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SIGINT-2

 6月14日 1018時 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社


「なるほど。それで、アフリカに調査員を送りたいというのだな」

 ジョン・トーマス・デンプシーがカート・ロックに言った。ロックは、ボスにアフリカで不穏な動きがあり、何かしらの形で情報収集をする必要があるとだけ伝えた。そのやり方についてまでは、彼はまだボスには話していない。

「別に調査員を送る必要はありません。例えば、アフリカに警備員を送る仕事がある時に、彼らにこっそりとこれを置いてきてもらえば良いのです」

 ロックは、やや大きめのノートパソコン大の装置を見せた。

「何だ?これは?」

「我々が開発したSIGINT/ELINT装置です。半径500mまでの不特定多数のインターネット通信、電話、無線、その他電子的通信の電波を全て拾います。バッテリーで最大80時間駆動し、駆動しなくなったら自動的に壊れて機能しなくなります。機能している間は、衛星通信で本部に情報を送信し続けます・・・・・そうだ、ちょっとどうなるのか、ご覧にいれましょう」

 ロックは情報収集装置のスイッチを入れた。PCの画面に社内で使われている電話の通話状況、インターネット接続状況などが表示された。電話の発信相手と電話番号、現在開かれているホームページの内容とIPアドレスまで、事細かにリストアップされている。

「ほう。こいつは凄いな。ここの電話やネット通信まで、全部丸見えということか」

 デンプシーがリストを見て言った。

「リアルタイムでデータが送信されるので、情報が古い、だなんて事態は、まず、起きません」

「わかった。じゃあ、こいつを持たせればいいんだな?使い方は?」

「このボタンを押すだけです。こいつを押して、放置するだけです」

「ふむ。なるほどな」


 6月14日 1047時 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社


 シューティングレンジでは銃声が響いていた。警備部隊の隊員たちがワルサーP99やHK-416Dを撃っている。彼らの足元には、9mmルガーと5.56mmNATOの薬莢が散らばり、周囲には無煙火薬の匂いが立ち込めていた。人形のターゲットには、心臓と鳩尾の辺りに弾痕が集中し、これが本物のテロリストであれば、確実に仕留められていた。隊員の一人が、P99の弾倉を取り替え、スライドを前進させ、射撃を続けた。


 クリス・キャプランがAK-47を手にレンジへやってきた。ホルスターにはグロック19が入っている。ユーロセキュリティの警備員の中では、グロック19、ワルサーP99、シグP320が拮抗した状態で使われており、こういったハーフコックのストライカーファイアの拳銃が人気がある。勿論、ハンマーファイアの銃も使われているが、シグP226/228とヘッケラー&コッホUSP以外を選ぶ警備員は殆どいない。そのため、キャプランは、殆ど使われず、武器庫の肥やしになってるブローニング・ハイパワーやベレッタM92Fは処分するようボスに進言しても良いのでは、と考えていた。

 キャプランはAKに弾倉を装着して、セミオートで撃ち始めた。この銃は、フルオートで撃った時は、とんでもないじゃじゃ馬で、コントロールなんてできたものでは無いが、セミオートに関しては、そこそこ、可もなく不可もなくといった命中精度を見せる。この銃は、武器市場では簡単に手に入るし、テロリストの拠点を攻撃した後、強奪して持ち帰ったりしている。弾丸の殆どは人形の標的の鳩尾や胸の辺りに集中している。確かに、この銃は基本設計は古く、近年のトレンドであるHK-416やタボールTAR-21に比べたら、命中精度が悪く、撃ちやすい銃であるとは言えない。だが、やはり、どんなに乱暴に扱っても壊れにくく、メンテナンスも簡単だ。同じ7.62mm×39弾を使うAK-102は、プラスチックを多様しているため、軽く、扱いやすいが、やはり紛争地帯では出回っているとは言えないため、AK-47やAK-74が多く使われている。


 防弾ヘルメット、アサルトスーツ、防弾加工されたタクティカルベストを身に着け、自動小銃や散弾銃を持ち、胸のホルスターに拳銃を入れた集団が隊列を組み、敷地内を歩いていく。平屋の屋根に乗って、ぼーっと空を見上げている男女が何人か目立つが、そんな彼ら彼女らの足元には、FIM-92スティンガー携行地対空ミサイルが入れられたコンテナが置かれている。万が一、ヘリコプターや軽飛行機で攻撃してくる輩がいたら、撃墜する任務を与えられている。更に射程の長い、MIM-23ホークもあり、そのレーダー装置には、操作クルーが常に配置に付いている。その中を、身奇麗なスーツを来た、石油会社の人間が、重武装の警備員にエスコートされて歩いていた。イラクにある油田警備についての相談にやってきたのだ。現地の警備会社による警備では、どうも心許ないようだ。しかし、彼らは、ここで提示される警備費用が、イラクの警備会社が提示する費用の数倍の値段の見積もりを見ることになるとは、まだわかっていなかった。その代わり、特殊部隊出身の、一流の警備員が派遣されてくるのだが。

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