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乙女の翼 〜戦空の絆〜  作者: ソロモンの狐
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反省会

「私の師匠が戦空を辞めた理由・・・ご存知ですね、教えて下さい」


意を決して私は二人に尋ねた。

師匠に聞いた時はハッキリと教えてくれなかった。

多分左目の眼帯が絡んでいるんだろうと思っていたけど、その時は答えない師匠に食い下がるだけの図々しさも無かったのでそれ以上は踏み込まなかったけど・・・

さっきの記者連中が言っていた事がどうにも私の心に引っかかっていた。

紅蘭さん達なら何があったか知っているはず。


・・・違う。


多分知らないのは私だけ。


みんなは知ってる。

師匠に、『ソロモンの魔女』に、なにがあったのか。


紅蘭さんも青蘭さんも、

ムトギンさんもブルーノさんも、

ピーピングトムの二人も、ダメリーノも、

受付のイリヤハートさんも・・・


「アンタの師匠は言わんかったんやろ?」


いつものおどけた表情が消えた紅蘭さん、こんな顔は初めて見た。


「それは『ソロモンの魔女』が言わんかった事や、言わんでえぇ、アンタが知る必要が無いから教えんかった事や」


青蘭さんも引き締まった表情で、その声は初めて聞く凄みのある声だった。


「でも!」


ここで引き下がる事は出来ない、ここで折れたら今までと同じ。


「この話はコレで仕舞いや」


「せや、アンタの師匠が言わんかった事をウチらが言うてえぇ道理は無いでな」


「これは戦空士の仁義に関わるこっちゃ」


「ムトギンでも口割らんで、他の連中も一緒や」


どうやら決意も結束も硬そうだ。

二人は『ずずず』と手に持っていた湯呑みのお茶を啜る。

今日はこれ以上聞いても無駄っぽい。


「世の中、知らなアカン事は嫌でも知ることになる。今の瑞穂はんが知らなアカン事はもっといっぱいあるやろ?」


「例えば自分以外の機体の事もやなぁ。ずほちゃん」


う・・・痛いところを突かれた。


「今日の参加機の中に大英帝国(へんたい)の機体があった事に気付いとったら、あのディファイアントの事を知っとったらあんな奇襲は受けんかったはずや」


うぅ、見られてた?


「まぁ、デビュー戦で墜とされんかったどころか二機撃墜言うのは褒めるべき点なんやろけど、ちょ〜っと反省点もあるわなぁ」


うんうんと二人揃って頷いてる、首の上げ下げも腕の組み方も一緒で、ホント合わせ鏡を見ているみたい。


「ダメリーノに集中し過ぎてファントムブラザーズに墜とされそうにもなっとったなぁ?アレ、ウチらが行かんかったら墜とされてたで」


「え?あれって私を囮にして、ファントムブラザーズを狙っていたんじゃ無かったの?」


てっきり囮にされてたと思ってたけど、本当は見守ってくれてたんだ。


「そんな訳あ「なんや、バレとったんか」」


「・・・」


全力で否定しようとした紅蘭さんと、素直に認めた青蘭さん。


「・・・アホゥ」


ジト目で青蘭さんを睨む紅蘭さん。


「いやぁ、ウチって嘘のつけない素直な子やからさぁ」


テヘヘと誤魔化す青蘭さん。

やれやれやで、と両手を広げる紅蘭さん。


「さて、そろそろ昼メシにしよか」


「待ってました〜、ウチお腹ペコペコやねん」


『戦利品』のおにぎりの包みを広げる紅蘭さん達。


「せっかくですから、ハンガーの外で食べませんか?」


今日もリラバウルは晴天、せっかくの良いお天気なんだしピクニック気分でどうかな?と提案したんだけど、二人に「「却下」」と声を揃えて即決されちゃった。


「外でなんか広げてみぃ、弁当目当ての餓鬼共に囲まれるで」


「え?ずほちゃんって無意識系ドSなん?」


お茶を淹れながら振り向いた青蘭さんにとんでもないことをサラッと言われた。


「無意識系ドSって・・・そんなに豪勢なお弁当でも無いのに、どうしてこんな騒動になっちゃうんでしょうね」


梅干しおにぎりとメザシに沢庵の簡素なお弁当、なにがあそこまで彼らを熱狂させるのか?不思議で仕方ない。


「やっぱり」

「無意識系」

「「ドSやな」」

両手でおにぎりを手にしたまま、ポカーンと固まる二人。


「いっただっきま〜す、ん?」


私はおにぎりを頬張りながら、そんな二人を不思議そうに見ていた。


「お?梅おにぎりやん」

「う〜ん、塩加減も絶妙やなぁ」


美味しそうに頬張ってくれる二人、自分の作ったものを美味しそうに食べて貰えるって幸せだよね〜。


「空戦したら意外と腹が減るんよな〜」


「そうや!ずほちゃん、今度ウチらが夜戦行く時、弁当作ってぇや」


「それえぇな〜、瑞穂はん頼むわ〜」


おろ?意外なトコから販路拡大?


「もちろんOKですよ、食べ易くて保存の効くものをご用意します」


そうなると、メニューはアレとかアレとかかな?

結局師匠の話は何処へやら、私の頭の中では夜戦航空食の献立を考える事でいっぱいになっていた。


(ナイスやで、青蘭。『あの件』はこの()の傷になりかねん、この()がエース級になるまでは絶対伏せとくんや)


( 了解やで、この()はウチらの希望や、あんなクソ共に潰されてたまるかい)


(せやな、あの記者連中(ぶんやども)も、もうしばらくは大人しゅうしといて貰わなな)


(戦空士の連中にはウチから話通すさかい)


(ほな、記者連中(ぶんやども)はコッチで抑えるわ)


(頼むで、青蘭)


二人にだけ伝わる方法で意思疎通をする。

そんな事は全く知らず美味しそうにおにぎりをパクついている瑞穂だった。



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