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乙女の翼 〜戦空の絆〜  作者: ソロモンの狐
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生活基盤を作ろう

軽くブルーになりかけた気分を変えるためには身体を動かそう!

というわけで、まだお昼前だし夢のお布団干し。

二階に上がって、物干し台の手すりにお布団を引っ掛ける。

空を見上げれば雲一つない抜けるような青空、そこを一機の四発爆撃機がのんびりと飛んでいた。

あれはB-17爆撃機かなぁ、高度はそんなに高くないから細部までよく見えるね。

ホント、『空飛ぶ要塞』とはよく言ったものね〜。

機首の下部には、通称『アゴ銃座』と呼ばれる連装機関砲、下からじゃ見えないけどコックピットのすぐ後ろ、機体上部にも旋回機銃があるから、正面からの攻撃はリスクが高過ぎる。

相対速度は時速1,000キロを超えるからあっという間にすれ違うし、敵弾の破壊力も自機のスピードが乗るから破壊力も激増するから、華奢な私の零戦だと一発でも致命傷になりかねない。

胴体左右にも銃座が一つずつ、尾翼の下機体の後端にも尾部銃座、機体下面にもスペリー球状銃座があって、ホント全身ハリネズミだわ。


そんな事をぼ〜〜っとしながら考えていた。

地球じゃ味わえない幸せを感じるなぁ。

さっき感じた寂しさや不安感なんてどっか行っちゃった、やっぱりお日様は偉大だわ。

ガスは使えないけど水道と電気は開通してるので、先ずは拭き掃除から始めよう!


住居スペースの寝室から始めて、居間や水廻りを綺麗にしてから、いよいよ一階の店舗スペースに手をつける。

地球では、全ての家事は機械がやってくれる。

掃除も洗濯も全て全自動でやってくれる、人間はボタンを押すという動作すら必要無い。

物凄く楽な生活、地球から『労働』という概念は失われて久しい。

それでも働いている人も、もちろんいるけどね。

あくまで『趣味』として働いているの、料理が好きだから飲食店をしてたり、物語を書くのが好きだから作家をやっている人はいるけど、必要に迫られて働いている人は地球にはほぼいないんじゃないかな?

少なくとも私は会ったことが無い。


『地球育ちは余暇しか知らない』


宇宙では有名な言葉だけど、蔑視されているわけでもなんでも無いのがまた不思議なところ。

私は地球生まれの地球育ちだけど、機械任せだと退屈だったから極力自分でやってたけどね、そういう意味でも私って地球じゃ異端だったんだな〜。

店舗の入口を全開にして、裏の勝手口も開け放つ。

全体にハタキを掛けて、小上がりから順に拭き上げて行く。


「ふ〜〜っ、終わった〜〜」

そんなに大きくないお店だから結構すんなり終わっちゃった。

カウンターにもたれ掛かって、

(さすがにお腹も空いてきたな〜)

なんて考えていたら小型四輪貨車がお店の前に停まった。

「どうも〜、桃姫ガス水道設備で〜す、ガスの開栓に来ました〜」

役場で予約したガス屋さんが来てくれたみたい。

赤いTシャツにオーバーオール、口ヒゲをたくわえた中肉中背のおじさんと、緑色のTシャツにオーバーオールの細身のおじさんが入口に立っていた。

「こんにちは、俺の名前はマリオ」

「俺の名前はルイージ、よろしくな」

「「ところでお店の人は?」」

完全にハモったわね。

「あのぉ、私なんですけど・・・」

「え?お嬢さんが⁉︎」

そんなに驚くことですか?

「失礼、こんなに若いオーナーさんは初めてだったんでね」

赤いTシャツのマリオさんが帽子を脱いで謝罪する。

「いえいえ、当然だと思いますよ〜」

私だってまだ実感湧いてないもの。

「それじゃ、厨房と家の方の開栓作業にかからせて貰うよ。ルイージ家の方頼むわ、俺は厨房の方をやるからよ」

その後二人は手分けして開栓作業を済ませると、次の現場へ向かって行っちゃった。


再び一人の店内、空っぽの冷蔵庫の作動音だけが静かな店内に響く。

「ぐぅ」

冷蔵庫だけじゃなかった、私のお腹も空っぽだったわ。

何か作って食べようにも、材料はおろか調味料すら無かったんだ。

「よしっ、仕入れとお昼ごはんだ!」

先ずは最低限の調味料や材料を買って来なくては、お茶っ葉すら無いからお水しか飲めない。

今からお買い物して作ってたら晩御飯になっちゃうから、とりあえずお昼ごはんは外食だね。


地球なら『端末』一つで済むんだけど、リアスではちゃんとお財布にお金を入れて行かなきゃいけない。

先ずはお昼ごはんだね〜、このお店のある波止場元町には『元町通り商店街』があって、飲食店や食料品日用品店までいろんなお店が集まっているらしいの。

ぶらぶら散策も兼ねて行ってみよう。

「うわ〜、凄いねアーケードだ」

商店街の入口まで来てみた。

商店街には立派なアーケードがあって、雨の日でも濡れずにお買い物が出来そう、これは便利だね。

入ってすぐの所にはお肉屋さんがあって、私のお店にあるものより、ふた回りは大きいフライヤーで恰幅の良いお母さんが揚げ物をしていた。

「あら、見かけない子だね」

肉屋のおかみさんに声をかけられた。

揚げ物とサラダを買って帰って、家でお昼ごはんと言うのもアリね。

「はい、近所に引っ越して来たんです。よろしくお願いします」

「そうかいそうかい、で?どこからだい?リアスん中?それとも他星系かい?」

おばさんの興味は尽きることはない、これは全宇宙共通なんだと思う。

「地球からなんです、昨日着いたばかりなんですよ」

「へ〜、地球からかい。一人で?ご家族と?」

このまま個人情報を丸裸にされちゃうのかしら?

「私一人です、戦空士になりたくて来たんです」

「あらまぁ、女の子が戦空士にねぇ。『競空』の時には買っちゃうよ、名前教えて頂戴な」

「綾風瑞穂と申します、コールサインは桜御前です。この先にあった居酒屋さくらでお店もするのでよろしくお願いしますね」

その後も十分くらいおばさんと話をして、コロッケとメンチカツを買って(買った分以上のオマケもして貰って)商店街のお店も色々紹介して貰っちゃった。

色々買い出してお店に帰って来たらもう夕方になっちゃってた。


リラバウルの下町、馴染んでいけそうです、師匠。









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