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乙女の翼 〜戦空の絆〜  作者: ソロモンの狐
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帰り道

「いや〜、すっかり世話になってもぅたな〜」


ミーティア達の処置が終わり、私達はタイショーの用意してくれたカツ丼を平らげた。


ちなみに出されたカツ丼を前に、紅蘭と青蘭が

「これでも食って素直になれ」

とか

「すいません、あっしがやりました」

とか言って寸劇を挟んでいたけど、私はあえて見て見ぬふりをした。

っていうか、どこから出した?その事務机と卓上ライトは・・・


上面はサクサクの衣を纏ったぶ厚目のトンカツ、肉質も良質でしかも筋切りがしっかりされていて分厚いのに柔らくて、それでいて圧倒的な存在感を主張する噛み応え。玉子はトローリ半熟で鰹節の風味が効いた出汁も醤油とみりんの塩梅も完璧だった。

揚げ油も・・・これって良質のラード?

カリッとサクッと揚がってるのにしつこくなってない。

ラードってトンカツの揚げ油には最高なんだけど、天ぷらとかに使うと悲惨な事になっちゃうはず、ってことは素材に合わせて揚げ油変えてるってことだ。

しかも、カツの上に散らされた三つ葉が!


うぅむ、このカツ丼・・・

居酒屋『龍宮』、給糧艦『間宮』侮りがたし!


そして満腹になって緊張の糸が切れていたせいか、私も紅蘭達もそのままソファーで三時間ほど眠ってしまったのだった。


「良いってことよ、それより道中気を付けてな」


私達が眠っている間に軽空母【龍驤】さんが、二式大艇に簡単な整備と燃料補給をしてくれていたらしい。


「タイショーもな、ミーティア達の事も頼んだで」


ボツリヌスの症状は抑え込めたミーティア達だったけど、もう一度私達の二式大艇で運ぶより設備の整った病院船【氷川丸】でコトウ医師に付き添って貰う方が安全だという事で、帰りは私達だけで帰る事になっていた。

ちなみにコトウ医師は乗り物に滅法弱く、特に飛行機内では全く使い物にならない事が判明した為でもある。

ミーティア達の治療中はシャキッとしてたのに、終わって一息ついた途端に船酔いして、今度は自分が診察台でのたうち回っていた。

氷川丸から二式大艇【モビーディック】に乗り込み、主操席に紅蘭、副操席に青蘭が、そして私は機長席に収まる。


「そんじゃ、一足先にパオパオで待ってるぜ」


オレンジ色のド派手な単発単葉の水上偵察機に乗ったタナトス中佐が無線越しに怒鳴ってくる。


「タナトス中佐も気を付けてね」


「おうよ〜、瑞雲発進!」


エンジン全開にした瑞雲は凪いだ海面を滑るように進み、あっという間に離水していった。


「ふ〜ん・・・タナトス中佐の腕もやけど、あの瑞雲っちゅう水偵もえぇなぁ」


離水直後、高度50メートル程でバレルロールをやってのけるタナトス中佐の度胸にも感服するけどね。


「モビーディック、発進!」


四つあるエンジンを全開にして、二式大艇モビーディックは再び大空へと飛び立った。


「みずぽん、パオパオまでの誘導は頼んだで〜」


リラバウルを襲った爆弾低気圧は既に東へ去っていたんだけど海上はまだ荒れていてリラバウル港は未だに離発着禁止の状態らしい、その上氷川丸でゆっくりしちゃたからリラバウル到着が日没後になってしまう。

二式大艇をもってしても着水出来ない状態で、タナトス中佐の乗ってきた単発機の瑞雲が無事に着水出来る訳がない。

と、言う事で当初の合流予定場所だったパオパオ環礁に着水して一泊する計画に変更されたのだった。


「了解だよっ」


再び海図を取り出し、計算尺とコンパスを使って航法を開始する。

行きと違ってのんびりとした空気が機内に漂う。


「今日はなんか、色々あったな~」

「そやな~、朝っぱらに叩き起こされてな~」

「アンタは起きてなかったやん、寝てたやん」


確かに青蘭はタクシーの中でも爆睡してたわね、と瑞穂は二人の掛け合い漫才を生暖かく見守っていた。


高度3000メートル、巡航速度で二式大艇は順調に飛行を続ける。


「あと10分くらいでパオパオ環礁は見えるはずだよ」


順調に飛ぶ事約2時間、そろそろ目的地のパオパオ環礁が目視圏内に入るはずだった。


「おぉぅ、さすがは瑞穂ドンピシャやん」


紅蘭が感嘆の声を上げる。








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