の魔力となり、所持者に更なる力を与える

だが、魔剣はその身に魔力を満たすまで更なる血を欲し。

やがて持ち主を狂わせる。まさに忌むべき存在。


「結果的に、魔剣を持った者は力に溺れその身を破滅に導かれ死へと誘われるものなのです

そして、魔剣は次の持ち主に仕えるまでじっと待つ。その繰り返しです。」


リンドが説明してくれているここまでは聞いたことのあるようなテンプレだった。


どこにでもあるような魔剣の設定って感じだ。


そしてアリシアが感情を抑えられ狂化されている理由も頷ける。

リンドは話を続ける。


「故に、リューネスの持つ魔剣本来の力という事実はいままで誰も知ることがなかったのです。まず知るきっかけが無いまま人間は死に絶えますから。」



彼女はひと呼吸置き、手元に有るティーカップを口まで運び紅茶を啜る。



「アリシアの父であるリューネスの家系は本来、魔物狩りを生業としていました。

そしてある討伐依頼を受けた後に、あの魔剣を手に入れました。更なる自身の力とし、魔物を駆逐していきました。もともと彼は変わった人間でした、そのせいか魔剣との対話を可能としていました。本当に気持ち悪いほどに。ええ本当に。」


『いや待て、お前本当に容赦ないな』


物憂げにアリシアの首を刎ねて説明するあたりお前も十分イカれてるよ。


「リューネスは長い日々を重ね、繰り返し繰り返し魔物を殺しては血を魔剣に啜らせました。

もともと狂っていたような性格が幸いしたのか、自身の意識が狂うことさえなく、

魔剣の魔力を満たして行きました。それは常人では成し得ない程の偉業であったことを認めましょう。」


狂気に溺れることなく、死ぬことなく今まで誰も到達する事のなかった魔剣の望みをリューネスという男が叶えたわけだ。



「そして、大量の魔力をその身に宿した魔剣はリューネスにこう云ったのです。」



―我が主、貴様の願いを叶えよう



「これが、人では到達するのにあまりにも過酷な条件を乗り越えた先に成立する一般的に知られることの無かった貴方という魔剣本来の力。アルス・マグナの開放です。」



『アルス・マグナ…それを可能にしたリューネスはアリシアの生存を魔剣に願ったと?何のために?』



「…申し訳ありません、複雑な事情が絡んでますので詳しくは簡単に伝えられないのですが。

結果的に彼はその願いを叶えると同時に魔剣は意思も力も失い、合わせて自身の生涯を終えました。」



『生涯を終えたって…父親は…リューネスはその場で死んだのか?』



「偉業を成し得ましたが、その代償が無いわけではなかったのです。既に彼の身体はとっくにボロボロで、それでも尚動くことが出来たのは魔剣に供給された魔力によって生命を維持されながら動かされていただけなのです。その強靭なる精神力で意識を維持して、願いを叶える為の大魔法を行使し、魔剣が魔力を失うとリューネスはその身を灰に変えこの世を去りました。」



文字通り身を粉にして娘の生を、幸せを願ったわけか。



「ここまで話せば理解できるでしょう。この娘は、かつてのリューネス同様に魔剣によってその命を維持されている。そしてその超再生と狂化は魔剣の所有者としての立ち振る舞いを強要されているのです。」



そうか―結局はアリシアもかつての持ち主やリューネス同様

契約に基づき魔剣の所持者として魅入られてしまったわけか。



それがこの魔剣による契約。



今は人格が俺になっているんだがな。



「リューネスは彼女に死の運命がが齎されたとしても、生き続けることを願う故に魔剣の契約を彼女に引き継がせた。けれども、私はこのような事態を望んではいなかった。私は気づいていたのです…魔剣如きがタダで命を蘇らせる事はありえない。きっと、望まぬ業をこんな小さな躰に背負わせてしまう。ですから私は魔剣を封印し、リューネスの代わりにアリシアを…母であるアリアを、その家を護ろうとした。それが…彼との約束でしたから」



だが、それは見事に打ち破られ


思わぬ形で魔剣の契約が履行されたしまった…



『お前が俺という魔剣を憎む理由はだいたいわかったよ。』



つまりは、俺が居座っているこの魔剣の契約を以て、彼女の命を繋ぎ止めてしまっている。




そして今後互いに存在していくうえで必要な事が問題として浮かび上がった。



『…俺の魔力はあとどれくらいなんだ?』



非常に不安な所だった。彼女の生をこの魔剣に蓄積された魔力が維持しているのならば

それが無くなった時どうなるのか。



「ご安心を。貴方の中にはある程度の魔力が蓄積されていて、何事もなく暮らせれば

500年以上は生きることのできる魔力を有しています。」



『人並みの人生を越えているぞ』



「どうしてそうなったかは私が知る由もありませんが貴方たちを見つけた場所は血の池の上。きっとそこから魔力を吸い上げて行ったのだと私は仮設を立てています。」



それはそれで戦慄を覚えるがな。



「ですが、アリシアを一度死に追いやった事態。このまま終わるわけにも行かないでしょう。」



『詰まるところ、これだけの魔力を有している魔剣だ。所持者が居たとしても狙われない理由にはならいわけか』



「…そういう事ですね。残念な事に。」



これから狙われる可能性があるわけか。面倒なこった。

俺自身、この魔剣の中に人格として居座っているだけで何が出来るかもわからないというのに。

それに俺にも行かなくちゃ行けない場所がある。



そうだ


『リンド』


「何でしょうか、魔剣」


『……』


ちょっとその呼び方は好きになれねえなぁ 

なんというか、極端な話だが小学校の時に学校でうんこしただけでウンコマンって呼ばれている気分だ。


『すまん、悪いが俺にも名前があるんだ。魔剣って呼び方は好きじゃない』



「魔剣なのにですか?」



『俺だって、好きでこうなっているんじゃない。本来は名前もあるんだよ。東畑慈郎だ。』



「トーハタ・ジ、ロ?」



なんで、ちょっと先住民族の覚えたての言葉みたいに口尖らせながら復唱するんだよ。

お前一応帝国魔術大隊の指揮とってたんだろ?よくわからんが頭がいいんだろ??



『あーもう、ジロウでいいですジロウで』



「では、改めましてジロ」



なんか少し音に引っかかりを感じるがこの際いいか



『リンド。俺には向かわなくてはならない所があるんだ。』



「向かうべき、所ですか?」




『極界の巫女という奴に会わなくてはならない。』



「―っ!?」



その単語を聞いた途端、彼女の細めが目を開き なんとも綺麗な碧色の瞳が伺えた。

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