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ドール=チャリオットの魔剣が語る  作者: ぼうしや
誓約都市エレオス
178/199

121:再び訪れる業なる者

―少し前の事である。




「我が主よ、どうかこの私に名を―…」




キンキンと自身の視界を回すほどの謎の現象…何度かのアリシアによる呼びかけから意識が戻ったと思えば



それは急な展開であった。

ひとりの女性…ネルケとティルフィの母が、こちらに近づいて跪いたのだ。



あの時のクリカラのように

知恵持ちの竜である彼女は自身を捧げるように頭を深く、ふかく俺の前で下げている。



『名前って…お前は、エキドナだろ?』



「いいえ、かつての私…世界から、神から与えられた名である“エキドナ”は既に死にました。この命はあなた様から賜りし唯一の祝福。どうか、主であるあなた様よりこの世界で生きる事を許される名を私は欲しているのです。」



『……』



「…いいえ、先にこういうべきでした。」



エキドナは祈るように手を組み瞑目した。



「ありがとうございます。私に、再びこの子たちの母である機会を与えてくれて。」



『…そう思うなら、俺の事を主とかあなた様とか呼ぶのはやめてくれ。名前はジロウだ。それと堅い会話もなしだ。俺はそこまで仰々しい存在じゃない。』



「―そうですか。でしたら、少しずつでも慣れていきましょう。ジロウ・サン」



なんだその妙ちくりんな呼び方。まるでサンまでがセットみてぇじゃねえか。



『話を戻すが、お前がエキドナという名から変わる事で困るやつもいるだろ?』



そう言って俺は視線を彼女の後ろにいる二人の娘へと向ける。



「それに関してはお構いなく。母である限り、私の名はあの子たちにとっての楔にはなりえません。」



『そう…なのか?』



否…そうなのだ。俺は自身の愚問に対してすぐに納得した。

彼女がどのような名であれ、母である事に何ら変わりはないのだ。



視線を合わせたネルケとティルフィもそれに同意するように何も言わず頷く。



『名前か…そうだなぁ…』



俺は無い首を傾げながら視線を泳がせる。

そして、泳がせる先で“それ”が視界に入ってしまう。



『…』



跪く彼女の胸元…なんつーか…何とはいわんが…リンドに負けず劣らずでけぇなぁ…何とはいわんが…



『あの、そのぉ…パ…パイ…』



「パイ?」



『あ~~~~っと、あれだ!パイロン!あんたは今からパイロン!白き蛇竜という意味だ!』



「白竜…その名、ありがたく頂戴します。ジロウ・サン」




―まぁ、クリカラが黒い竜って事で…対極に置くのもありって事でいいか。ね



ね、アリシア。…なんでそんな怖い視線を俺に送るのかな?


なんか目が恐いし。怖いし。なんで?




「―見てたでしょ、パパ」



『…何を?』



「見てたでしょ???」



『おいおい…何を?』



俺はアリシアの視線から送られる圧に耐え切れず目を逸らして目痛いものを端にくらっている気がしてやまない。



「…魔剣、様」



『ん?』



慣れない呼び方でそろそろと近づいてきたのはティルフィであった。


彼女も何かもじもじとしながら俺に何かを言いたげであった。



「ぼ、僕にも…名前を…くれないだろうか?その…」



『…』



そうか、この子も同様に蘇生させた存在だ。彼女自身もその義理を全うする為

母に習って俺から名前をもらおうとしているのか。


だが、俺は暫く考えた後にすぐに結論を出す。



『ティルフィ…おまえはティルフィで変わりないさ』



「―どうして?」



『子である君の名前には…変わらずかつての母からの願いがある。母からもらった名前を大事にしてくれ。ティルフィ』



「…そ、そうか」



ティルフィは目尻に涙を溜めながらも嬉しそうに笑いながら答える。



『改めて聞くけど、あんたらはこれ以上魔業商に組する理由は無い。そして俺たちの側についてもらう。それでいいんだな?』



「ええ、主であるあなた様の意向のままに」



「従うさ。断る理由がない。きっとあいつらからすれば…僕の行いは現金なものであるに違いない…けど、あんたは確かに僕らに出来ない奇跡を確かに起こした。なら、あんたの導いた道に連なるだけだ。それに―」



ティルフィは顔を赤らめながらそっぽを向く。



「ぼ、僕も興味があるんだ。…あんたがあの時言ってくれた…僕らの居場所を創るって言葉。」



「お姉ちゃんは素直じゃないんだから!」



ネルケはあれからタガが外れたようにティルフィに近寄ってはすぐに抱きしめて顔を摺り寄せてくる。



「う、うっさい!つかヤメロ!なんだ急に!お前は!!!」



「あらあら、ふふ」



後ろでそれを優しく見守るパイロン。



『そんじゃあ、今後の行動について話合うとするか』



「…この城の仕組みを抑えるなら、イヴフェミア姫のいる場所へと向かうべきだ」



『イヴフェミア…』



「この城…いや、ここ王都一帯は彼女の持つ天使の眼とそれを覆い、その闇を観測する事で蓄積させた魔力を変換させるプシュケ=エク=サティスによって形状を具現化されている。悪く言えば、この場所は既に彼女の思考による内側と言っても過言ではない。彼女が“そうであれ”と願えば壁から千本の剣が吐き出され、壊れた壁も修復させることができる。」



『そりゃあ物騒なこって…蓄積された魔力ってのは?』



「プシュケ=エク=サティスの本体はこの城の地下最奥にある。そこに、この場所で暮らす国民とよばれた人々の魂から一定の間隔で徴収した魔力が蓄積されている。」



『魂から魔力を徴収だって?そんなものまでクラウスは作っていたのか』



「いいや、それはもともとこの王都エレオスに存在していた古代の代物だ。それをクラウスが多少仕組みを弄って出来たのが今のそれだ。」



『そうであっても利用するだけしてるあたりゾッとしねぇわな』



「クラウスは蓄積された魔力を本来の目的の為のリソースとして使うつもりなんだ」



『ああ、スフィリタスが言っていた。厄災の根源・ジャヴァウォックを顕現させて女神を引きずり出すのだと。そしてその女神から心臓を生み出すと』



「あんたらはもう知っているだろうが、クラウスは相手の心臓を搾取する事でその能力を使役する事が出来る。あいつの能力は魔術なんて生易しいものでは無い。もっと…狂気の奥から伸びてきた悪辣な可能性の具現だ。それを止めない限り…」



『一応あるんだ。それを止める方法は、けれどそのアイテムをここに連れ去られた時に奪われてしまった』



俺はそれがどんな物かを説明する。



「なるほど…クラウスがそれを把握しているならそれを安易な場所に置く筈が無い。自身にとって都合の悪いものだからな」



ティルフィは顎に手を当てて瞑目すると



「…わかった。僕が、それを奴の懐まで行って探り当ててみる。一方で魔剣、様はイヴフェミア姫を抑えに行って欲しい。」



『まて』



「なんだ?…やはり信用ならないか?敵であったこの僕が―」



『違う。魔剣なんてその呼び方は好まない。母親に習って俺の事はジロと呼んでくれ。』



「…え?あ、ああ。わかったジロ…サン」



サンは確定なの?



「ですが私は承諾し兼ねます」



後ろから割って入る声。それはネルケだった。姉のティルフィへと再び駆け寄りがっちりと腕にしがみつくと



「私もお姉ちゃんと同行します。それだけは、どうか許してください」



「ネル…」



「ママ…ごめんなさい。私はもう、離れるつもりはないんです。お姉ちゃんと」



俺は白竜へ視線を向けると彼女はかぶりを振りながらも笑顔で頷く。






『―さて、俺たちは…って、ロック?』



ロックの方を見ると、彼女はずっと顎に手を当てて何か考え込んでいた。



『ロック、どうした?』



「ん?ああ、いやなに。ちょっと考え事をしていただけさ。なんでもない」



『そうか。今は時間が惜しい。なんかあるなら、後で言ってくれ』



「なんかって、例えば頼み事とかでも?」



『ん、まぁこのあとにちゃんと世界を救えたならな』



「“救う”なんて、まるで勇者みたいな事をいうんだね。ジロ」



『そんなんじゃねぇって。』



「ま、なんにせよ今は君の最優先事項をどうにかする必要があるようだね。そうだ。その、ティルフィ、さんだっけ?」



「なんだ。というかお前は誰なんだ?」



「え?あー、僕ぅ?ええとロックっていうんだけど…そのー」



『この城の中で囚われていた奴らしい』



「この城で?」



「そ、そうなんだぁ。なにかと色々される前にさ、逃げ出してきたんだよ」



「…そうか。まぁ概ねスフィの実験サンプルか何かだろう。で、本題はなんだ?」



「ふ、ふぅ。あの~。なんというか手を握らして欲しいんだけど」



「何故だ。普通に嫌だが」



疑念の意を表にだすティルフィに、俺はそのやり取りでハッと思い出す。



『ティルフィ、握ってやってくれ。そいつの魔術には記憶にある人の居場所を察知する事ができる。先ほど話していたイヴフェミア姫の居場所もそれで把握できる。』



「ああ、そういう事なら―」



と、ティルフィは手を差し出す。



「その手に魔力を意識して集めて。そのまま、記憶の人であるイヴフェミア姫を思い描いて…それじゃいくよ」



ロックは彼女の手を取り、意識を集中させる。



『どうだ?』



「うん、どうやら上の方角にいるみたいだ。斜め上の方向…こりゃあこの塔の構造上外にでないといけないか?」



「すまない。確かにこの城は構造上塔の形をしながら幾つかに分かれているような感じだ。塔と塔をつなぐ大橋もない。特にイヴフェミアがいる場所は厳重にする為に道を一本にしてあるんだ」



『なら、この壁突き破って進むしかねぇか―』



「用が済んだのなら僕はもう行く。あとは任せるよジロウサン」



何とも慣れねえ呼び方だが…ま



『…死ぬなよ。ティルフィ、ネルケ』



行く際に少しだけこちらをティルフィとネルケは振り向いて

「ああ」と二人は、ここから目的の場所へと向かう為に別れた。




『さ、問題はどう突き破るかだな…』



「ジロウサン。それには及びません。」



すると白竜が前に出るなり会釈して来た。そして―








『―ウヲホォ!?』



思わず俺は変な声が出た。

あまり見慣れないものだから驚いてしまう。当然だ


一人の可憐な女性が、会釈をし頭を上げた途端にその身を大きな白い大蛇にと姿を変えていたのだ。

鱗は微かに真珠のような鈍く美しい輝きを見せ、その長い身体で部屋を埋め尽くすようだ。



竜化…なかなかに大したもんだ。



「…綺麗」



アリシアが珍しく竜という姿に誉め言葉をもらしていた。

蛇型の竜にはトラウマを持っているこの子にさえもそれは美しいものであったのだろう。


あるいは、白という清廉さへの恋慕なのだろうか。



「サァ、ミナサマ。私ノ口ノ中ニ。目的ノ場所マデハ、私ガ導キマス」



『頼もしい限りだっ…え?』



「あ…ひっ」



白竜が俺たちの真上で大きく口を開き俺たちを中に居れて 閉じた




『おわっ!おまっ…急にびっくりしたわ!!』



「び、びっくりした~~~」



ところでさっきなんか可愛い声聞こえてなかった?誰だ?



「知らない」



『なんでお前が返事するんだ?』



そういうと白竜の口の中で真っ暗でありながらも

アリシアの睨みつけてくる眼光の光だけは見えたような気がした。これ以上は止めだ。

はい、この話はヤメヤメ




「デハ、目的地マデ一気ニ向カイマス。確リ捕マッテクダサイ!!」



なんつーか、勢いで進んでてあれなんだが

今の俺、女の人の口の中にいるんだよなぁ。しかも二児の母の



「新しい性癖拗らせないでパパ」



『バッカ!べつにそんなんじゃねーっつうのぉううおおおおおあああああああああああああああああああああ』



突如として、大きな音にビビる一方で

「ぎびゃあああああああ宙にういているみたいいいいいいいいいいいいいいいいい」


と、俺の情緒を掻き消す程に変な悲鳴を上げるロックと姿勢を低くしているアリシア。



「どうやら、本当にゴリ押しで進んでいるみたいねっ」



「ここは宇宙?宇宙なの?ねぇ、宇宙ってどこ??もしくは古にありますは清廉なる探求の底?いや、でも浮いてるし、ああそうか!これが幽体離脱ってやつ?ほら魂がほえあぁあああああああああああああああああああああ」



「うっさいなぁコイツ!!」



『え?どうなってんの?どうなの??ねぇ!!ねえええ!』



俺が知りえる情報は何度も壁を破壊していくような大きな音だった。

ロックの様子を見る限り、ジェットコースターに乗っている感覚なのだろう。

その体感を得ずに済んで良かったと言えばそうだろう。


だが、これはこれで 怖いんだ。(真っ暗な闇の中で何枚もの音がバギバギと響きながらいや、痛快だという見解も捨て互いがそのなんていうか)



「パパ。何をぶつぶつと…あ、光―」



多分、何枚かの壁を壊して外に出たのだろうか。

口の隙間からうっすらと光が差し込むのがわかる。



そこから間もなくして、一気に光が差し込んだ。

白竜が大きく口を開けたからだろう。

俺たちに広がる城の景色を見せていくつかの塔が並んでいるのが見えた。



「ジロウ・サン、ドチラニ彼ノ姫ガオリマスデショウカ?」



『おいロック、どの塔だ』



「は、はい。えと、晩ごはんの時間?僕、ヘラクレスオオうさぎの肉はちょっと苦手なんだよね堅いし」



「こいつ、イっちゃてるわよ」



『虫か獣かはっきりしろや!つぅかそんな話してねぇ!!寝ぼけてねぇで!どこだって!』



「―はっ、あそこ!あの一番上にあるとううううわあああああああああああああああああああっ」



白竜は聞いた途端にすぐ動き、そこまで大きく駆け抜ける。いや、蛇だから脚はねーけどな













…そして、現状に至る。



『こっちだ!!白竜!!』



白竜の巨大な頭が壁を穿ち、開いたままの口の中から俺は周囲を見渡す。すると



「―…なっ?」



「居マシタ。ジロウ・サン」



聞こえた声の先。パイロンと同時に俺は人影を見つける。




「馬鹿な。知恵持ちの…竜、だと―??」



視界に映ったのは、血まみれで倒れている清音と…おそらくはあのドレスを着ている女性。

彼女は見覚えのある奴に首根を掴まれて悶えていた。




…―俺はその状況を直ぐに理解した。



抑えるはずだったイヴフェミアに危害を加えているあの和服の角女。あれは魔業商の一人だ。


再度傍らで倒れている清音に眼を向け、自身の中に沸き立つものを感じた。



『アルメンっ!!』



俺はすぐさま鎖を放ち、その和服の女の腕に絡ませた。



『いいぞ。そのまま“引き千切っても構わない”』



俺は奴に脅しを入れるつもりでそう叫ぶ。しかし、角女はそれに対して動じずに

鎖を絡ませたその腕でそのまま引き戻そうとする。


なんともまぁすごい膂力だよ。


ただ、押して駄目なら…引いてやるってな。 ああ、この場合は逆か?



『ああ、いいぞその調子だ。そのまま行ってくれ“アリシア”―』



アリシアは俺の意図をすぐに理解して、そのまま角女に引っ張られる勢いに任せて

そいつの顔面に飛び膝蹴りを入れてやった。



「んぐっ―!!!!!!!」



「うわ、パパ…これモロに入ったわよ」



「貴っ様ぁあああああああああああ!!」



角女はすぐさま激昂して、今一度鎖で絡まれた腕を大きく振り回して俺たちを引き寄せようとしている。


だが、無駄だ。すぐさま俺は鎖を霧散させて、アリシアが奴の懐下で低い姿勢でしゃがみ込むと

魔剣おれを使ってその懐に思い切り柄の一撃を入れる。



「んぐっ…!!」



よろけている間に俺は指示を出す。



『ロック!急げ!そこに居る子を…清音を治療魔法で回復させてくれ!』



「だろうと思ってもうやってるよ。」



ロックは既に片手で魔力を使って誂えた緑白の魔法陣をそのままボールを投げるかのように器用に投げて清音へと当てた。



「傷は塞いだけど、血が足りてないね。この子の持つ魔力から還元するよ。代わりに意識はすぐに戻らないけど」



『構わねぇ。パイロン、そのまま回収を』



「ワカリマシタ」



すぐさまパイロンは部屋の中を思う以上の速さで這いまわり

バクンと、白竜は清音を口の中に居れた。



『アリシア!』



すぐにでも角女のイヴフェミア姫を掴む腕を斬り落とそうと俺はアリシアに促す。




―しかし、この女の腕はガギリと鉄を叩いたような音を響かせて俺たちの腕を弾いてしまった。




『かっ』「たぁ―…!!」




「貴様ら、やってくれたな」



ギロリと鋭くのぞき込む金色の眼光が俺たちに向けられる。





「蒼天〆(アオアシ)―!!!」




カタリ、と



床に投げ捨てられていた薙刀が

その呼ばれた名に応えるように角女の翳した手の中に収まる。



そいつはアオアシと呼ばれた薙刀を握ると、その片腕で、風を起こすほどの勢いで大きくそれを振る。



『リーチがある、距離をとるんだアリシア!』



「っ―!?」



アリシアはすぐに後ろに仰け反るように下がり、薙刀から離れた距離を取っ………



「いけません!皆さん、姿勢を低くして!!!」



いつのまにか人間体に戻っていたパイロンが大きく叫ぶ。




そこからは刹那だった。


『ぶべっ』


「なん、えっ!?」


咄嗟にゴキブリのように、地にしがみついて姿勢を低くするロックと

清音を抱きしめながら頭を下げるパイロンを俺は叩きつけられた地面から見上げていた。



キン、と刃が空気に触れる音が響くその瞬間。



周囲一帯を一本の線が断絶した。


簡単に言えば、一定の高さから上がそのままズルリとズレ落ちていく。


もっと簡単に言おう。

こいつの  一振りが、この部屋一帯を  青天井にしちまいやがった。



それだけでは無い。アリシアの首筋からはジリジリと赤い稲妻を放っている。

それが何を意味しているのか直ぐに理解した。




蒼天〆(アオアシ)


これは後に知る事なのだが、そいつの持つ薙刀はメイの探していたサツキの武器の一つ。

変幻自在の刀の通り、刃そのものは固としての概念が無く


振ったときの勢いに合わせて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


本来は刀の姿であったが、それを隠す為に薙刀へと形を変えていたそうだ。

そりゃあメイも知る由もない。



そしてそのアオアシの刃は角女の尋常ではない膂力に合わせて遠く長く刃が届く事となったのだ。


アリシアは躱すのが間に合わず、そのまま俺を庇って咄嗟に低い地面へと俺を叩きつけ避難させていたのだ。

自分の首が斬られるのを理解して…。



『ア、アリシア』



「本当に、超再生って便利なもんね。こうじゃなけりゃ終わってたわよ」




「フン、それが噂に聞く再生能力か。なんとも忌々しいものだ。不死である事を良しとする等…!」



眉間に皺を寄せて睨みつける角女の言葉に俺はギリギリと無い歯を食いしばる。



『テメェに解ってたまるかよ。クソ女がっ』



「知ったふうに言うなよ魔剣風情がっ。もう、貴様らに用は無い。今ので“既に完了した”」



完了した?何をだっ



「この、一度二度と喰らった痛みは忘れぬ。いずれは私が殺そう。さらばだ」



すると、角女の足元に大きな穴が生まれる。



角女とイヴフェミアはそのままその穴に吸い込まれるように…消えていった。



『しまった、待て―』



追うも間に合わず、その穴は二人を連れて行った後にすぐ何事も無かったかのように閉じてしまった。


そうか、これが…ティルフィの言っていたイヴフェミア姫の城の形を変える能力…。

だが、どうしてあの角女がそれを使役できた?



「パパ、あのお姫様…目が縫われていた。あのときのルドルフみたいに」



まさか…あの眼が縫われた原因って




『クソ…!追うぞみんな!』




「みーーーーーーーっつけた♪」



俺とアリシアはその声にゾクリと悪寒を走らせた。

その声のある方向へと振り返ると、そこには“奴”がいた。




「なぁんかさ、上の方で大きな音してるし。大きな蛇が暴れていると思ったら…嬉しい事に君たちじゃないかぁ!ずっと探していたんだよぉボクはぁ!やったね」





『そうかい、俺はわりと失禁しそうなくらい嫌な気持ちでいっぱいだよ。』






そこに居たのは…天使と魔神の両腕を持つ少女、スフィリタスだった。


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