零式艦上戦闘機一一型のこと
今回は説明回、メッチャ長いかもです。
私の翼
零式艦上戦闘機一一型
試作機は旧西暦1940年7月に完成
その後、様々な改良を加えられ派生型を生み出しながら、徐々に質も量も強力になる敵に対し終戦まで戦い抜き、そして古代日本海軍航空隊の栄光と衰退とその最後を看取った翼でもある。
全幅 12メートル
全長 9.05メートル
全高 3.53メートル
自重 1754キログラム
発動機 栄一二型『離昇出力940馬力』
最高速度 高度4700メートルで533km/h
上昇速度 高度6000メートルまで7分27秒
降下制限速度 629km/h
航続距離は落下増槽を使えば巡航で3350km
武装 主翼内20mm機銃2挺『各60発』
機首7.7mm機銃2挺『700発』
爆装 30kg爆弾2発 または 60kg爆弾2発
はるか昔の旧西暦1940年に原型機が作られた旧日本海軍の単発単葉艦上戦闘機。
単発っていうのはエンジンが一基のこと、単葉っていうのは主翼が一枚ってこと。
ちなみに記録がちゃんと残っている人類初の動力付き航空機で飛行したライト兄弟の『ライトフライヤー号』は単発複葉機で主翼が上下二枚重ね。
私の零戦が生まれる37年前の話。
人類初の飛行距離は36,5メートル、滞空時間たった12秒の事だった。
それから37年で当時の人類はこれだけのものを作り上げた。
そして・・・人類は血みどろの戦い、世界大戦を再び始めた。
私の翼[零戦]これは皇紀っていう、その当時日本で流行ってた独自の暦で2600年に制式採用されたから、末尾の数字00から零式と名付けられた。
次に機種名の後ろの番号、一一型は機体設計番号+発動機番号の組み合わせで『じゅういち』では無く『いちいち』と呼ぶのが正しい。
一番最初の設計機体に一番最初のエンジンの組み合わせ、それが私の一一型。
日本海軍航空隊の希望と絶望を一身に背負った機体。
日本では二度目の大戦後しばらく戦争について考えることすら悪という風潮が流行ったらしい、
その後『21世紀最悪の三年』と呼ばれた時代に政権を担っていた与党に至っては、自国の国防組織すら悪者扱いするというトンデモっぷりを発揮して他国から冷笑されていたらしい。
私自身、戦争は大嫌い。
でも人と競い合うことと、人と争う事は別物。
そして兵器とは使い方次第、捉え方次第。
優秀な兵器は残虐な殺人機械でしかなのか?
優秀な兵器は味方の頼もしい機械なのでは?
物事には表と裏がある、裏があるから表があるはず。
物事の一面しか見ず、そこに捕らわれて凝り固まる。
私はそんなの嫌だ。
いろんな世界を見てみたい、いろんな事を感じたい、これまで感じたことのない風を感じたい。
そのためにリアスに来た。
そのために戦空士になった。
この大空を翔るために・・・
っといったところで、私のシリアスモード時間切れ~っ
やっぱり三分以上は無理っぽい。
で、この艦上戦闘機というのは航空母艦っていう動く飛行場っていうか滑走路みたいな艦から離着陸《この場合は発艦と着艦が正しいんだけど》する航空機の事。
戦闘機ってのはそのまま戦闘する航空機の事ね。
え?爆弾やら魚雷積んでる航空機もあったはずだって?
そういう航空機は、爆弾だけ積んでるのが艦上爆撃機《通称:艦爆》、魚雷も積めるのが艦上攻撃機《通称:艦攻》っていうの。
名称とか分類は国別や年代、陸軍・海軍で色々変わって来たりするから、またおいおい説明するとして。
とにかく、私の零戦は攻める時には敵の戦闘機を排除して味方攻撃隊を通し、守る時には敵の護衛戦闘機を排除しつつ敵攻撃隊を潰す役割りを持っているの。
って長々と説明したんだけど、実は私の零戦はちょっと変なの。
零式『艦上』戦闘機なのに・・・
航空母艦《通称:空母》には載せられない。
まず着艦フックっていうモノが装備されていない。
着艦フックっていうのは短い空母の飛行甲板で無理矢理止める為の仕組み、普段は尾翼の下に仕舞ってあって、空母に降りるときだけ展開するアルファベットの『J』みたいな形をした金具、これを甲板上に何本か張ったワイヤーに引っ掛けて停止する仕組み。
これが無いんだから降りられない。
発艦の方は空母が風上へ全力疾走して合成風力作ってくれれば出来るんだよ?
多分。
どうにかして降りるなり、港でクレーンとか使って無理矢理飛行甲板に載せてもね、今度はエレベーターに入らない。
エレベーターに対して斜めにすればギリギリ載ったらしいんだけど、一分一秒を争う航空戦の真っ最中にそんな悠長な事やってられないよね。
すんなりエレベーターに入らないから、一番上の飛行甲板から飛行甲板の下にある格納庫に降ろせない。
なんとか降ろしたところで目一杯主翼が伸びてるから邪魔になる。
改良型の二一型だと主翼の両端が50センチ折り畳めるようになってる、空母の格納庫は有限なのだ、たとえ翼端50センチでも両翼で1メートル省スペースになる、それだけ多くの機体が積めるわけ、エレベーターにも余裕を持って載せられるしね。
降ろせないなら上に置いとけば良いじゃん、と思った貴方。
ハイ、失格です。
甲板員と整備兵のみなさんにごめんなさいしましょう。
空母っていうのは、乱暴に言えば船体は普通の船の構造、下の方に機関室やら燃料タンクやらを押し込んで船の船たる部分を作る、その上に格納庫を二段重ね《装甲空母なんていう一部の日英空母は一段》で作って、一番上の格納庫の天井を頑丈にして滑走路替わりの《飛行甲板》に仕立て上げているようなモノなの。
・・・かなり乱暴な説明だけどね。
で、当時の空母の飛行甲板は狭い。
当たり前だけど、空母の幅がほぼ飛行甲板の幅、空母の船体の長さがほぼ飛行甲板の長さ。
そんなの、船体の上にでっかい飛行甲板載せれば問題解決、と思った貴方。
ハイ、造船官さんの前で二時間正座です。
平賀譲さんあたりにそんなこと言ったら鉄拳制裁喰らいますよ?
そんなことしようもんなら、艦のバランスが崩れます。トップヘビーと言って重心が上がりすぎて転覆の危険性が激増します。
実際、小さな船体に無理矢理重武装したせいでバランスが崩れ易くなってしまった『水雷艇・友鶴』という艦艇が荒れた海で訓練中に転覆してしまった『友鶴事件』という記録がちゃんと残ってます。
つまり飛行甲板に余分なスペースなんて一切無いのです。
そんな所に幅12メートル長さ9メートルの零戦を置いておけません。
邪魔で仕方がない。
しかも強風吹き荒ぶ飛行甲板に置きっ放しにしてたら、潮風で当時の零戦なんてすぐにボロボロになるか、強風で破損するかのどちらかです。
飛行甲板じゃ整備も無理。
だから空母に乗れない艦上戦闘機。
私の零戦が分解梱包されて『あるぜんちな丸』に積み込まれて、今ここで再度組み立てられたのもそれが原因。
翼端が折り畳めないが為に、バラさないと『あるぜんちな丸』の船倉へ入れられなかったから。
微妙に入りそうだったんだけど、かなりギリギリの寸法だったの。
『あるぜんちな丸』の船倉へはクレーンで吊って降ろす方法だったんだけど、翼端ぶつけて破損する恐れがあるからって言われちゃった。
ところで私の零戦、もちろん当時の機体じゃないよ?
一千年以上前の機体なんて現存して無いから、当時の設計図で忠実に作ったリメイク機。
でもね、さすがにロストテクノロジーがあったり、材料が手に入らなかったり、あとは安全上とか環境面の問題とかで現在の技術が使われている部分もたくさんあるの。
見た目は古代機、機構も古代機、でも使われている技術は現代のもの。
まずはエンジン周りからの油漏れを防ぐ為に、ナノレベルで工作精度を上げて、さらに継ぎ目のパッキンもちゃんとしたものに交換してある。
油圧作動の部分もシールを完璧にしてあるから、油汚れなんて一切ナシ。
次に、雑音が酷くて使い物にならなかったという無線機は、見た目こそそのままに性能は格段にアップ。
最新の亜空間通信こそ使えないけど、音声通話で半径150キロ、無線電信だと半径1500キロまでカバー出来る。
これは不慮の事故や万が一遭難しても大丈夫なように、安全性を考慮した結果なの。
コックピットでいうと、単発機の操縦席は射手座席に交換されていて、最悪の状況下では自動で射出されて、パイロットの生命を最優先に守る仕組みになってるの。
私たちが行う『戦空』とは《試合》であって《殺し合い》ではないの。
だから安全性と環境面に関してはかなり配慮してて、搭載されたオーバーテクノロジーのほとんどはこちら方面の技術だ。
油漏れや油圧の改善その他にも材料や品質を良くした結果、原型機より格段に性能が上がってしまうのは当たり前だった。
零戦だと燃費の向上、速度の向上、エンジンなんか原型機の倍近い馬力が出ちゃったらしい。
そうすると機体がエンジン出力に耐えられなくなりそうだけど、機体も強化されてるから問題なかったらしい。
問題無いのが大問題。
そんなの零戦じゃないし・・・
そこで登場したのが『機載統括制御器』と『ナノネットワーク塗装』
安全な空戦、安全な海戦をする為に必要不可欠な技術。
この技術のおかげで《戦空》が生まれ、私達『戦空士』が生まれた。
長かったorz
しかもまだ半分orz