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大抵の悪キャラは見た目が醜悪に設定されてるもんで

作者: 螢珀 さいち

彼はゴブリンのようであった

彼は酷い猫背であり、鼻柱は鉤のように曲がっており、肌色は悪く背は小さかった

彼は悪戯好きで周囲から疎まれていた

彼は暗く、狭い、洞窟のような場所を好んだ

彼はゴブリンであった


ゴブリンの彼はやんちゃ坊主であった

悪さは目にあまるところもあった

だが持ち前の愛嬌で憎めない存在であった

しかし持病で母親が死に、それも彼の悪戯が原因だと言われたなら

彼はやんちゃ坊主であった

親が死んでからはゴブリンであった


ごぶりん菌がうつるぞー!

うわっさわっちゃった、はいパス

やだ!きたない!


彼は醜く、悪戯好きで、洞窟の様な場所を好んだ

彼はゴブリンであった


彼と仲良くしていた女の子がいた

彼女はとても背の小さい愛嬌のある子であった

彼女は彼が嫌われたときも傍にいた


基本的に人間は人間と

イルカはイルカと

ゴリラはゴリラと

コミュニケーションをとるものである


基本的に人間は人間と

燕は燕と

魚は魚と

番うものである


彼女はゴブリンであった

彼は嫌われていた

彼はゴブリンであった

彼は酷い猫背であり

鼻柱は鉤のように曲がっており

肌色は悪く背は小さかった


彼女はゴブリンであった

彼女は居なくなった

彼女は土の中で眠っていた

彼は彼女を埋めた

彼が見たのは横たわる彼女と隣で死んでいた剣

横たわる剣と剣に似た様相になった彼女


その剣の持ち主はひーろーと呼ばれているらしい

嫌でも耳に入ってくるその情報に耐えながら

誰にも見つからずひっそりと

洞窟のような場所の近くに

彼女を運んだ

埋めたのは彼

運んだのは彼

見つからないようにしたのも彼

ヒーローにやられる役も彼のものだった


彼女は彼に借りがある

はやくかえすべきだ

かえしにもどってくるべきだ

そう話しかけた

彼女の木に

彼女を埋めたところから生えた木に

彼女の養分で発展した木に


木は根をはり枝を広げ

草は茂り

やがて森になった

彼女は元気であった

この森のように


彼女は森であった

森は大いなる恵みをもたらす存在であった

こぢんまりとした森は

こぢんまりとした彼女は

彼女の中心部を守ろうと懸命に繁栄した

中心には美しい宝石のとれる洞窟

洞窟はゴブリンの好む場所

彼はゴブリンであった

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴブリンキス大賞審査委員です。 ゴブリンと呼ばれた者の半生を、辛さと寂しさと、そして深い愛情とを持って書かれております。 ひーろーは氏ね。 [気になる点] 美しいラストなのですが、どうも…
[一言] はじめまして! (NiOさんのコメント欄でたびたびお見かけしております) 童話でもあり、また詩のようでもある文体、ゆっくり噛み締めながら味わいました。 タイトルのキャッチーさと、作品の切…
[良い点] 切なくも、心に染み込むお話でした。 彼はずっと待っていたのでしょうか。 彼女はずっとそれを見守っていたのでしょうか。 願わくば彼の魂が復讐心で満たされたままでいないことを切に。 [一…
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