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ドール=チャリオットの魔剣が語る  作者: ぼうしや
止まらぬ邂逅
13/199

12:四面楚歌に鉄仮面で嘆きを隠す

さて、これからどうするか


事が切れた時にはこの大惨事。


俺とアリシアの周りにはくっそでけぇクレーター出来てるし


まぁ 死人は居なさそうでよかった。


アリシアは相変わらず俺を抱きしめている。

一応、布が巻かれているけど俺は刃物だからな?

後で注意しないとな。


それと、軍服女あいつ


「アリシア!!ジ―アリシア!!」




叫ぶように駆け寄る女性、リンドだ。…全く、ようやく帰ってきたか。


つうか、今ジロって言いそうになって誤魔化したな。


せっかくの綺麗なスカートに土埃がつくことなんてお構いなしにクレーターの端から滑り落ちるように駆け寄り


未だ剣を抱きしめるアリシアをさらに抱きしめるリンド。


「ごめんなさい…こんな事になるなんて、事情は後で説明します。それよりも」


リンドはアリシアの頭を優しく撫でると。立ち上がり

軍服女の方をキッと睨みつけた。


「あなた、こんな所で何をしているの。レオニード中佐。」


リンドの声にハッとしたのか レオニードとよばれる軍服女は機械の腕を袖でしまい、気を繕った。



「…失敬、まさかアナタの連れであったか。『リンドヴルム』元大隊指揮官殿」



「あなた……いいえ、今回の騒動は不問にします。ですから、これ以上は私たちには構わないで頂戴」



「いや、そうは行かない…。その小娘らは「何もしていない」俺に攻撃をしてきた。それにこの魔力による衝撃…とてもじゃないが見過ごすわけにはいかんな。まるで、災厄の所業。否応なしに重要参考人として連行する必要がある。…そうだ。そうでなければ困る…!!!」



やけにベラベラと喋る。早口になっているとこからレオニードが焦っている様子がわかる。


だが、語るレオニードに対し突如として突風が吹き荒れた。



「なんだ!?」


「今度は突風か!!?」



事の顛末を懲りずに見に来た野次馬はその風に圧倒され姿勢を低くする。



だがその中で、深くがぶる軍帽を飛ばされながらも変わらず凛と立っているレオニード。



「勘違いしないで」



目を見開き恐ろしい形相で睨むリンド。

本当に怖いわ、この突風はリンドの魔術…いや、それ以上に彼女から感じる気迫なのかもしれない。


リンドの方を一瞥するといつの間にか彼女の姿は無く

彼女の影を追うように辺りを見渡す。



居た、レオニードの前に



「これは、お釣りです。」



鈍い音と共に、レオニードの顔面がリンドの裏拳によって歪む。

その異常なまでの膂力に彼女の身体は耐え切れず、面白いくらいに横に吹き飛んだ。

いや…吹き飛びすぎだろ。半端ないぐらい飛びすぎて、近くの宿屋の壁を壊して突っ込んでるぞ。


リンドさん、その細腕で…お強いのですね。


ファンタジーなこの世界だからありきなのか…それを確かめるまでには至らない。


「レオニード、今回見逃すのは貴方ではありません。私たちの方よ。」


『私たち?』



「エラい騒ぎになってるね帝国軍の御人よ」


考える間もなく後ろからもうひとり、声が聞こえた。


その渋い声の主は野次馬の中から現れる。


「ニド・・・申し訳ありません。自分の不甲斐なさも含め、怒りのあまり宿の壁を壊したことを謝罪します。」


現れたのはニドと呼ばれる二足歩行のウサギの造形をした小さな絡繰人形だった。

うっそだろ…いまの渋い声 こいつから出てんのか!?

声以外まったくもって威厳ないぞ


「かわいい。」


アリシアがつい言葉を漏らす。

いや、絡繰りの造形はかわいいと言えるほどそこまでファンシーではないだろ…


ニドは穴の空いた壁を眺めながらやれやれとかぶりを振り、口を開く。


「中佐殿。ここはギルドの管轄する中立の街だ。これ以上、揉め事を増やすようであれば…ギルド長である私も黙ってはいないが?」



ニドは、壊れた宿屋からむくりと起き上がり軍服についた土埃をパンパンと叩くレオニードに静かな物言いで脅し始めた。つか、この世界の人たちってこんなに頑丈なものなの?

平然とニドとリンドに居る所に歩み寄り



「これはこれはニドギルド長。あなたに出張られては俺も軍での爪弾き者にされかねない。…ならば致し仕方ないか。」


飄々とした佇まいを見せているようで、その影には…強く奥歯を噛み締める表所が伺えた。

その態度は明らかに二人に対して向けられる敵意。

しかし、その睨み合いも束の間。


彼女の後ろから同じ軍服を来た者が二人 大声を上げながら駆け寄って来る。


「―本来の目的も程よく終えた。騒がしい迎えも来た事だしな。俺は、これにて失礼するよ。」



レオニードは顔が隠れる程に長い前髪を掻きあげ

今一度俺達を一瞥し、ついでにその面を俺らに拝ませた。



上等だ。こいつのツラだけは絶対に覚えてやる。


二人が許しても、アリシアが許しても…俺はゆるさ




『―え』




その顔には見覚えがあった。


いや、覚えているなんてもんじゃない


忘れる、わけが無い…どうして…?





その顔は顔に大きな傷を残しながらも、

いつまでも恋焦がれていた「あいつ」の顔をしていた。







『―奈津』

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