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ドール=チャリオットの魔剣が語る  作者: ぼうしや
止まらぬ邂逅
15/199

14:その魔剣、煩悩を嗜む

どうやら俺にも「眠る」という行為は存在しているようだ。

魔剣には当然、瞼などは無く。自身で視界を閉じる事は叶わないが。

静かになり自身も思考を暫し止める時にそれは来る。

暗い闇が瞬時に視界を覆い、やがて聞こえていた微かな音すらもゆっくりと途絶える。

ぶっちゃけ だらだらと具体的に説明してはいるが

瞼が無い事以外はほとんど人の睡眠と何ら変わらない。夢も見たしな。

違うのは、それは疲れから来るものでは無く

意図的に意識をオフに出来るという事だけ。

だが、起きるときはどうなのだろうか?

誰かに触られているという感触も無い俺が意識を取り戻す方法はなんなのか?

自身を知るということはとても大事なのだな。と改めて思わされる。


何故なら


「すう、すう」


「んっ、んう」


窓から差し込んできた日差しに意識を取り戻した俺は

何故かアリシアとリンドに抱かれるようにベッドで横になっていた。

・・・確か俺は食堂まで付き添い、二人がギルドで設けられた温泉に入る事になったので

さすがに剣は持ち込めないという話でリンドが部屋に結界を張ってくれて

しかも気を使ってくれたのか窓が見える方に器用に立てかけてくれて景色を眺めていた。

そこからまでは覚えているが、どうやらそこで意識が飛んでいたのだろう。

先ほど説明したように眠りについていたのだと思う。


のだが…どうしてこうなった!?



二人はまだ寝息をたてていて、まだ起きていない。

アリシアの方に目を向ける。

相変わらずお人形さんみたいに整った容姿だ。つうか睫毛長ぇ。

寝相か悪いのか刀身に跨ぐように俺を抱きしめている。

いや、だから危ないからっていってるのに・・・

俺はため息を吐きながら一方のリンドの方にも目をむける。


『…』


アリシアに負けじと整った顔立ちもさながら

俺に向けて横になっているせいか

その・・・寝巻きのせいか薄着だし・・・横になっているせいでもあるのだが、胸が形を変えて作られている谷間が俺にこれみよがしに主張してくる。

あかん。これは目に毒だっ というかリンド、意外と着痩せするんだな。


いや、そうじゃねえ


俺は思春期の子供のように必死に目の前に見える魅惑の山から目を逸らした。(魅惑の山ってなんだよ。)

くっ…奈津、奈々美…すまない…

たとえ不可抗力であったにしても

今は亡き妻と娘に謝るしか自身の気がすまなかった。

暫く、天井を眺める。


『……』


寝息と時計の針の音が交互に聞こえる。

それに合わせるようにチュンチュンと小鳥の囀りが聞こえる。


そ、そろそろ、二人を起こさなきゃな…

そう。これは別に邪な気持ちでは無いんだぞリンド

別にお前の谷間が見たくてお前に目を向けたわけではない。決して。

たとえ万が一それが目に入ったとしても俺は悪くない!断じてな!!

俺はゆっくりと目線を天井からリンドの方にとゆっくりと動かす。そう、ゆっくりとだ。

リンドが起きないように。


ゆっくりと―


「・・・・・」


『・・・・・』


ガンギマリした爬虫類のように大きく目を剥き出しに見開いて

碧色の宝石と言っても疑うことのない美しい瞳を見せつけるように俺を見つめるリンドの顔だった。


『うおおおおおおおおおおっ』


思わず声を出す俺。


「あ、ジロ…すみません。一瞬だけ魔力の気配がしたのでつい癖で目を凝らしてしまいましたが、どうやら貴方だったのですね。」


リンドが目をこすりながら上体を起こす。


『ああ…そうだったのね。そう…』


俺は余所余所しく相づちをうつ。


「というより、何故貴方がベッドで寝てる…横になっていたのですか?」


 それはな

 

 俺が


 一番


 聞きたい。


『気がついたらコレだよ。どうやら俺も寝てはいたみたいだけどさ。』


「そうですか。なら、多分この娘が勝手に持ち込んで来ちゃったのでしょうね。入浴から帰ってきた時には貴方からは既に魔力の気配を感じていませんでした。私は暫し寝ているのだと説明はしたのですけどね。眠りにつくまで寂しそうな顔をしてチラチラとジロを見ていましたよ。」


俺は少し申し訳ない気持ちになった。

アリシアより先に眠ってしまった事で、この娘を不安にさせてしまった。

先の街の騒動で約束をしたばかりなのに早速つまづいていやがる。情けねえ。


『ごめんな、アリシア』


俺は叶うなら今すぐにでも抱きしめて、俺はちゃんと居るって撫でて安心させてあげたかった。

でもそれは、出来ない。俺に出来る「側に居る」という証明はこの娘に俺の声を届ける事だけなのだ。

そう思うと少しばかり、ありもしない胸が苦しく感じるようだった。


「ジロ、思いつめても仕方ありません。この寝ぼすけさんをそろそろ起こしましょうか。」


『ああ、そうだな。』


リンドは隣に眠るアリシアを起こすように彼女の頭に手を伸ばす。


「アリシア、朝ですよ起きなさい。」


「う、ん…うーん」


『……』


リンドが手を伸ばし、アリシアを揺する。連なって無防備なリンドの胸が視界の真上で揺れているのが薄着の上からでもわかる。


―ここは、天国かもしれない。


男という生き物は愚かだ。たとえ人の身で無くなり魂と成り果てても

この光景を世界遺産に登録したくなるくらいの絶景だと思ってしまうのだから。

許してくれ…奈津、奈々美。すまない…

俺は再び二人に深く謝罪をする。


「パパ?どこ見てるの?」


『おあああああああああああああああああああああああ!!!!!』


唐突な少女の声に瞬時に罪悪感からうまれる動揺を顕わにした言霊が噴き出る。


『おはよぃ?アリシア?』


動揺して上擦った声出してるよ、そしてなんで疑問形?


「おはようパパ。リンド。」


バレてないよね?何もバレてないよね?何かっていったら何て言うか、不可抗力だしあれだけど


バレてないよn


「パパ、なんでさっきリンドの胸ばっかり見てたの?」


バレてんじゃんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん。


「私、ですか?何かが胸元についてましたか?」


リンドは気になって胸元を暫し確認し始めた。こいつ、やっぱり天然なのか?


『いやね、ちょっと虫がそこら辺を飛んでたみたい?やっぱ動くものには目が勝手に追ってしまってねぇははは』


俺は必死に誤魔化しながら自身の内情をケムに撒こうとした。


「何か隠し事してる?パパ」


『え、なんでわかるの?』


いや、何故それを口に漏らした俺


「やっぱ、隠し事してるの?」


カマカケラレタ!?


アリシアが俺を見つめる視線が痛い。

こうなりゃ、仕方ねえ正直に言うか。


『わかった、正直に話す。その、リンドがな』


「は、はい」


いや、リンドさん。なに畏まって正座しちゃうの?やめてよ 余計言いづらいよ。恥ずかしいよ。


『まぁ、無防備なのがちょっと気になってな。胸とかさ…』


「えぇ・・・え?無防備でしたか?私、一応この部屋には結界を張ってますが」



―こ


この天然女はぁあああああ!!

話がややこしくなる!!もうとにかくはっきりと言おう、そうしよう!今後のために!!


「いいか!リンド!お前も女性なんだから!そういう無防備な格好を俺に見せつけるんじゃないよ!

一応!剣だけども!何することも出来ないけども!!一応俺も男なんだから!!気をつけろって言ってるの!」


はい、逆ギレしましたすいません。


「え、ええ?私が…え?」


困惑するリンド。ここまで言って状況が理解出来ずにいるとは。


「つまりだな。姉さんのおっきいおっぱいを見て、この剣くんは欲情してしまったんだよ」


『そう!それ!つまり、思ってたよりおっきくてちょっと動揺してたんです!』


ナイス解説!ありがとう!えと―


自然と会話に割って入ってきた第三者の声。

それが何を意味するのかリンドも間抜けではない。

刹那、リンドは反射的に恐ろしい形相で第三者の声の主に対し手刀を繰り出す。


「おおっと」


しかし、腑抜けた声と共にそれをいとも簡単にそいつは躱した。


アリシアでも、リンドでもない「その存在」はトンと軽やかに着地をしてそのまま距離を取ってその姿を俺たちに晒した。


「リンド、久しぶりだねぇ」


力が抜けるような声でゆるりと挨拶する軍服の少女。


「ガーネット」


『ガーネット??』


ガーネットと呼ばれる女はヒラヒラと手を振って「どもども」と返す。

赤髪でボリュームのあるロールツインテールをしており。一見は普通の少女ではあるが、

それを否定するように右目の髑髏を貼り付けた眼帯が物々しい雰囲気を漂わせ、異常さを示していた。


見覚えのある軍服。多少のスカート仕様でアレンジされてはいるが、それは先の騒動で一戦を交えたあのレオニードと同じ帝国軍のものに違いない。


気づけばアリシアも反射的に俺の柄を握り締め獣のようなうねり声を漏らし、臨戦体勢に入っている。

それほどまでに、ガーネットには警戒する要素が多く含まれている。

今ですらアリシアは彼女に対し視線を外さない。

当然だ。先の騒動で俺もアリシアも帝国軍に対しての印象はサイアク

それどころか、リンドの貼られている結界を容易く破って入ってくる事自体 危険以外の何ものでもないのだ。



「待ってください!アリシア、ジロ!!」


慌ててリンドは、身構える俺たちを制す。

その声にアリシアはピタリと体を止め、しかし気を許すことなくガーネットから目を離すことはなかった。


「恐いねぇ、ちゃあんとノックはしたよ?」


頭を左右にふりながらロールしたツインテールを揺らし口を尖らせるガーネット。

いや、たかだかノック如きで許されて入れる場所じゃねえんだよここは。

それを平然と入ってこれるお前の方が物騒だよ。



「ノック如きで入れるようなやわな結界に設定した覚えはありません、やる事の趣味が悪すぎますよ?」



「そうかい?ならもうちょい立派で複雑な結界にしとくんだね。これじゃあ、私の『眼』だけですんなり入れてしまうよ」



「…指摘どうもありがとうございマス」



あ、リンドが少しむくれてる。



『おいリンド、悪いが説明してくれ。』



俺やアリシアを制するのにだって理由はあるはず。

状況を一番わかってるのはお前だけだぞ―!



「ええ、お騒がせして失礼しました。実は彼女は、私が無理を言って呼んでもらった用心棒なのです。」



『用心棒?帝国軍にか?』



「ええ、以前話してましたよね?あの森で一緒に歩く時に、『奇襲は無いがもうひとつの可能性がある』と。」



確かに・・・、そんな話はしてたな。



『だが、それと帝国軍の力を借りてまで俺達を護る事になにか繋がりでもあるのか?帝国のあの女、レオニードは俺達を敵とみなして連れて行くとかなんか言ってたぞ。』



「ああ…その件に関しては本当にわるいねぇ…うちの鉄面皮がしゃしゃり出ちゃったみたいでサ」


俺の質問に申し訳ないと頬を掻いて謝るガーネット。


「立ち話もなんだし、下のカフェテラスででもお話しましょ。一杯奢るからさ♪」


ガーネットの提案にため息をつきながらも頷くリンド。

俺たちも敵意が無い以上身を護る必要は無い。

ここは流れに任せて行くしかないだろうよ。


そんなわけで、下にある冒険者ギルドの憩いの場であるカフェテラスで3人と魔剣おれ

テーブルを囲んでファストブレイクとなる。

ガーネットの話を聞くとどうやら、レオニードの行為は独断と偏見による強行だったようだ。

帝国軍は特に俺達を敵対しているわけでも無く。別にある本来の目的を以てこの街に趣いたようだ。


「そういえば、リンドに名乗ってもらっただけでしっかりと挨拶していなかったね。改めまして、

あたしゃ帝国軍第四部隊の諜報機関所属。ガーネットだよん。よろしくー」


『お、おう。初めまして。今は魔剣やってる東畑慈郎だ。あと、この娘がアリシア。』


「アリシア、です。よ、よろしくお願いします。」


ちゃんと挨拶出来たなアリシア。偉いぞ。


「ふん、ふーん」


ガーネットがニコリとその隻眼を絞るように歪め、名乗る俺たちを見据える。


「リンド、君は気づいていたの?」


「…何をです?」


細目ながらリンドは眉間に皺を寄せて質問に質問で返した。

この様子を見るからにあまり聞かれたくない内容をガーネットは持ち込もうとしているのだろう。



「この魔剣の魔力、異常な程に膨大な魔力を抱えている。」



『いや、まあ確かに何も無ければ500年は生き続けられる魔力を持っているとは聞いていたが?』



「500年?あんだけの騒ぎを起こす魔力放出をしておいてそんなに生きられる理由わけがない。」



『え…マジ?』



「申し訳ありません。いずれは話すつもりでした。」



リンドはティーカップの紅茶を静かに啜り、ひと呼吸置く。



「貴方の中の魔力は本来魔剣が殺生を成して得るそれとはまた違っていたのです。本当の事を言うと、あの時…貴方という魔剣は殺した者の血から魔力を吸い上げていなかったのです。」



『それなら…俺は、アリシアは何故今の今まで維持できているんだ?』



「そればかりはわ知る由もありませんが、あなたの中には本来の魔剣が持つ魔力よりもより膨大な魔力量を予め保持していて、それに依存して維持しているのです。」



『…何故黙っていた、ってのは言うまでもないか。そんなもん得体の知れない魔剣がハナから強大な魔力を有してると知れば何をされるか想像も出来ないわけか。』



「毎度の事ながら、理解が早くて助かります、ですがそれだけは無いのです。あなたの魔力属性は得体の知れない色…構造を持っています。本来個々の魔力は単純な構造をしています。水を生む為の魔力、火を生む為の魔力、風、地、雷、光、闇それぞれが然るべき役割を持ってこの世界に存在しています。しかし、あなたの中にある魔力はそのどれにも該当しない…いいえ、もっと細かく言えばどれにも当てはまるように出来ている。小さなモノに多くの情報量が詰め込まれているような」



『なるほどなぁ…だが、俺にはさっぱりこの魔力を手に入れた覚えは無いんだが。』



「可能性はあります。あなたはアズィー様との邂逅があったと言っておりましたよね。」



「えぇ!?ジロは、あの神様にあったの?」



リンドの言葉にガーネットはそちらの方が驚きだと言わんばかりに前のめりになる。

そんなすげえ存在なのか?あのブヨブヨが。



「ふーむ…となれば、それは『祝福の加護』の類だねぇ。すごいや、まさかリンドに続いて神様との邂逅を成し遂げた存在がいるなんてねぇ」



『リンドも会った事があるのか?』



「え、…ええ、そうですね。私も、邂逅をして加護を賜りました。」



『そうなのか、どんなモノを貰ったんだ?それは』



「いえ、そこまで大した事ではありませんよ。」


どうしたリンド。若干上ずった声で



『祝福の加護ねぇ…でも、俺でさえ扱いきれてなさそうなんだが?』



以前に念じて使ってはグルグルと不規則な回転をし、アリシアの時でさえ魔力を別の方向に向けるので精一杯だった。

とてもじゃねえが大層な代物だとは思えない。



「それは、あなたの中にその魔力を解き放つきちんとした出口が備わっていないからなのです。現状、あなたの魔力はただ溢れて四方にと霧散している。そして…その魔力を」



リンドは何かを思い出すように、一瞬顔が青ざめる。



『ん、どうした?リンド』



「いえ、なんでもありません…」



多少、狼狽しているリンドの横からガーネットが割って入るように言う。



「つまりは、さ。あんたら二人は、それだけの魔力を有している以上 世界を揺るがす起爆剤にもなりかねないって事。」



なる程な、つまりは俺たちは魔術を不徳に使う輩からしてみれば最高にいい宝物ってわけだ。

狙われる理由にもなる。



『ガーネットをリンドが用心棒に雇った理由はわかった。それで、あんたら帝国軍にはなんのメリットがあるってんだ?』



リンドが帝国軍のよしみって理由だけで決められる話でもなかろうに。

奴らがここに来た理由にもなるだろう。



「そうだねぇ。君たちは知っているだろう?アリシアちゃんの屋敷が襲撃にあって皆殺しにされていた事は。」




『―おい、待て。ガーネット、言葉は選んでくれ』



アリシアの前で平気でそんな言葉をだすんじゃ――



「…ん?どうしたのパパ」



『…いや、なんでも無い…』



アリシアはホットミルクを飲みながら、俺の視線に気付いたのか様子を伺ってくる。

未だに狂化が持続しているせいなのか?自身の起きた出来事に無関心に近い。

それだけじゃない。この娘は「目の前にある事」にだけ反応する。本当に無垢な子供のように。



「悪かった、話を戻してもいいかい?」


『…ああ』



「その屋敷には本来、リンドの強力な結界が貼られている。だが、それを一瞬にして破壊した。

リンドの言うように、彼女以上の強大な術式によって行われた計画的な犯行だ。」



ガーネットはコーヒーを一つ啜ると、自身のポッケをまさぐり取り出す。



『これは?』



コロンとテーブルに転がったのは手に収まる程の石ころ、いや結晶か?

石にしては端が砕けたガラスのように尖っており、光りに当てられて多少のツヤを見せていた。



「竜鉱石、ドラゴマイトと言う。文字通り、竜の住まう山々で取れる代物さ」



『それが、どう関係しているんだ?』



「リンドの結界が破壊された瞬間の話になる。その時この街ではある魔術反応が観測された」




『それは・・・』



「ジャバウォックの詩片」



俺が質問をする前にリンドが口を開いた。

その言葉には聞き覚えがある。不思議の国のアリスという物語に出てくる竜の名前だ。

あちらの世界の物語の一つがこの世界に存在している事自体疑問に思う所ではあるが今は置いとくべきだ。


そして、それを口にすると同時にリンドは悔しさを今にも吐き出したいと言わんばかりに歯を食いしばった。

それを察したたガーネットが必要以上に触れることなく、俺達に目を向けて再び話を続ける。



「ジャバウォックの詩片は、竜由来の術でさ。本来は対ドラゴン用に使われる大秘術なんだよ。そして、その為に使われる媒体がこのドラゴマイトって事。」



『それは、リンドの術式を破壊できるほどの威力なのか?』



「んー…まあ、たまたま相性が悪かったのよ。リンドの術式と。」



話をはぐらかされたのには少し引っかかるが…今はいい。

となると、犯人は相性すらも知ってて犯行に及んだわけだ。

一瞬で破壊できたのは偶然ではなく完全に相手を知ったうえでの計画的な襲撃。



「そんでもって、ここからが問題。そのドラゴマイトは実は我々が独占して運用している代物なのよね。詰まるところこの大秘術は基本的に帝国軍以外が使う事が無いわけ。ましてや我々も軍事運用以外では使う事はまずない。」



『なるほどな。そりゃあそんな大秘術を観測した奴から見れば、帝国の奴らがドンパチし始めたとしか思えないわけだ。』



「そう、そんなわけで帝国軍に対してギルドからは事実要求を求められ、使った覚えのない私らは兎にも角にも調査をしなくちゃいけなくなったって話」



結果、リンドは事件の当事者としては重要な参考人にもなる。

そして、狙いが俺ないしアリシアだという事も今後犯人が俺らの動向に合わせて動く可能性が高い。俺らは十分な餌になるだろうって事か。



「現状、ドラゴマイトの流出経路を洗っている所だから、それまでは私が暫くここで世話になるって事。」



『そうか、暫くの間だが世話になる』



「あいさ、改めてよろしくねぇ」



ガーネットは相も変わらずなんとも気の抜けた声で手をひらひらと振りながら挨拶をした。

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